40代以上の3人に1人が経験するとされる「尿もれ」。デリケートな問題なので、誰にも相談できない人も少なくないようです。そこで、排尿トラブル治療の第一人者・山西友典医師が監修した『尿トレ:誰にも言えない尿のトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)から、同書をまとめた取材班が知った「尿トラブルの仕組み」と解消法となるトレーニング「尿トレ」のヒントを連載形式でお届けします。
挫折しない骨盤底筋訓練を!
骨盤底筋に力を入れたり、抜いたりする骨盤底筋訓練は、リラックスをして体のよけいな力を抜き、呼吸を止めたり、お腹に力を入れたりせずに行うのが効果的、とのこと。
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慣れればいつでも、どこでも、人知れず行える訓練。とはいえ日頃、あまり筋トレなどしていない者には、リラックスをして目に見えない局所だけにしっかり力を入れるというのは、案外、難しいです。
それに動きが地味~。ちゃんとできているか曖昧なので、黙々と一人でやり続けられる気がしません。成果が出る前に、挫折してしまいそう......。
そこで、理学療法士の児島満理奈さんに相談しました。児島さんは訪問リハのかたわら、一般社団法人グッドネイバーズカンパニーのメンバーとして楽しくヘルスケアに取り組める「くちビルディング選手権」(食べる機能低下や社会的フレイル〈虚弱〉を防ぐスポーツイベント)などを開発、全国に広げる活動をしています。
お口(入り口)のプレイフルケア®(*7)のスペシャリストなら、尿道など出口の楽しいケアも教えてもらえるのではないか、というひらめき!
それを受けて、「骨盤底筋訓練は訪問リハでもご紹介することが多い訓練です。確かに地味な体操だけに、やる気を持続するのは困難かもしれませんが、少し工夫して続けると、効果が実感できて、やる気が増す人も多いですよ!」
として、少しでも楽しみが増すように、段階的な尿トレ骨盤底筋訓練を紹介してくれました。
骨盤底筋群は体インナーユニット幹の一部です。ご紹介するSTEP1&2、そして「しっぽフリフリ体操」は、骨盤底筋群を鍛えるとともに、骨盤底筋群と連なる体幹全体を鍛えるもので、中高年を悩ませる姿勢悪化、ハミ肉予防・改善にもつながります。姿勢が崩れると腹部に脂肪がたまりやすい!
腹部の脂肪が増えると、その重みで骨盤底筋が伸びてしまい、内臓を支える力が弱くなって、膀胱が下がり、尿道が締まらなくなるため、尿もれが起きやすくなります。
体幹全体を動かして、姿勢を整え、脂肪も燃やしましょう。
*7:プレイフルケア®とは、理学療法士の児島さんが仲間とともに運営している一般社団法人グッドネイバーズカンパニーが提唱・実践する新しいヘルスケアの視点です。児島さんらは、生活者が主体的に、楽しく健康づくりする活動をプロデュース・支援しています。
深い呼吸をマスターして、芯を鍛える
紹介されたSTEP1&2は、呼吸と姿勢を整えて、リラックスすることから始めます。
児島さん曰く、「骨盤底筋群を含む体幹のトレーニングは、本当に地味~なんですが、やはり基礎のSTEP1・2はとても大事。
ここでとくに意識してもらいたいのは『がんばらない、力まない』ことです。体幹を"動かす"と意識しすぎると、息を止め、力んでしまい、体がこわばってしまう可能性もあります。そこで、STEP1では"力の入れ方のコツ"をつかむことを目標にしましょう。この感覚さえつかめてしまえば、座っていても、立っているときも、応用が可能になります。
深い呼吸によって体の外側の筋肉がゆるみ、リラックスしながら、目的の筋肉を鍛えられます!」とのこと。
この体幹とは内臓を支えている深層筋。インナーマッスルと呼ぶとイメージしやすいでしょうか。この4つの筋は、姿勢保持を担う機能的なユニットです。体の深部の筋肉のイメージはもちづらいものかもしれませんが、このユニットの構造をイメージしながら動かすほうが、より力の入れ方が理解しやすいとのことなので、図を見て、筋肉の位置や配置を確認し、自分の体の中にある体幹ユニットを感じてみてください!
【STEP1】
仰向けに寝て、行います。よりリラックスするために、気持ちがほぐれるようなクラシックやヒーリングミュージックをかけて、そのリズムと合わせて行うのもおすすめです。深い呼吸をしているうちにリラックス感が増し、力が抜け、体幹だけに力を入れやすくなります。
(1)仰向けに寝て、膝を立てます。立てた足は、肩幅程度に広げます。ゆっくり呼吸しながら、脱力。
(2)口を閉じて、一度鼻から息を吐きます。鼻から息を吸い、腹式呼吸を(横隔膜が下がり、お腹がふくらむ)。
●ポイント
「息を吸う」ではなく、軽く息を吐いてから腹式呼吸をはじめましょう。胸がふくらむ、胸式呼吸にならないように注意を!
