コロナ禍での外出自粛などで、いま全国のシニアがフレイル(要介護の前の虚弱状態)の危機にあります。そこで、東京大学高齢社会総合研究機構の教授である飯島勝矢さんの著書『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA)より、自宅でできる感染予防や、要介護予防についてご紹介します。
口はいくつになっても鍛えられる! 「パタカラ体操」や「唾液腺マッサージ」を
むせが気になったら、唇と舌を鍛える「パタカラ体操」
いつもどおり、お茶を飲んでいただけなのに急に咳き込み、「気管に入ってしまったかな?」と思うことはありませんか?
以前よりも「むせ」が気になってきたら、飲み込むための筋力が落ちてきたのかもしれません。
高齢になると増える「誤嚥」は、本来は食道へ送られなければならない唾液や飲み物、食べ物が、誤って気管に入ってしまうことをいいます。
正常な状態ならば、食べ物がのどの奥へ送られると、喉頭と呼ばれる部分が気管をふさいでくれ、食べ物は食道にしか移動しません。
しかし、この機能は加齢で衰えます。
筋力が衰えて噛む力、飲み込む力が低下し、誤嚥を起こすのも、オーラルフレイルの症状の1つです。
そのサインである「むせ」に気づいたら、食事はゆっくりと、細かく噛みつぶすように食べることを意識しましょう。
口の体操も試してみてください。
下の「パタカラ体操」は、「パ・タ・カ」テストを応用したもので、唇と舌の力を鍛えることができます。
早く、はっきり発音することが効果につながるので、この体操のほか、早口言葉にトライするのもおすすめです。
むせを防ぐ簡単トレーニング「パタカラ体操」で鍛えよう
できるだけ大きな声を出しながら、早く、はっきりと発音しましょう!
①、②とも、5回を目安に続けて発音します。
上達の度合いを家族や友人と競うのも、楽しみになります。
① 「パパパ、タタタ、カカカ、ラララ」
② 「パタカラ、パタカラ、パタカラ」
※感染症予防のため、飛沫が食卓や周りの人にかからない場所で行いましょう。
●トレーニングのコツ
「パ」は唇を破裂させるように唇を開け閉め。この動きが弱まると、吸う・飲むが難しくなります。
「タ」は舌の先を歯切れよく発音。この動きが弱まると、食べ物を押しつぶせなくなります。
「カ」は舌の奥をのどに押しつけるように発音。この動きが弱まると、飲み込みが難しくなります。
「ラ」は舌の先をくるくる回すような感じで。この動きが弱まると、食べ物を丸められなくなります。
口の中の乾燥が気になったら、「唾液腺マッサージ」を!
口の中が乾燥するのも、加齢によって唾液の量が少なくなることが原因の1つ。
唾液の量が少なくなるとむせたり、食べ物がのどに詰まりやすくなったりします。
乾燥が気になるときのほか、食事の前にも、下で紹介する「唾液腺マッサージ」を行ってみてください。
それぞれ5~10回行うだけで唾液が出やすくなります。
口腔機能が衰えないように気をつければ、なんでも食べられるので、新型栄養失調やサルコペニアのリスクが低下します。
食べこぼしやむせが減るので、レストランやカフェでの食事も気兼ねなく楽しめるでしょう。
好きな詩や小説のフレーズを朗読したり、大きな声で歌ったりするのも、オーラルフレイル対策になります。
「むせ」「乾燥」が気になったら、簡単にできる「唾液腺マッサージ」
唾液腺は顔の周りの3か所にあるので、まず位置を確認。唾液には、口の中を清潔にしたり、食べ物の消化を助けたりする働きがあります。
唾液腺をやさしく刺激することで、唾液がたくさん出て、食べ物が口の中でまとまり、飲み込みやすくなります。食事の前に行って、むせ防止に役立てましょう。
食事前に各5~10回を目安に!
【耳下腺マッサージ】
両ほほに親指以外の4本の指をそろえて当て、指をグルグル回転させて奥歯の周囲をもみほぐします。
【顎下腺マッサージ】
耳の下からあごの下にかけて、指先で下からやわらかく押し上げていきます。
【舌下腺マッサージ】
親指の腹を使い、あごの下側を軽く押すようにマッサージしましょう。
イラスト/中村知史
要介護の手前の「フレイル」状態を防ぐために自宅でもできる健康法について、5章にわたって分かりやすく解説