仕事に家事にと頑張って、倒れるように眠る毎日。朝起きると疲れは取れていないし、集中力もすぐ切れてしまう...。それ、全て「眠り方」に問題があるかもしれません。そこで、メンタルヘルスと睡眠の専門家・和田隆さんの著書『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(方丈社)から、心身ともに健康を保つための「ストレス解消睡眠法」について連載形式でお届けします。
午後の睡魔を撃退するパワーナップ―サーカセミディアン・リズム対策
サーカセミディアン・リズムは半概日性リズムとも言われ、半日に1回のリズムで眠気の波がきます。眠気の波は午後2~4時と、午前2~4時の2回現れますが、なぜこの時間帯に眠気が現れるのかは解明されていません。
午前2~4時の眠気に気をつけるのは、タクシーやバスのドライバー、工場などで働く夜勤労働者です。眠気によって事故やミスが起きやすくなるので、注意が必要です。
日中働いている人は、午後2~4時の時間帯に生じる眠気に対処が必要です。特に睡眠時間が短い人、睡眠の質が悪い人のほうが眠気を感じやすいと言えます。
この時間帯の眠気は我満できるレベルなので、仕事に集中している、忙(せわ)しなく動いている、人と話をしている時などは眠気を感じません。
しかし、昼食を食べすぎるとインスリンの分泌によって覚醒物質であるオレキシンの分泌が低下し、強い眠気が出やすくなります。十分な睡眠と昼食を食べすぎないことで眠気に困らなくなります。
その他の対策としては、眠くなりそうな前に15~20分くらいの短い仮眠(昼寝)をとることをおすすめします。
これはパワーナップと呼ばれていますが、眠くなる前に睡眠物質を減らし、午後の眠気を戦略的に防ぐ方法です。
自己覚醒でスッキリ起床―コルチゾール(覚醒ホルモン)
毎日決まった時間になると、ぱっと目が覚める人がいます。
このように、目覚まし時計の力を借りて起きるのではなく、自ら目覚めることを自己覚醒と言います。
いつも決まった時間に自己覚醒する人は、一定の時刻になると、コルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは、血圧や体温を上昇させ、血糖値を上げて胃酸を分泌するなど、目覚めの準備をしてくれます。
目覚まし時計での起床は、深い眠りの最中に起こされるリスクがあり、その時に起こされると気分が悪く、脳に負荷をかけます。寒い朝に自動車にエンジンをかけ、アイドリングなしで急にアクセルを踏み込むような感じです。
自然に目が覚めれば、浅い眠りから目覚めることができます。目覚まし時計ではなく、コルチゾールを目覚ましにすれば、スッキリ起床ができて、日中の気分や体調もよくなるはずです。
自己覚醒の科学的なメカニズムは、詳しく解明されてはいませんが、毎日規則正しい生活をして、決まった時刻に起きるようにすると、体の中にそのリズムが刻まれるので、目覚まし時計なしでも同じ時刻に起きられるようになるでしょう。
眠りのチャンスを逃さない―ウルトラディアン・リズム対策
体内時計の3つ目として挙げたウルトラディアン・リズムは、約1時間半という短い周期のリズムです。
サーカディアン・リズムやサーカセミディアン・リズムに比べると反応が弱いため、脳の覚醒度が高い午前中や睡眠の状態がいい人は眠気を感じることはないでしょう。
眠気で困るのは車の運転中です。
このウルトラディアン・リズムを知っている人は、無理に眠気を我慢しないで車を止めて休みます。仮眠できなくても、数10分もすれば眠気は弱まってきます。
しかし、1時間半という短いサイクルなので、すぐに次の眠気の波がきます。そこで、眠気が起きる30分前にコーヒーなどでカフェインを摂取しておけば、眠気が起きる前にカフェインが脳に到達して睡眠物質の作用を抑制し、眠気が起きにくくなります。このように1時間半のサイクルを知っていれば眠気の予防も対処も可能なのです。
就寝前も、このウルトラディアン・リズムを意識してください。例えば、就寝時間を決めている人でも、いつもの時間に眠気が起きない日があります。
そんな日は、次の眠気が起きるタイミングまでリラックスを維持して、無理に寝ようとしないほうがいいのです。逆に、いつも就寝する時間の30分前に眠気が起きた場合は、そのまま寝てしまうのです。
いつもの就寝時間に固執しないで、前後30分の間で眠気がきたタイミングで寝るようにしてください。
体内時計の仕組みを理解し、眠気のチャンスを逃さないことが、入眠や睡眠の質をプラスにするのです。
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