「病院の方が医療の質が高い」は誤解です。医師が教える「クリニックと病院の上手な使い分け」

「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。

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クリニックと病院を上手に使い分ければ質の高い医療を受けられます

① クリニックには、病院にない利点があります
② クリニックと病院の役割分担を知っておきましょう


クリニックと病院に上下関係はない

病院では、しばしば患者さんにクリニックで診てもらうことをすすめる機会があります。

クリニックのかかりつけ医と病院の医者を上手に使い分けられると、患者さんにとってメリットが非常に大きいからです。

ところが、病院の医者が「かかりつけの先生に診てもらってください」と言うと、「もうこの病院では診てもらえないのですか?」と、不安そうに聞く人によく出会います。

「病院の方がクリニックより質の高い医療を提供してもらえる」と誤解している人が実に多いのです。

医療の質において、病院とクリニックに上下関係はありません。

地域で役割分担をしている、と考えるのが正確です。

ここでいう「病院」とは、制度上は病床数が20床以上の大きな医療機関で、大学病院や市民病院、医療センターなどと呼ばれる病院のことです。

もし、すべての患者さんが最初から病院に行くと、外来の待ち時間が長くなり、一人当たりの診察時間は短くなり、病院で診療すべき重症の患者さんに適切にリソースを割くのが難しくなります。

一方クリニックでは、病院に行く前の段階で、病院に行くべき状態なのか、クリニックで診るべき状態なのかを判断します。

もし、クリニックで治療できる状態であれば、そのままクリニックに通った方が患者さんの負担は小さくなります。

クリニックの方が比較的待ち時間は短く、初診料は安くつきますし、遠くの病院に行くほどの手間もかからず、体への負担も少なくて済みます。

病状によっては、一度の受診で済まないことの方が多いでしょう。

何度も定期的に通うことになると、一回一回の通院の際にかかる負担が小さい方が、身体の状態を維持するには圧倒的に有利です。

クリニックでかかりつけ医が診察した結果、病院での精密検査が必要だと判断されれば、紹介状を書いてもらえます。

かかりつけ医は、その地域の病院と頻繁にやりとりしているため、それぞれの病院の特性をよく知っています。

患者さんの病状に応じて、最適な病院を選び、スムーズに紹介してくれるでしょう。

「病院選び」という難しい選択を自力でせずに済み、専門家に任せられるのは大きなメリットです。

もちろん、患者さんから「○○病院の△△先生に紹介状を書いてください」とお願いすることもできますが、地域医療のプロに病院を選んでもらう方が、よりよい選択になりやすいはずです。

また、「病院に行きたいけれど、いったい何科に行けばいいかわからない」ということもあるはずです。

そんなときは、まずかかりつけ医に相談し、その上で適切な病院・診療科を紹介してもらう方がスムーズに治療を受けられます。

かかりつけ医は内科で選ぶ

生活習慣病の患者さんのように、長い間飲み続けなければならない薬をもらいに行く場合は、クリニックを利用するのが間違いなくよいでしょう。

病院で長い間待たされたのに診察はものの数分で終わり、その後もまた薬局で待たされる、という苦痛に耐えるのは割に合いません。

むしろ、薬の定期処方を口実にかかりつけ医を頼れると、患者さんにとっては有利です。

毎回ちょっとした疑問について相談したり、不安を聞いてもらったりと上手にかかりつけ医を利用することが大切です。

また、かかりつけ医を利用することには、もう一つ重要なメリットがあります。

「いつ行っても必ず同じ医者が診てくれること」です。

大きな病院では、曜日によって、あるいはかかる科によって毎回違う医者が診察することになります。

私自身も、勤務先の病院では外来担当は週に1日です。

あるいは、午前と午後で外来担当医が替わるところもあります。

同じ医者の外来に定期通院するケースでも、医者が転勤して担当がかわることはしばしばあります。

確かに、カルテ記録を見れば患者さんの経過はきちんとわかります。

しかし、同じ患者さんと何度も顔を合わせていると、カルテには明文化しにくい微妙な変化を察知できることもあります。

普段診ているからこそ、初めて診る医者がキャッチするのが難しい情報を得ることができた、と感じる場面もあるのです。

かかりつけ医を持っていると、いつも同じ医者が患者さんを診ることになるため、普段と違う様子に鋭敏に気づくことができます。

それは、患者さん自身も気づかないようなわずかな異変かもしれません。

ここに、かかりつけ医を頼ることの大きなメリットがあります。

なお、かかりつけ医は内科を選ぶとよいでしょう。

各科の専門領域によらず、全身を一通り診ることができるからです。

選び方としては、近所の評判なども気になると思いますが、まずは通いやすいところをおすすめします。

「熱があるけど遠すぎて行くのがつらい」という場所ではクリニックの良さが生かされません。

定期的に通う際に負担が少ないことを重視してください。

眼科や耳鼻科、整形外科や歯科などは、専門性が高い分、全身のどんな病気でも診療する、というわけにはいきません。

全般的な相談ができる内科医をかかりつけ医として持っておくのがおすすめです。

【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト

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医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています

 

山本健人(やまもと・たけひと)
京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。「外科医けいゆう」のペンネームで運営する医療情報サイトが好評で、Twitterのフォロワー数は約7万人を数える。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)、『もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』(シービーアール)、『もったいない患者対応』(じほう)がある。

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『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』

(山本健人/KADOKAWA)

病気で悩まないためには、何でも医師に「お任せ」ではなく、私たち患者自身も「自分を守るための知識」を身につける必要がありますよね。医師や医療行為に対してよく感じる疑問や不安に一つ一つ答える形式で、上手な「病院の利用法」についてわかりやすくレクチャーしてくれます。令和版「医師のトリセツ」とも言える、必携の一冊です!

※この記事は『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』(山本健人/KADOKAWA)からの抜粋です。
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