長い歴史をもつ阿波晩茶(左)と、3cm角に切り出した茶をむしろに広げて干す様が碁石のように見えることから名が付いた碁石茶(右)
お茶にはさまざまありますが、「お漬け物のようなお茶」といわれ、人気が高まっているのが後発酵茶(こうはっこうちゃ)です。収穫した茶葉を熱処理した後、乳酸菌などの微生物により自然発酵させるのが特徴で、高知県の碁石茶(ごいしちゃ)、徳島県の阿波晩茶(あわばんちゃ)、富山県のバタバタ茶などがあります。
微生物発酵のお茶で、体の中から健康に
「後発酵茶は、古くから各地でつくられていましたが、煎茶が好まれるようになったことで次第に生産数が少なくなり、いまでは極めて希少になってしまいました。後発酵茶が見直されるようになったのは、その特殊な成分にあります。いずれも植物性の乳酸菌を非常に多く含み、飲み続けることで腸内環境を整えて免疫力を高めてくれます。しかもカテキンやカフェインが少なく、子供から年配の方まで、安心して飲めるのも人気の理由です」と話すのは、中村順行先生。
腸内環境を整えるには、やかんにたっぷりと沸かした後発酵茶を、まる一日かけてちょこちょこと飲むのがおすすめです。ですが、乳酸発酵させる後発酵茶は、他のお茶とは異なり、乳酸発酵特有の酸味があるのが特徴です。酸っぱい物が苦手な方は、冷茶にして飲むと、酸味が抑えられて飲みやすくなるので試してみましょう。
「産地では、ご飯に阿波晩茶をかけてお茶漬けにしたり、煮出した碁石茶に米とさつまいもを入れて炊き、茶がゆにする習慣も。焼酎の後発酵茶割りというのも定番です」とは、日本茶専門店を営む小方奈央さん。昔ながらの製法を守り、独自の手法でつくられる後発酵茶の出荷はまさにいまが本番。自然の恵みがたっぷり詰まったお茶で、体の中から整えましょう。
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取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/米山典子
中村順行(なかむら・よりゆき)さん
静岡県立大学食品栄養環境科学研究院・食品栄養科学部特任教授、食品栄養環境科学研究院附属茶学総合研究センター長。
小方奈緒(おがた・なお)さん
おがた・なお 「日本茶専門店 茶倉 SAKURA」(神奈川県横浜市)店主。日本茶カフェを営むお茶の達人。これまで訪れた産地は50か所を超える。