体の痛みや見た目の老けにつながりやすい「猫背」。慈恵医大リハビリテーション科の安保雅博さんと中山恭秀さんは、「背中がまっすぐになると、若々しく元気に見える」と言います。そこで、そんな2人の著書『丸まった背中が2カ月で伸びる!』(すばる舎)から、丸くなる原因と寝たままできる簡単トレーニングの一部を連載形式でお届けします。
「疲れてる?」と聞かれる理由
人から「疲れているの?」と言われることはないでしょうか。
「どうして?」「そんなふうに見える?」と聞くと、「疲れた歩き方をしているから......」という答えが返ってきたりします。
こうしたとき、たいていは悪い姿勢、猫背で歩いています。
実際、胸を張って歩いていたら、疲れているようには見えないでしょう。
自分でも、無意識に歩いているとき、ふと街中のショーウィンドウなどで自分の姿が目に飛び込んできて、「なんだか背中が丸い......」「こんなに姿勢悪く歩いていたなんて」とショックを受けることもあります。
自分ではなかなか気づけませんが、年齢とともにだんだん姿勢が悪くなってきた。
猫背になってきた......。
そういうケースも多いものです。
では、疲れを感じさせない、立ったときにもっとも良い姿勢とは、どんなものでしょうか?
上げた腕を下ろしたときがベストな姿勢
皆さん、ラジオ体操第一はできると思います。
私の年齢くらいの人は、ラジオ体操がちゃんとできるか小学校などで試験があったり、夏休みの朝にラジオ体操をしにいって、出席のハンコをもらわないといけなかったりして、音楽がなりさえすれば勝手に体が動くでしょう。
最初の運動で、立った状態でまっすぐ両手を耳に挟む感じで上にあげますよね。
そして、手を返して肘を伸ばしたまま、下に下げます。
その瞬間、まっすぐぴんと立っていますよね。
それが良い姿勢です。
そのままの姿勢で歩くのがベストです。
肩が窮屈に感じませんか?
首をまっすぐにしているのはつらくないですか?
他の方法としては、壁に背中をつけるように、まっすぐ立てるでしょうか?
もちろん頭を壁につけてです。
お尻の出っ張りがある分、かかとは少し壁から離しても大丈夫です。
または、肘を伸ばした万歳の状態で、仰向けに寝ることができますか?
できない場合、骨が曲がっていたり、関節が固くなっていたり、筋力低下があったり、何かしらできなくなってしまった原因があるものです。
チェックをしなければなりません。
姿勢をまっすぐに保つ筋肉
骨に問題がなくて、前述したようにまっすぐピンと立てたり、万歳して仰向けに寝られるにもかかわらず、歩くと背中が丸くなってしまう......。
その一番の原因は、背中や首を支える、まっすぐに保つ筋肉の衰えと言えます。
背筋は背中をまっすぐに保つ筋肉ですが、若いときは意識すれば背中をしゃんと伸ばせたのは、筋肉が丈夫だったからということになります。
また、こうした場合だと、関節が固くなって正常な範囲まで動かない、「関節可動域制限」のあることがほとんどです。
関節可動域とは、関節が動く角度のことです。
たとえば肘の関節はぴんと伸ばせて、曲げても肩に触れるところまでは曲がりませんよね。
本来、誰にも共通した、関節を曲げたり伸ばしたりできる角度があるのですが、その角度まで動かせなくなるのを関節可動域制限と言います。
リハの現場でもちょっとしたトレーニングで改善
しかし、筋肉は鍛えれば確実につきますし、関節可動域制限もなくなっていきます。
たとえば、パーキンソン病を患っている患者さんがみえるとします。
パーキンソン病とは、震えや関節がこわばる、動きが鈍くなることなどを主症状とした、脳の病気です。
厚生労働省に難病指定されています。
パーキンソン病は重症度が上がるにつれ、歩行ができなくなります。
重症度の程度にはステージⅠからⅤまであり、Ⅴは寝たきりをあらわしますが、Ⅱは右左の両側性障害で、四肢・体幹の静止振戦(ふるえ)・固縮(筋肉のこわばり)と姿勢異常・動作緩慢が現れます。
歩くことはできますが、猫背の丸まった歩行になります。
そのため、ステージⅡの頃のリハビリテーションは、お薬と併用しながら、腕や肩を伸ばし、体幹のねじりの運動や背筋力を高める運動をしっかり行います。
すると、明確に歩容(歩く姿)が改善し、健常者の歩行へ近づいてくるのです。
病気ではなく、少し不摂生で起きてしまう猫背や、元気のない歩き方の場合には、リハビリテーションの現場でも、ちょっとした機能訓練で、数ヵ月で背中が伸びてくる人はたくさんいます。
イラスト/中村加代子
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