自分を「爽快感のある状態」に。東洋医学が伝える「疲労回復の一番のコツ」

よく寝たのにスッキリしない...なんで? その答えは、「疲労回復の方法は、人によって違う」と東洋医学の第一人者である中根一さんは言います。そこで、中根さんの著書『寝てもとれない疲れをとる本』(文響社)から、あなたの正解が見つかる「疲れの正体」と「体質別の疲労回復法」を連載形式でお届けします。

自分を「爽快感のある状態」に。東洋医学が伝える「疲労回復の一番のコツ」 pixta_61538492_S.jpg

忙しい人ほど知っておくべき疲労回復の一番のコツ

「体質」とは、体の働き方の偏りのことです。

根深い疲労も体のクセを感じているだけなので、病院で検査を受けても異常が見つからないケースがほとんどです。

それだけに、健康と病気の境目には、いつも「自覚」というセンサーを働かせていただきたい。

その際の指標は、私たちが直観的に感じる「いい感じ」と「イヤな感じ」、そして「幸せな感じ」「健康な感じ」「心地いい感じ」です。

たとえば満腹度で見れば、

「よし食べた、もう満足」:100%

「もうお腹いっぱい。ちょっと食べすぎたかなあ。大満足!」:120%

「おいしかった!あと1皿、追加してもいいけど、今も十分心地いい」:80%

といったところでしょう。

80%で食事を終えると、しばらくしてから血糖値が上がって満腹感が訪れるので、満足度の割にお腹への負担は軽くて済みます。

この、「80%の絶妙に充たされた爽快感」があなたの体の「いい感じ」。

物事のすべてを数値化しなくても、「爽快感」を知っていれば体を健康に維持することはできるのです。

この、「爽快感のある状態」は、体のすべての感覚に当てはまります。

私はこの状態を「フィールグッド」と呼んでいます。

心が弾むようなうれしい出来事があったり、よしなしごとを忘れ去ってしまいそうな美しい自然の景色を見ているときの感覚、これも「心のフィールグッド」です。

心地よい状態にあると、体はおのずと元気を取り戻します。

様々な感覚がこの状態になることを目指していくことが、「疲れ」を上手に受け流し、解消していくための一番のコツなのだと、東洋医学は伝えているのです。

自分にとって、どんな状態が「心地よい」と感じ、「爽快感を覚える」のか。

あなた自身の「フィールグッド」探しを、ふだんから心がけてみてください。

体質はすぐには変わらない。折り合い方を探っていこう

もしかしたら、「体質を変えたい」と思う人がいるかもしれません。

でも、東洋医学の目的は、それぞれの体質に合った治療を行ない、病気という過剰な偏りを調節して、患者さんが持っている体質へおさめること。

体質そのものを変えるのは、とても難しいことなのです。

もしも体の個性を変えたいのであれば、ライフスタイルを見直すところから始めましょう。

持って生まれた体質は変えられなくても、今までに培ってきた部分は変えていくことができるはずです。

「運動が嫌いだったけれど、ヨガを始めてみようかな」

「お酒のアテを、乾物から酢の物に変えてみた」

など、ちょっとしたことからまずは2週間続けてみると、これまでとは体の感じが少し変わってくることに気づくでしょう。

30代の、とても責任感が強い女性、Bさんの例を紹介します。

彼女は当院に鍼治療にいらっしゃっていますが、エネルギッシュな「木」タイプ(体質のタイプの一つ)。

ドラッグストアの調剤部に就職しましたが、薬剤師が自分一人しかいなかったために、休憩をとることもなく一日中頑張って働いていました。

しかしあるとき、体力と精神力の限界を超えてしまい、倒れてしまったのです。

倒れて初めて、自分が「木」タイプであることを知り、体の声に耳を澄ませることの重要性がわかったといいます。

最近では、意識的に運動をしたり、気分転換の時間をとっているそうです。

Bさんのように、行動を変えたからといって、すぐに体質が変わるというわけではありません。

適度な運動をするのも働きすぎを改善するのも、身の回りのストレスを整理したということです。

2週間経てば脳神経にクセがつくといわれますが、体の個性(体質)を変えるためには、何年にもわたった継続的な働きかけが必要となってくるのです。

体質維持は目的ではなく結果です。

無理なく自分を追い込まず、心地よく感じられる範囲で、体の個性を整えましょう。

Bさんも、今はゆっくりと時間をかけて自分のペースと人生を取り戻しつつあります。

それでもやっぱり、ときどき無理をして頑張ってしまうことがあるようなので、焦らずに自分のペースを確かめてもらっているところです。

今の体質を批判的に捉えて「変えよう」「改善しよう」と望むより先に、その体質とうまく折り合い、毎日をより快適にする方法を考えましょう。

あなただけの疲労回復法がわかる「寝てもとれない疲れをとる本」記事リストはこちら!

自分を「爽快感のある状態」に。東洋医学が伝える「疲労回復の一番のコツ」 099-H1-netemo.jpg東洋医学をベースにした「疲労回復メソッド」を4つの体質別に紹介。頭も冴える体質別「ツボ押しマップ」も

 

中根一(なかね・はじめ)
1970年生まれ。鍼灸Meridian烏丸院長。ロート製薬「SmartCamp東京・うめきた」ケア鍼灸監修。経絡治療学会の歴代最年少理事に就任した、日本の東洋医学の第一人者。慢性疾患や難病の治療、不妊体質の改善、体質と肌質に合わせた美容鍼灸なども行う。著書に『もう悩まない!やさしい鍼を打つための本』(医道の日本社)などがある。

099-H1-netemo.jpg

『寝てもとれない疲れをとる本』

(中根一/文響社)

「なかなか疲れが抜けない…」それ、もしかすると「あなたの休み方」があなたに合っていないかもしれません。疲労に悩む全ての人が知るべきは、4つの体質に合わせた、それぞれの対処法。体質の見分け方や最適なケア方法など、「あなただけの疲労回復法」が見つかる参考書です。

※この記事は『寝てもとれない疲れをとる本』(中根一/文響社)からの抜粋です。
PAGE TOP