病院でもらう薬の方が効く気がする...⁉ 医師に聞いた「処方薬と市販薬の違い」とは

「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。

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「市販の薬より、病院でもらう薬の方がよく効く気がするのですが、実際はどうなのですか?」

【答え】
① 必ずしも市販の薬の方が劣っているわけではありません
② 病院でもらう薬と市販薬を上手に使い分けるのがおすすめです


処方される薬と市販薬でまったく同じ性質のものもある

患者さんの中には、市販薬より病院で処方してもらう薬の方が良い薬だからよく効く、と思っている人がいます。

しかし、必ずしもそうとは限りません。

市販薬と病院で処方する薬がまったく同じ、あるいは成分に大差はない、というものもたくさんあるからです。

たとえば、痛み止めとしてよく使う「ロキソニンS®錠」という薬があります。

これは、病院で処方されるロキソニン®錠(ロキソプロフェン)と同じ薬です。

成分、成分量、添加物や錠剤の形、大きさもすべて同じです。

効果も副作用も同じと考えてよいでしょう。

また、よく知られたPLという風邪薬(パイロンPL顆粒)は、病院で処方するPL(PL配合顆粒)と成分はほぼ同じです。

違いとしては、市販のものの方が成分量がやや少なめになっていることと、飲む回数の制限が、病院のものなら1日4回、市販のものは1日3回になっていることです。

いずれにしても、効果にそれほど大差はありませんから、「市販の風邪薬が効かないので病院から処方された風邪薬を使ってみたら劇的に効いた」ということは起こりえないと考えるべきです。

このように、市販薬と病院で処方する薬に大差がない場合は、市販薬を上手に使う方が患者さんにとっては有利です。

病院で長時間待って体に負担をかけたり、他の患者さんから感染症をうつされたりするリスクを考えれば、病院に行くデメリットの方が明らかに大きいからです。

こうした観点から、近年「セルフメディケーション」という言葉が広く知られるようになっています。

「セルフ」は「自分自身」、「メディケーション」は「薬による治療」を意味する言葉です。

軽症の病気であれば、市販薬を使って自分で対応することが推奨されているのです。

セルフメディケーション税制として、特定の市販薬を購入すれば税金の負担が軽くなる制度もあります(※)。

もちろん、自力で医学知識を身につけて市販薬を使いこなすのは簡単なことではないため、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者を上手に利用することが大切です。

一方、市販薬にはもちろんデメリットもあります。

その一つが「多くの人の症状に対応できる複数の成分が含まれている」という点です。

不特定多数が使用するものなので、人によっては本来必要のない成分まで入っている、という欠点があるのです。

たとえば、痛み止めとして売られている市販薬の中に、鎮痛薬としての成分に加えて催眠鎮静薬やカフェインなどが含まれていたり、水虫の塗り薬に、抗真菌薬(水虫の原因となる菌をやっつける薬)だけでなく、痒み止めやメントールが含まれていたり、といった例があります。

患者さんの状態に応じて必要最低限の成分だけを取り入れる、といった細かなカスタマイズができないのは、市販薬の最大のデメリットと言えるでしょう。

また、市販薬のラインナップは限られているため、患者さんに最も必要な薬が市販されていない、ということはよくあります。

たとえば、胃薬には膨大な種類の市販薬がありますが、胃酸を抑えるのに最も有効な薬であるプロトンポンプ阻害薬は、2020年5月の時点では市販されていません。

この薬は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃食道逆流症に対して、一般に「第一選択」として使用される薬です。

また、片頭痛の第一選択薬であるトリプタンも今のところ市販薬として販売されていません。

このような例は他にもたくさんあります。

市販薬を上手に利用することが重要とはいえ、効果が芳しくないのに市販薬で漫然と対応するのも避けたいところです。

長期にわたって使用するときは、必ず医者や薬剤師に相談すべきでしょう。

薬は飲み方によって効果が変わることはない飲み薬には、錠剤、粉、シロップ(液体)など、さまざまなタイプがありますが、同じ薬で用量も同じなら形が違っても効能は原則同じです。

「錠剤よりも粉やシロップの方がよく効くのではないか」と思う人もいるようですが、そういうわけではありません。

薬は、体内に入り、成分が血液中に取り込まれて全身をめぐり、狙った場所に到達して効果が出るものです。

粉を水に溶かして飲んでも、シロップを水で薄めて飲んでも、同じものが同じ分量だけ体の中に入る以上、効果は同じと考えてよいでしょう。

また、子どもの場合、錠剤や粉が飲みにくいためシロップを処方されることも多いと思いますが、大人であっても錠剤や粉を飲むのが苦手な患者さんはいます。

その場合は、違った剤型の薬がないかを探すことも可能です。

たとえば、口の中で溶けるために水と一緒に飲まなくてもいい錠剤がありますし、一部の咳止めのように、錠剤も粉もシロップもある、というパターンもあります。

ゼリー製剤など、患者さんの飲みやすさに配慮したものもあります。

よって、薬を飲みにくいと感じたときは、医者や薬局の薬剤師に相談してみるのがよいでしょう。

場合によっては、同じ効果が期待できて、タイプが異なる薬を提案してもらえることもあるからです。

(※)セルフメディケーション税制......「スイッチOTC医薬品(医療用から一般用に切り替えた薬)」と呼ばれる一定の薬を購入した金額が年間1万2000円を超えるときは、その超える部分の金額(上限8万8000円)が所得から控除できる制度。これによって税金の負担が軽くなります。

【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト

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医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています

 

山本健人(やまもと・たけひと)
京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。「外科医けいゆう」のペンネームで運営する医療情報サイトが好評で、Twitterのフォロワー数は約7万人を数える。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)、『もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』(シービーアール)、『もったいない患者対応』(じほう)がある。

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『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』

(山本健人/KADOKAWA)

病気で悩まないためには、何でも医師に「お任せ」ではなく、私たち患者自身も「自分を守るための知識」を身につける必要がありますよね。医師や医療行為に対してよく感じる疑問や不安に一つ一つ答える形式で、上手な「病院の利用法」についてわかりやすくレクチャーしてくれます。令和版「医師のトリセツ」とも言える、必携の一冊です!

※この記事は『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』(山本健人/KADOKAWA)からの抜粋です。
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