アレのスピードが上がれば死亡リスクが軽減!? 米国医師会が発表した60歳になる前に習慣付けたいことは?

「がん予防にいい食材は?」「食べてすぐ寝ると太る?」テレビやインターネットにあふれかえる情報、一体どれを信じればいいのかわからない・・・。そこで、ハーバード大学や米国国家機関などの統計データを基に、本当に効く健康法をまとめた『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)から、正しい健康管理術を連載形式でお届け。クイズ形式なので、ちょっとした話のネタにも使えます。

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介護依存や死亡リスクがもっとも低下する生活習慣とは?


米国医師会が発行する医師会誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に発表された研究によると、次の高齢者のうち介護依存になるリスクが低く、死亡リスクも低いのはどれか?

A.歩くのが速い
B.食べるのが速い
C.起床時間が早い


答え :A 歩行スピードの速い人(高齢者)ほど、介護依存になるリスクが低く、死亡リスクも低い。

自らの歩く速さを意識したことはあるでしょうか。

普段、何気なく歩いている人がほとんどだと思いますが、歳をとっていく中で、自分の歩くスピードが落ちていることに気が付いたら、要注意です。

実は歩く速さに今後の寿命が反映されるといったエビデンスがあるのです。

アメリカの医師会が発行する医師会雑誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に発表された研究で、歩行スピードと余命の関係について興味深い分析がなされています。

65歳以上の3万4000人の男女を対象にした9の調査をまとめて解析した結果、歩行スピードは余命と密接なつながりがあり、各年齢においての歩行スピードと残りの寿命がきれいな比例曲線で表せることが判明しました。

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例えば、男性では65歳の時点で1・1メートル/秒(1キロメートルを15分ペース)のスピードで歩けるなら、あと約20年は生きられる可能性が高くなります。

女性の場合、同様の条件では約27・5年も長生きできる可能性があることが示唆されています。

なぜこのような予測が立つのかといえば、歩行スピードというのは、将来の介護依存の可能性をもっとも感度よく反映する指標だからです。

介護が必要になるほど死亡リスクも高まるため、歩行スピードが寿命とも関連してくることになります。

65歳以上の日本人男女940人を対象とした調査では、最大歩行スピード、普通歩行スピード、片脚立ち、握力という、筋力を要する4つの測定項目を設け、結果が良かった順に人々を4つのグループに分けました。

そして、もっとも優れていたグループ1が向こう6年間に介護依存になるリスクを基準として、他のグループのリスクを算出したところ、いずれの項目も近い将来の介護依存度と関連を示しましたが、とくに歩行スピードの結果の精度が高くなりました。

ちなみに、調査項目の「握力」に関しては、握力が強い人ほど病気や外傷による死亡率が低いという研究があります。

世界17カ国の成人約14万人を対象に、平均4年間の追跡調査を行ったところ、握力が強いほど、心筋梗塞や脳卒中、がん、転倒、骨折などによる死亡率が下がることがわかっています。

こういったいくつかの研究を総合的に判断すると、筋力のある中高年ほど長生きできる可能性が高まるといえます。

実際に、アメリカで行われた3659人の男女(男性55歳以上、女性65歳以上)を対象とした調査において、もっとも筋肉量の多いグループはもっとも少ないグループに比べ死亡リスクが約20%低くなっています。

また、欧米の研究では、20~80歳の男性では筋力があるほど明らかに死亡率が低く、女性では筋トレが骨密度を増やしたり、認知症の予防に効果があったりすることもわかってきています。

では、どうやって筋力をつけ、維持していくべきか。

健康維持のための運動としてよく挙げられるのが、ウォーキングや軽めのジョギングですが、実はそれらの有酸素運動では、筋肉を維持するほどの刺激にはならず、筋肉の萎縮を止めることは難しいものです。

やはり習慣的に筋トレを行う必要があります。

筋肉というのは、速筋と遅筋という2種類の繊維から構成されています。

速筋は、力のいる動作や瞬発性を要する機敏な動きなどに優れ、遅筋は何時間も少しずつ力を出し続けるような持久力を持っています。

筋肉のうち、遅筋は生涯にわたりそれほど変化しないのですが、速筋は加齢とともに減少してきます。

年をとっても1時間くらい歩き続けることはできても、機敏な動きやパワーがなくなってしまうのは、速筋が衰えてしまうせいです。歩き方や動作などもそのせいでぎくしゃくし、いわゆる「年寄りじみた」ものになってしまいます。

速筋を維持するには、最大レベルの40%以上の力を出す必要があり、それが行われないほど萎縮していきます。

したがって、筋トレで常に刺激を与えていかなければなりません。

速筋のうち、加齢とともにもっとも減る筋肉の部位は、腹筋と、大腿の前側の筋肉です。

すなわち、これらを鍛えておくことで筋力を効果的に保つことができるといえます。その他の全身の筋力まで鍛えていけば、さらに長生きできる可能性が高まるはずです。

誰もがいずれ高齢者となり、体は衰えていきます。

そのときにすぐ寝たきりにならないためにも、今のうちから筋トレを習慣化しておくことをおすすめします。

【まとめ】筋力があるほど長生きできる。筋トレは、将来寝たきりにならないための投資!

データはウソをつきません!『長生きの統計学』記事リストはこちら!

060-syoei-nagaikinotoukei.jpg確実なデータを基に、「食事」「生活習慣」「運動」「メンタル」の4分野から29の健康情報を紹介。情報の基となる大学や機関名も記載されています

 

川田浩志(かわた・ひろし)

1965年、神奈川県生まれ。東海大学医学部内科学系血液腫瘍内科教授、医学博士。米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、2015年4月より現職。最先端の血液内科診療に従事しながら、アンチエイジング医学の普及にも注力する。

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『長生きの統計学』

(川田浩志/文響社)

「それ、本当!?」というような科学的根拠のないさまざまな健康情報を耳にする昨今。そんな時代に信頼すべきは、エビデンスのある「データ」です。本書で示されているのは、ハーバード大学やウィーン医科大学といった世界の名だたる大学や、各国の国家機関などの統計データをまとめた「事実」のみ。健康のための統計本です。

※この記事は『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)からの抜粋です。

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