結果が出なくて不安。失敗してなかなか立ち直れない...。災害や社会情勢の変化など、最近トラブル続きのメンタルが整わないと思う人も多いはず! そんなメンタルを解消しようと元格闘家・大山峻護さんは運動プログラムを開発。その大山さんが明治大学の堀田秀吾教授とタッグを組み、そのプログラムを科学的なエビデンスとともにまとめた共著『科学的に証明された 心が強くなるストレッチ』(堀田秀吾&大山峻護/アスコム)から、「運動とメンタルの関係性」やそれぞれの心の状態にあったストレッチを一部ご紹介します。
気持ちの切り替えができる人が「心が強い人」だ
メンタルの強い人は、実は、気持ちの切り替えがうまい人です。
メンタルが弱い人は、気持ちの切り替えがうまくいかない人です。
気持ちの切り替えがうまくいけば、メンタルは強くなります。
では、どうすればいいのか?
頭で考えても、うまくいきません。
なぜなら、気持ちの切り替えスイッチは、体にあるからです。
気持ちがへこんだら、体を動かす。
もやもやしたら、体を動かす。
緊張してきたら体を動かす。
体を動かして気持ちの切り替えスイッチを入れると、しなやかで、折れない強いメンタルが手に入ります。
なぜ、そんなことが起こるのか?
科学的に説明しましょう。
気持ちがへこんだり、もやもやしたり、緊張してきたりすると、ノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンなどの脳内ホルモンの分泌のバランスが悪くなります。
加えて、自律神経のバランスも崩れます。
この状態を元に戻してくれるのが、体です。
体を動かすと、脳内ホルモンの分泌が正常になり、自律神経のバランスが整います。
すると、ストレスの感じ方や、気持ちの状態が変わります。
心の感受性、しなやかさや強さも変わってくるのです。
つまり、体で心をコントロールするのです!
その方法が、「心が強くなるストレッチ」。
あなたも、体を使って、気持ちの切り替えができるようになりましょう。
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる
「心が強くなるストレッチ」の基本法則のひとつは、体を使って脳をだまし、ポジティブな感情をつくることです。
脳は、かなり孤独です。
暗い頭蓋骨の中に閉じこもっていて、自分自身では見ることも、聞くことも、感じることも何もできません。
頼りにしているのは、体のあらゆる感覚器から送られてくる情報。
脳は、その情報を元に、いろいろと判断したり、感情をつくり出したりしています。
ですから、体からポジティブな情報を脳に送れば、「私は今、ポジティブモードだ!」と脳をだますことができるのです。
例えば、笑顔をつくるとか、上を見るとか、滑稽な動きをするとか......。
そうした動作は、脳の中に楽しい、うれしいものとインプットされているため、ポジティブな感情が芽生えてくることになります。
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなるのです。
脳をだますには、感覚器としての筋肉を利用するという方法もあります。
筋肉は体を動かす器官ですが、体を動かしたときの筋肉の長さや張力などの変化を脳に伝える感覚器でもあります。
私たちが目を閉じていても、どの関節がどのくらい曲がっているのかわかるのは、その情報が脳に伝わっているからです。
例えば、体が緊張でガチガチになっているときに、手足を動かしてみる、歩いてみるだけで緊張がやわらぎます。
それは、筋肉の張力がゆるむと、脳が「リラックスしていいんだ」と判断するからです。
哲学者のアリストテレスは、散歩しながら思案したり、弟子と議論を交わしたりしたといいます。
当時はまだ解明されていたことではありませんが、経験的に、軽度の運動は脳のはたらきをよくすることに気づいていたのでしょう。
筋肉をよく動かすと、脳は幸せになる
「心が強くなるストレッチ」の基本法則のもうひとつは、体を動かすことで、直接的に脳内ホルモンや自律神経のバランスを整えることです。
あなたは、運動した後に気持ちがよくなったり、頭がスッキリしたり、やる気が起きたりしたことはありませんか?
仕事や勉強の合間の散歩やジョギングが、気分転換になったことはありませんか?
体を動かした後に、さっきまでと心の状態が変わったと感じるのは、脳の状態が変わるからなのです。
例えば、運動すると、心を安定させるホルモン、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる、セロトニンの分泌が増えるといわれています。
過剰に分泌すると心の状態が悪くなるノルアドレナリンとドーパミンですが、少なすぎると逆に意欲が低下したり、注意力が散漫になったりします。
この2つのホルモンも、運動によって適度に分泌されます。
ノルアドレナリンが出てくると脳が目覚めてはたらき出し、自尊心の回復にもつながります。
ドーパミンが出てくると、気持ちが前向きになり、注意力が高まります。
運動後に気持ちよくなるのは、自律神経のバランスも関係しています。
筋肉を動かしていると交感神経が活性化しますが、運動後はスッと活性化が落ちます。
体が急激に休息モードになることで副交感神経が優位になり、気分がよくなってリラックスするのです。
セロトニンは、この副交感優位の時間にも分泌量が増えるといわれています。
運動と脳の関係がわかりはじめたのは最近のことですが、その強い結びつきは日々明らかになってきています。
体にいいことは、心にもいい
「心が強くなるストレッチ」の基本は、
①体を使って脳をだます
②体を動かして脳内ホルモンと自律神経を整える
ということです。
そうすることで、ネガティブな心をポジティブに転換します。
さらに「心が強くなるストレッチ」には、メンタルを強くするだけでなく、脳のはたらきをよくする効果もあります。
というのは、体を動かすと、脳の中の記憶を司つかさどる部位(海馬)が強化され、脳のはたらきがよくなるからです。
もちろん、体を動かすメソッドですから、筋力維持や心肺機能を高める効果もあります。
体にいいことは、心にもいいことなのです。
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6章にわたって、ストレスに悩む多くの企業が導入している「心が強くなる」運動プログラムをわかりやすく解説しています