加齢に伴い、「鼻水が出やすくなった」「風邪薬や花粉症の薬を試しても、一向に症状が良くならない」と感じている方は多いかもしれません。なぜ加齢とともに鼻水が出やすくなり、またどのような特徴やしくみがあるのでしょうか? 今回は日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽頭科部長・松根彰志先生に「老人性鼻漏」の基礎知識について教えていただきました。
60歳代以降に生じる慢性的な鼻水は、ほとんどが「老人性鼻漏」によるものです。加齢に伴い鼻の粘膜の機能が低下したことによって発症します。
くしゃみや喉の痛み、目や喉のかゆみなど、風邪や花粉症で見られるような症状はなく、水のようなサラサラした鼻水が一年中続くことが特徴です。
老人性鼻漏の特徴的な症状
・水のようなサラサラした鼻水
・特に食事中に出る
・一年中続く
・くしゃみや喉の痛み、発熱、目や喉のかゆみなどはない
鼻には、どのようなはたらきがあるのでしょうか。
「においをかぐ」、「呼吸をする」役割以外に、チリやホコリなどの異物が体内に入るのを防いだり、吸い込んだ空気を加湿・加温する、吐き出す空気の温度を下げて水分を再吸収するなど、湿度や温度を調整したりする機能があります。いわば、空気清浄機とエアコンです。
うまく機能するためには「鼻粘膜のはたらき」が重要です。しかし、鼻の粘膜は、加齢に伴い、次第に萎縮していきます。本来、空気を鼻から出すときは、温度を下げて空気中の水分を鼻の粘膜に吸着させ、水分が体から逃げないようにします。高齢になると鼻粘膜の水分の吸着力が低下するため、本来吸着されるべき水分が鼻孔の周りに水滴としてたまり、鼻水となって流れ出るとされています。ラーメンを食べたときに鼻水が出るのと基本的には同じ現象です。
●鼻粘膜のはたらきと鼻水が出るしくみ
①粘液
吸い込んだ空気を加湿したり、空気中の細かなごみ、ホコリ、細菌、花粉などの異物の侵入を防いだりする。
②線毛(せんもう)
粘膜の表面にびっしり生えるごく細く短い毛。異物がくっつくと動き、粘液と異物を一緒に鼻腔の奥に運ぶ。
③鼻腺(びせん)
たえず微量の粘液を分泌する。一日に鼻腺から分泌される粘液の量は、約1ℓ。無意識のうちに飲み込んで胃液で消化しているか、痰となって喉から出てくる。
鼻に異物が入ると異物を排出しようとして大量に粘液が作られ鼻水が出る
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加齢とともに、鼻粘膜が萎縮して、機能が低下する
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本来再吸収されるべき水分が粘膜にたまって、鼻水となる
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【これが長引く鼻水の原因!】
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構成・取材・文/古谷玲子(デコ)