(3)口を軽くすぼめて、細く、長く息を吐きながら、後半、腹横筋を引き締め、骨盤底筋群をぐーっと引き上げるイメージで力を入れます。
●ポイント
腹横筋を引き締めるときはわずかにへそを凹ませます。骨盤底筋群を引き上げるとき、肛門はゆるめたまま、おしっこをがまんするように力を入れましょう。
(4)もう一度、鼻から息を吸って腹式呼吸。このとき、3で入れたお腹まわりの力を一気に抜かず、徐々にゆるめるイメージで抜いていきます。3→4を繰り返しましょう。起床時や就寝前に、5~10分を目安に、自分の筋力に合った時間や回数で行います。リラックスして深い呼吸ができ、体幹が動いているのを実感できるようになったら、次のステップへ!
●ポイント
心地よく続けられる程度で良いということですが、自分の筋力がわからず、心配な人は、専門家(医師や看護師、理学療法士)に相談を。
【STEP2】
イスに腰かけて行います。重力に逆らって姿勢を保つため、体幹への運動負荷は高くなります。タオルを利用することで、正しい姿勢で座りやすく、自分がラクにとれる良い姿勢を把握しやすい。覚えて、普段も折にふれ、良い姿勢を意識すると、見た目の若々しさが増す効果も。
(1)イスは、座ったとき膝がなるべく直角になり、足の裏が地面にしっかり着くものを用意。タオルをくるくる細長い棒状に巻き、座面に置きます。置いたタオルの上に、坐骨を乗せるイメージで座り、上体を正しましょう。上体を前後に少し動かしてみて、ラクに座れ、安定する位置を探します。手は力を抜き、太ももの上に置いておきます。
●ポイント
体は無理に反らさず、頭頂から天に垂直にひっぱられているイメージで姿勢を正します。
(2)STEP1と同様に、口を閉じて、一度鼻から息を吐きます。鼻から息を吸い、腹式呼吸を(横隔膜が下がり、お腹がふくらむ)。
●ポイント
ポイントもSTEP1と同じ。力まないで、体幹で姿勢を保ちます。
(3)口を軽くすぼめて、細く、長く息を吐きながら、後半、腹横筋を引き締め、骨盤底筋群をぐーっと引き上げるイメージで力を入れます。
●ポイント
腹横筋を引き締めるときはわずかにへそを凹ませます。骨盤底筋群を引き上げるとき、肛門はゆるめたまま、おしっこをがまんするように力を入れましょう。
(4)もう一度、鼻から息を吸って腹式呼吸。このとき、3で入れたお腹まわりの力を一気に抜かず、徐々にゆるめるイメージで抜いていきます。3→4を繰り返しましょう。5~10分を目安に、自分の筋力に合った時間や回数で行います。
力の入れ方のコツがつかめれば、テレビを見ながら、読書をしながら、通勤時の電車の中でも"ながら尿トレ"できます。
※力の入れ方のコツがわからない方は、STEP1に戻って基礎を確認しましょう。
見かけより難しい分、効果アリのしっぽフリフリ体操
STEP1&2のおかげで骨盤底筋訓練が日常生活の一部になり、ひと休みするときなどに体幹を鍛えることを意識、姿勢を正します。
改めて客観視すると、姿勢が崩れている姿は実年齢よりかなり老けて見えやすいし、お腹に脂肪がたまりやすいというのもよろしくない。とはいえ、やはりこの運動の地味さは否めません。気分転換も兼ねて、もうちょっと楽しく骨盤底筋群を含む体幹を鍛える方法はないでしょうか?そんな無茶振りで生まれたのがこちらの体操です。
児島さん曰く、体幹だけでなく、体の外側の筋肉も使う運動になるけれど、動きが入る分、楽しくやれるのでは!? とのこと。そして確かに、ちょっとおバカっぽいフリフリが楽しくて、どうせならブンブンしたくて、無心に、これまでになくギュッと骨盤底筋群を締めてハッスル。
応用編として、1本のタオルの端と端をパートナーとそれぞれ挟み、お尻綱引きするのも楽しい尿トレになる、とのこと!
【しっぽフリフリ体操】
(1)タオル(手ぬぐい)の端を肛門のなるべく下側(膣側)で挟みます。
(2)お尻を左右に回転させ、タオルをフリフリします(しっぽを振るイメージ)。タオルを落とさないように、好きなリズムでフリフリ!
(3)しっぽフリフリができてきたら、次はテールウォーク。タオルを落とさないように2メーターほど前進、そーっとUターンして、戻ります。
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