寝違えたときの急激な首の痛みや、慢性的な体の痛みなどの解消に、痛み(ペイン)の治療を専門にするペインクリニックを訪れる人もいます。例えば、「年齢のせいだから付き合うしかない」と思っている慢性的な腰痛や、「まあ、命は助かったのだから」と言われた手術後に残った痛み、また「気のせいじゃないの」と言われてしまうような痛みまで、痛み全般に対応しています。どんな治療を行っているのか、西荻ペインクリニック理事長・院長の河手眞理子先生に伺いました。
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「今朝寝違えた!」の痛みなら、星状神経節ブロック注射1回で治る
ペインクリニックというのは、さまざまな痛みに対応しています。例えば、寝違えたときの首の痛みであれば、「トリガーポイント注射」という方法があります。これは、痛みを誘発する部位に局所麻酔薬を注射する方法です。
もうひとつは、「星状神経節(せいじょうしんけいせつ)ブロック」。これは、頸椎(けいつい)の脇に走っている交感神経の近くに局所麻酔薬を注射する方法です。交感神経の働きを一時的に鈍らせることができるので、血管が広がります。血流が増えることで痛み物質が流れていき、痛みが引くと考えられています。
注射自体は10秒ほどで終わります。その後、30分ほどクリニックで休んで体調をみます。激しい運動を避ければ、そのまま日常生活を営んで大丈夫です。健康保険が適用される治療で、「今朝寝違えた!」という場合なら、1回の治療で治ります。
星状神経節ブロックを体験した人は、特に上半身がぽかぽかしてくると言います。上半身の痛みに効果的な治療法なので、頭痛や肩凝り、腕の痛み、肩関節や背中の痛みも緩和されます。
ペインクリニックで痛みを取る治療法を知ると安心につながります
星状神経節ブロックはペインクリニック特有の治療法なので、詳しく説明をして納得した人にのみ治療を行います。首に注射をする、というと怖く感じる人もいるでしょう。恐怖が緊張を高めては効果も小さくなるため、説明後も不安がある人には注射以外の治療を検討します。
しかし、痛みのつらさを聞いてもらえた、いざとなったら痛みを取る治療法があると分かっただけで痛みが和らいだ、という人も大勢います。痛みは心とつながっていて、不安がなくなるだけでも痛みは緩和されるものなのです。
河手眞理子(かわて・まりこ)先生
西荻ペインクリニック理事長・院長。医学博士、麻酔科専門医・指導医。群馬大学医学部卒業後、東京大学医学部麻酔学教室、虎の門病院などを経て、日本のペインクリニックの草分け、若杉文吉医師の指導を受ける。著書に『ペインクリニックでいろいろな病気を治せます』(保健同人社)など。