肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。
イラスト/二階堂ちはる
「肩こり・首こり・腰痛」に効く入浴法
姿勢のクセや精神的ストレスが原因!
●肩までお湯に浸かり、しっかりと温めて、全身に血を巡らせる。
●肩や首を回すなど、軽い運動やストレッチをして筋肉をほぐす。
日本人を悩ませる代表的な症状の一つが「肩こり」です。
現代人はパソコンを用いた長時間のデスクワークを強いられることが多いため、症状を訴える人が増加しているように感じます。
日本人の2人に1人が肩のこりを感じているという調査もあり、もはや国民病と言っていいかもしれません。
スマホの普及により、同じ姿勢でじっと画面を見続けることが増えたことも、肩こり・首こり人口増加に一役買っていることでしょう。
また、年齢を重ねると「四十肩」「五十肩」といって、つらい肩の痛みが慢性化することもあります。
肩こりは、肩の周辺にある「僧帽筋」などの筋肉が緊張で硬くなり、血流が悪くなることが主原因です。
その他、頭部の様々な器官(歯、眼、鼻、脳など)の疾患が原因となることもあります。
精神的なストレスによって発症することもあります。
気づかいをしたりしすぎることで、肩や首などが緊張してしまい、それが肩こり・首こりにつながるのです。
肩こり・首こりでお悩みの人は、まず「肩までお湯に浸かって温める」ことが重要です。
しっかりと温めることで、緊張した筋肉に血流を巡らせてあげましょう。
また、肩や首をゆっくりと回して、筋肉をきちんとほぐすことも大切です。
近年では「トリガーポイント」という考え方があります。
肩こりなどで痛みが集中しているところ、硬くなっているところを指す言葉です。
西洋医学ではトリガーポイントと言いますが、東洋医学ではツボとも呼びます。
そういう場所を温めながらゆっくりとほぐしてあげることで、痛みが緩和するのです(ただし、あまり強い力で揉みほぐすと、炎症を起こすこともあるので注意してください)。
「四十肩」「五十肩」は肩関節の周囲の靭帯のこわばりによるものです。
電車でつり革をつかむとき、鈍い痛みが出たり、腕が持ち上がらないときは「四十肩」「五十肩」のサインです。
お湯で肩が温まったら、ゆっくり肩を回すなどの運動をするとよいでしょう。
お湯の温度と、浸かる時間は「40℃の湯に10分」がベスト。
すこしぬるいくらいのお湯にじっくりと浸かることにより、副交感神経が優位となります。
心身をリラックスさせて、体の緊張をゆるめてあげましょう。
腰痛
肩こりと並び、現代人の不調の代表として、腰痛が挙げられるでしょう。
特に年齢を重ねていくと症状を訴える人が多くなっていきます。
腰痛の原因は、ひとつではありません。
腰が痛む要因としては、筋肉の緊張が続き、発症してしまうケースが多いようです。
また、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などの病気もあります。
いずれにせよ、基本的にはお風呂の温熱効果で血流がよくなれば、腰の筋肉の疲労がとれ、慢性化した症状を緩和することができます。
しかし「急性の腰痛」の場合は注意が必要です。
いわゆる「ぎっくり腰」ですが、このケースでは、腰の筋肉に急激な炎症が起きている状態なので、医師の診断を受けるまで入浴は控えてください。
温熱効果以外で、腰痛に効く作用としては、「浮力」があります。
お湯の浮力によって、腰にかかる負担が劇的に減り、症状が改善することが多くあります。
40℃のお湯をたっぷり張って、15分ほどリラックスして入ってください。
筋肉の緊張によって痛みが発生している場合は、この入浴法で大きな効果が見込めます。
※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。
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入浴の効果から方法までが5章にわたって解説され、「正しい入浴」がすぐに実践できます。体の不調別入浴法や温泉や銭湯の効果的な入り方も