「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。
医者は患者の顔を覚えているか?
病院の外で不意に患者さんから声をかけられ、すぐに名前を思い出せないことが時々あります。
自分が担当した患者さんだということは記憶にあるのですが、どんな人だったのかなかなか思い出せない。
ところが、不思議なことに病名や治療経過など医学的な情報を教えられると、突如として患者さんの名前、性格、家族関係までありありと思い出せることがあるのです。
私たち医者にとっては、患者さんの顔よりもカルテに書かれた治療経過や、CT、MRI画像などを見る方が患者さんに関する情報をはるかに思い出しやすいものです。
私たちの頭の中では、患者さんはそれぞれ固有の医療情報と明確に紐づいているからです。
逆に言えば、それだけ体の中の状態も、治療経過も一人一人違う、ということです。
もちろん顔も一人一人違うのですが、医学的な意味では大きな違いではありません(顔に病気がある方を除いては)。
一方で、私たち医者はよく、病気に対して「顔つき」という表現を使います。
たとえば、同じ胃がんでも「がんの顔つき」はそれぞれ違います。
「顔つき」には、病変の肉眼的な外観だけでなく、内視鏡やCTに写る画像、顕微鏡で見た姿、そのすべてを含みます。
私たちは、自分の専門分野の病気に関しては、こうした「医学的な差異」にとても敏感です。
胃がんの内視鏡画像を見るだけで、それがどの患者さんのものかを見分けられることもよくありますし、「どんなきっかけで発見されたか」「どんな治療法を選択したか」なども頭に浮かびます。
さらには、その患者さんの社会的背景、つまり、家族構成や職業などまで同時に思い出せることもあります。
同様に、耳鼻科医なら自分が担当した患者さんの鼻や耳などを見れば誰だかわかることがあるでしょうし、脳外科医なら脳のMRI画像で患者さんを特定できることもあるでしょう。
私たちは膨大な数の患者さんを診療するため、すべての人の顔と名前を一致させることはなかなかできません。
しかし、医学的に重要な情報とはしっかり紐づいていて、その情報がトリガーとなって記憶が呼び起こされるのです。
よって、大変失礼な提案ではありますが、久しぶりに会う医者に声をかけるときは、少しだけ医学的な情報を補足するのが有効です。
「○年○月に腸閉塞で入院した△△です」というように......。
【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト
医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています