現代人は、人生の半分の時間を「座っている」ことをご存知でしょうか?そして、この座る時間が「肩こり」や「腰痛」など体の不調につながっているとされています。そこで、約15万人の施術経験を持つカイロプラクティック健康科学士・木津直昭さんの著書『肩こり・腰痛が消えて仕事がはかどる 究極の座り方』(文響社)から、ダメな座り方が体に与える影響と負担を軽減させる座り方を連載形式でお届けします。
座敷とソファーは、悪い座り姿勢の温床
座敷や応接間のソファーといった、くつろげる場での座り方にも注意が必要です。実際、座敷で宴会をしたあとや、柔らかいソファーに座ったあとなどに腰を痛めたという話を患者さんからよく聞きます。なぜかというと、座敷やソファーは究極の座り方をとりにくい環境だからです。その意味で、座り姿勢による障害の温床といってもいいと思います。
そこで、ここでは、座敷とソファーでの座り姿勢について、注意点を挙げてみましょう。まず、座敷(床)での座り姿勢について。床に座るときの姿勢は、以下の四通りが多いと考えられます。
1.横座り
これは、女性に多い座り姿勢です。骨盤のゆがみが生じて、どちらか一方向に足を流すクセがつきます。
2.ぺちゃんこ座り
これも子供や女性に多い座り姿勢で、柔軟性のある幼少時代に多く見かけます。また、成人になっても、幼少時代のクセでこのぺちゃんこ座りを好む人が少なくありません。柔軟性はあるが筋力が弱いという場合には、股関節のゆがみや筋バランスの崩れから、股関節やひざの障害になりやすい姿勢です。
3.体育座り
これも柔軟性のある女性に多い座り姿勢です。この姿勢はお腹に力を入れて座っていれば、悪くはありません。しかし大概の場合、ねこ背になり背中を丸めてしまっています。特に柔軟性のある子ども時代には背中を丸めがちで、それが習慣になりやすいのです。
4.あぐら座り
これは男性に多い座り姿勢です。このあぐらも、背筋を起こして座ることができれば悪くはありません。しかし、お腹の力が抜けた場合は、背中が丸くなってしまいます。あぐらで長時間座っていたあとに腰が伸びなくなるとか、ぎっくり腰を起こすといったことはよくある話です(前かがみの座り姿勢がいかに椎間板に大きな負担をかけるか、思い出してください)。
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これらの床座り姿勢ですが、三十分程度の短時間なら問題はありません。しかし、時間が長くなればなるほど、障害を生みやすくなっていくのです。
そこで、基本的には長時間続けないこと、どうしても座る時間が長くなるようなら座り姿勢を変える、あるいは、できるだけ背筋を起こせる姿勢を選択することが障害の予防につながります。
背筋を起こすには、二つ折りにした程度の高さの座布団を、お尻の下にしいて座るのがおすすめの方法です。
次に、ソファーでの座り姿勢について。こちらはなかなかやっかいです。実は、柔らかいソファーに座る際には、究極の座り方はできない、と考えたほうがいいのです。
というのも、「究極の座り方」をするためには骨盤が立った状態にならないといけないのですが、ソファーに身体が沈んでしまうと骨盤を立たせにくくなるからです。その体勢がとれないからです。
そのため、ソファーで少しでも良い姿勢で座ろうと思えば、端にごく浅く座るしかありません。それでも骨盤を立たすのは至難の技です。取引先の応接間で、ソファーに良い姿勢で座るのに苦労した......といった経験がある人もいるでしょう。
では、ソファーに座った状態での良い姿勢というのはあるのでしょうか。これについては、発想を根本的に変えるしかありません。座ることはあきらめて寝てしまうのです。
固いソファーであれば、腰にクッションなどを当てて深く座り、背もたれに寄りかかればいいのですが、自宅で柔らかいソファーに座るときにはダラーンと力を抜いて、寝ている状態の延長と考えてほしいのです。このときに身体のラインをできるだけ寝姿勢に近づければ腰の負担は減ります。
下の写真は、腰の下にクッションを置き、できるだけ寝姿勢に近い状態にして首は起こさずに本を読んでいるので、首や腰への負担は軽減できます。
ただし、この状態で映画を観ようと思ったり、iPad を使ってフェイスブックを長時間閲覧......などと考えると、身体は悲鳴を上げるはずです。
また、テレビを観るときには、下の写真のようにクッションを腰に当ててできるだけ深く座り、身体を起こした状態で腕組みするか別のクッションを抱えると、お腹に力が入りやすくなり、腰と首の負担が軽減できます。ただしこの体勢は、一時間に一回は立って姿勢を変えたほうが得策です。
通常のソファーだけでなく、リクライニングソファーに座る場合も同様に考えます。座るのではなく、寝るのです。寝ながらテレビを観るときには、リクライニングの角度をあげて座った状態にすれば負担は軽減できるでしょう。横に倒した状態で首だけ起こして長時間の映画鑑賞などは避けましょう。
なお、座らずに寝るわけですから、そのまま眠ってしまうことは当然多くなります。そこで注意してほしいのが、ベッドやソファーに寝そべり、正面のテレビを観る、「寝ながら高まくら姿勢」です。これは、ホテルのベッドなどに良く置かれているフワフワの高い枕を二つ重ね、そこに首から頭を載せて正面のテレビを観るときのような姿勢のことです。
このまま眠ってしまって、首を痛めて来院された患者さんは数えきれません。それもひどい寝違え状態になって、首をまったく動かせないばかりか、唾も飲み込むのにも勇気がいるぐらいのひどい症状が珍しくないのです。
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