米疫学専門誌が掲載した「定年後に長生きする方法」とは?

「がん予防にいい食材は?」「食べてすぐ寝ると太る?」テレビやインターネットにあふれかえる情報、一体どれを信じればいいのかわからない・・・。そこで、ハーバード大学や米国国家機関などの統計データを基に、本当に効く健康法をまとめた『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)から、正しい健康管理術を連載形式でお届け。クイズ形式なので、ちょっとした話のネタにも使えます。

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定年後は家でのんびりする? それとも働く?


米国の疫学専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」に掲載された研究によると、定年後のライフスタイル、以下のうちどれが健康で長生きできる?

A.年金をもらって家でのんびり余生を過ごす
B.「生涯現役」元気なうちは仕事を続ける


答え:B 元気なうちは働いたほうが、寿命が延びる

仕事を早めにリタイアして、残りの人生を自分の好きなことをしながらゆったり過ごすというのは、誰しも一度はあこがれることではないでしょうか。

私も仕事に追われているときなどは「明日にでも引退して、暖かい南の島にでも行って毎日のんびり過ごせたらどんなにいいだろう」などと夢想してしまいます。

しかしそのような夢を実現すると、結果的に寿命が短くなるかもしれないとしたら、どうでしょう。

一般的には、早期退職してゆったり余生を送ったほうが寿命が延びると考えられがちですが、研究により示された真実は、その真逆にありました。

米国の疫学専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」によると、ギリシャで行われた研究で、仕事をせずに余生を暮らすよりも、より長く仕事をつづけたほうが長生きできるという調査結果が出ています。

研究は、1万6827人のギリシャ人男女を対象に行われました。1994年から1999年の時点で、退職しているか仕事をしているかを尋ねた上、その後平均7・7年間の追跡調査を実施し、生死や死因を確認したといいます。

すると、調査開始の段階ですでに退職していたリタイア組は、仕事を続けていた現役組と比べ、死亡リスクが51%も高くなりました。死因別では、とくに心血管系疾患による死亡リスクが大きくなっていました。また、リタイアが5年延びれば、死亡リスクが10%減ることもわかっています。

アメリカの石油会社大手であるシェルの社員を調査した別の論文でも、同様の結果が得られています。

既に退職している元従業員3500人以上を対象に調査を行ったところ、55歳で早期退職した集団は、65歳で定年退職した集団よりも死亡率が1・37倍高くなるという結果が得られました。

ただしこれらの研究は、早期退職が直接的な原因となって健康が悪化したというところまでは明らかにしてはいません。リタイア組の中には、健康状態が悪化して早期退職を余儀なくされた人々もおり、研究では調査開始時点で明らかに大病を患っていた人を除外して分析してはいますが、それでもやはり元から健康状態がよくなかった人も統計に含まれている可能性が排除できないからです。

とはいえ、仕事を長く続けるほど長生きできるという傾向があることは明白ですから、それだけでも十分注目に値します。

ちなみに日本でも、仕事と長寿の関連性をうかがわせるデータがあります。

先に取り上げた「都道府県別の平均寿命」に関して、1位となった長野県では、高齢者の就業率も全国トップであるということです。2010年10月の国勢調査によれば、長野県における65歳以上の高齢者の就業率は26・7%で、全国平均の20・4%を大きく上回り、日本一となっています。

いったいなぜ、働き続けたほうが長生きできるのか。その理由として考えられるのは、脳の認知機能や身体への影響です。

記憶力や注意力、言語機能、状況判断能力などに代表される認知機能が衰えると、いわゆる「ボケた」状態になり、寝たきりにもなりやすいためその後の生存期間が短くなる傾向があります。

認知機能というのは、社会とのつながりを保っているほうが衰えづらいことがわかっていますから、ボケ予防のためにもできるだけ仕事を長く続けたほうがいいといえます。元気なうちは、ストレスがかかりすぎない程度に働いたり、ボランティア業務に参加したりすることで、認知機能が保たれるのです。

また、リタイアしたのちには、あまり動かずに一日中家の中にいて、テレビの前で過ごすような人が多くなります。

運動不足は心臓病や糖尿病などさまざまな生活習慣病の引き金となりますが、働いていればそのぶん体を動かす機会も得やすく、それが身体面にもプラスに作用して死亡リスクを下げると考えられます。

以上のようなことを踏まえると、たとえ第二の人生に入ってもなんらかの仕事とうまく付き合って適度に働き続けていくことがボケ予防になり、体もまた健康に保ち続けられる「長生きの秘訣」といえそうです。

【まとめ】「生涯現役」の気持ちで、適度に働き続けるほうが長生きできる!

データはウソをつきません!『長生きの統計学』記事リストはこちら!

060-syoei-nagaikinotoukei.jpg確実なデータを基に、「食事」「生活習慣」「運動」「メンタル」の4分野から29の健康情報を紹介。情報の基となる大学や機関名も記載されています

 

川田浩志(かわた・ひろし)

1965年、神奈川県生まれ。東海大学医学部内科学系血液腫瘍内科教授、医学博士。米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、2015年4月より現職。最先端の血液内科診療に従事しながら、アンチエイジング医学の普及にも注力する。

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『長生きの統計学』

(川田浩志/文響社)

「それ、本当!?」というような科学的根拠のないさまざまな健康情報を耳にする昨今。そんな時代に信頼すべきは、エビデンスのある「データ」です。本書で示されているのは、ハーバード大学やウィーン医科大学といった世界の名だたる大学や、各国の国家機関などの統計データをまとめた「事実」のみ。健康のための統計本です。

※この記事は『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)からの抜粋です。

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