6種類以上は特に注意! 必要以上に多くの薬を飲むことで生じる「ポリファーマシー」とは

「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。

pixta_68524233_S.jpg


「薬をたくさん飲んでいるのですが、このまま飲み続けていいのでしょうか?」

【答え】
① 薬を減らすことができる場合もあります
② 何のために飲んでいるのかわからない薬があるときは医者に相談しましょう


「ポリファーマシー」に要注意!

持病が多い人は、複数の病院に同時に通っていたり、一つの病院でも複数の診療科にかかっていたりするでしょう。

それぞれでたくさんの薬が処方されていて、患者さんやご家族から、「薬が多すぎて、いつも飲むのが大変だ」という不満を聞くこともよくあります。

すべての薬が必要なものなら、「薬が多いこと」そのものが悪いわけではありません。

実際、多くの薬を飲んでいて、かつどれも欠かせない、という患者さんもいます。

一方で、必要以上に多くの薬を飲むことで、副作用などのデメリットが生じてしまう人もいます。

この状態のことを「ポリファーマシー」と呼びます。

「Poly(たくさんの)」と「Pharmacy(薬剤)」からなる言葉です。

特に高齢の方に多く、高齢化が進む中でこれが大きな問題になっています。

ポリファーマシーには、副作用だけでなく、薬が多すぎるせいで飲み間違いや飲み忘れ(残薬)が増える、といった問題があります。

飲み忘れによって発生する薬剤コストは年間数百億円にのぼるとも言われ、医療経済的にも大問題になっています。

「何種類以上ならポリファーマシーか」という明確な基準はありませんが、6種類以上になると副作用(有害事象)の数が増えるというデータもあることから、このあたりを「要注意」のラインと考えるのが一般的です。

たとえば、高齢の方にありがちなのが、高血圧で内科に通っていて降圧薬をもらい、腰痛で整形外科で痛み止めをもらい、頻尿で泌尿器科に、白内障で眼科に......と、さまざまな医療機関を掛け持ちして薬をもらっているケースです。

あまりに多くなると、医者もその患者さんに処方されている薬の全体像を把握しづらくなってきます。

薬がどんどん積み重なってきて、同じ効果を持つ薬が重なったり、飲み合わせの悪い薬が入ったり、といったことが起こってしまいます。

もちろん、いずれの科の医者もそれぞれの科でベストな処方をしているには違いないのですが、患者さんの体をトータルで考えると「ベスト」とは言えなくなっている、という事態が起こりうるのです。

また、医者は一般的に自分以外が処方した薬について「この薬はやめていい」と患者さんに伝えるのは少し抵抗があります。

処方した医者がきちんと必要性を認識して処方したかもしれないのに、第三者である自分が勝手な判断で中止して患者さんに不利益を与えてはいけない、と思うからです。

自分の専門とは異なる領域の医者が処方した薬なら、そのハードルはより一層高くなります。

こうした事情もまた、ポリファーマシーの原因になっていることがあります。

特に高齢の方は、一つ一つの薬が「なぜ処方されているか」を把握せず、言われるままに飲んでいる、というケースもよくあります。

そのため、たとえば鼻水の症状があったときにもらったアレルギーの薬が、もう鼻水がすっかりおさまっているのに処方され続けている、といったこともあるのです。

なぜ飲んでいるのかわからない薬や、今の自分には必要がないと思われる薬があることに気づいたときは、医者や薬剤師に相談するようにしてください。

あるいは、前述した通り、かかりつけ薬局を一つ決めて、そこで一元管理してもらうのもおすすめです。

自分の体は自分で管理するのが理想ではありますが、専門知識を持たない患者さんがあらゆる薬のプロファイルを把握するのは大変です。

ポリファーマシーのリスクを知っておき、上手に専門家を利用することが大切です。

「どんな体を目指すか」も大切

高齢の方の場合は、「どの程度の治療レベルを目指すのか」を医者と相談することも大切です。

以前、薬をたくさん飲んでいる患者さんのご家族から、こんな相談を受けたことがあります。

「完璧を目指すならすべての薬が必要なのは理解していますが、父は80代ですし、完璧な体を目指そうとは思っていません。"そこそこの体"を維持するために必要な薬だけにしていただけませんか?」

複数の病気を抱えた高齢の患者さんが、本当にすべての病気に対して"完璧な"治療を受けたいと考えているのかどうか、一度は立ち止まって考える必要があります。

特に、あと何十年も生きられるかどうかわからない年齢なら、毎日お腹いっぱいになるほど薬を飲む生活は、かえって患者さんの幸せを奪っているかもしれません。

もちろん、健康で快適な生活を続けるのに必要な薬であれば、メリットは大きいでしょう。

しかし、なかには数年、数十年先の健康のために飲む薬もあります。

その場合は、年齢に応じて治療のレベルを調整する必要があります。

高齢の方なら「そこそこの治療レベル」に落とし、薬による負担を軽くしてもらうのも一案です。

当然ながら、薬にかかるコスト面への配慮も重要です。

一方で、薬が多いからといって自己判断で減らしたり、勝手に飲むのをやめたりするのは厳禁です。

「○○の薬を飲んではいけない」という週刊誌などの記事を見て、独断で薬をやめてしまう人がいますが、非常に危険なことです。

薬の中には、突然やめたり量を減らしたりすることで、体に大きなトラブルを引き起こすものがあるからです。

薬をやめるためには、徐々に用量を減らしたり、別の薬に置き換えたりするなど、段階を踏むべきケースも多々あります。

「薬の中止」にも専門的な技術が必要だ、ということは、ぜひ知っておいてください。

【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト

71+bQmpLwaL.jpg

医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています

 

山本健人(やまもと・たけひと)
京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。「外科医けいゆう」のペンネームで運営する医療情報サイトが好評で、Twitterのフォロワー数は約7万人を数える。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)、『もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』(シービーアール)、『もったいない患者対応』(じほう)がある。

shoei.jpg

『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』

(山本健人/KADOKAWA)

病気で悩まないためには、何でも医師に「お任せ」ではなく、私たち患者自身も「自分を守るための知識」を身につける必要がありますよね。医師や医療行為に対してよく感じる疑問や不安に一つ一つ答える形式で、上手な「病院の利用法」についてわかりやすくレクチャーしてくれます。令和版「医師のトリセツ」とも言える、必携の一冊です!

※この記事は『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』(山本健人/KADOKAWA)からの抜粋です。
PAGE TOP