足の裏から足指にかけて、しびれや痛みを感じたことはありませんか? ひょっとするとそれは「足根管(そっこんかん)症候群」かもしれません。そこで、日本医科大学千葉北総病院脳神経センター准教授の金 景成(きん・きょんそん)先生に、「足根管症候群」の原因や対処法について教えていただきました。
足裏を支配する神経が傷つけられる病気
「足根管症候群」は足根管内の神経(後脛骨神経)が何らかの原因で圧迫され、足の裏から足指にかけてしびれや痛みを感じる病気です。
「足根管」は内くるぶしとかかとの間にある狭いトンネルで、ふくらはぎから足の裏に続く神経の通り道。
神経のほか、動脈と静脈が一緒に走っているため、神経が傷みやすくなります。
しびれや痛みのほか、足をつけたときに砂利や餅を踏んでいるような違和感(異物付着感)を覚える、冷えやほてりを感じるなどの症状を訴える患者さんもいます。
歩行時、運動時、入浴時、夜間就寝時などさまざまな場面で症状が出ますが、かかと部に出ることは少ないのが特徴です。
しびれが強くなると日常生活に支障を来しますが、麻痺で歩けなくなることはありません。
60~70歳以上に多い病気です。
神経を圧迫する要因はさまざまです。
捻挫や骨折など外傷による足首の変形、ガングリオン(ゼリー状の物質が詰まった腫瘤)や静脈瘤などの腫瘤、動脈硬化などがあります。
偏平足や加齢に伴う神経と血管の癒着などで発症する場合もあります。
【主な症状】
- 足の裏(かかと部以外)から足指にかけて、しびれや痛みがある
- 足をつくと砂利や餅を踏んでいるような感じ
- 冷えやほてりを伴うことがある
どこに症状が出る?
足の裏から足指にかけてしびれや痛みが出る
かかと部に感じることは少ない
※「足底腱膜炎」は足裏のアーチに沿って症状がある。
●足根管はどうなっている?
足根管は内くるぶしの下にある神経のトンネル。このトンネルが狭くなり、後脛骨神経が圧迫されると、しびれや痛みが出る。
●自分で検査する方法
しびれや痛みが足の裏(かかと部以外)から指先まで広がるかどうか(「チネル徴候」という)検査する方法がある。受診前に自分で試してみましょう。
治療の基本は保存療法
検査では、圧迫されている部分を押して症状が足の裏や指先まで広がるかどうか調べます。
骨の変形や腫瘤の有無は画像検査で分かります。
神経や動脈・静脈の状態は画像検査で捉えづらいので、症状で診断します。
神経伝導障害の有無を調べるには、電気生理検査で神経伝導速度を測定します。
治療の基本は、リリカ、タリージェ、ノイロトロピンなどの薬でしびれや痛みを和らげます。
効果を見ながら、適宜、薬を調整します。
症状が強い場合は手術を考えます。
局所麻酔で2~3cm程皮膚を切り、神経を圧迫する要因を取り除きます。
1時間15分程の体に負担の少ない手術です。
神経の障害は完治が難しいですが、医師と丁寧にコミュニケーションを取りながら治療方針を決め、「今後自分がどのような生活を送りたいか」という目標に向かって、地道に取り組むことが大切です。
診断や治療ができる医療機関は限られています。
日本脊髄外科学会に所属する脳神経外科医や足根管症候群に詳しい神経内科医・整形外科医に、しっかり診てもらいましょう。
【主な治療方法】
- 歩き方の工夫
- 薬でしびれや痛みを和らげる
- 症状が強い場合は神経の圧迫を取り除く手術
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●手術の方法は?
顕微鏡を使って神経を圧迫する要因を取り除く。さまざまな手術法がある。
※図は、動脈硬化により動脈が神経を圧迫している例への最新の手術法。
[手術前]
[手術後]
※足根管症候群の手術ができる病院は限られている。詳しくは日本脊髄外科学会ホームページを参照のこと。
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●判別が難しいほかの病気
[糖尿病神経障害]
両足の裏にしびれや痛みが出ることがある。足根管症候群も併発しやすい。[頸椎・胸椎疾患]
脊髄疾患の症状として似たような症状が出ることがある。[腰椎手術の後遺症]
腰の手術の後遺症で7割は足底のしびれが残るといわれる。
取材・文・構成/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子