一気に「要介護状態」になることも!?「熟年期障害の放置」が危険な理由

加齢による「体のだるさ」や「やる気の低下」は、病院に行っても「老化」の影響と診断されることが少なくないそうです。しかしこの「老化」、実はホルモンとミネラルの不足による「熟年期障害」という病気の可能性があります。そこで、専門医が最新研究を基に解説した話題書『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)から、今すぐ知っておきたい「熟年期障害の症状と原因」を連載形式でお届けします。

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熟年期障害を見過ごすと、わずか数か月で要介護状態になることもある

熟年期障害が何より恐ろしいのは、症状が「加齢のせい」と思われて放置されたり、「老人性うつや認知症のせい」などと診断され、適切でない治療が施されたりする点にあります。

真の原因である、テストステロン不足や亜鉛不足が改善されないまま時間が過ぎ、気づいたときには、心身の健康状態が取り返しがつかないほど悪化してしまっている。

本当にうつ病や認知症などになってしまい、介護を受けなければならなくなる。熟年期障害を放置すると、そのような結果を招きかねないのです。それまで健康に暮らしていた人が、熟年期障害を見過ごしたために、わずか数か月で要介護状態になってしまうこともしばしばあります。

社会や他人との接触の減少が、熟年期障害をさらに悪化させる

では、熟年期障害を見過ごすと、どのようなことが起こるのか、もう少し具体的にお伝えしましょう。

下の図表5をご覧ください。

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まず、テストステロンが不足すると、意欲が減退したり、筋力が衰えたりするため、「なんとなく、やる気が出ない」「体がだるい」といった症状があらわれます。

また、亜鉛が不足すると、新陳代謝が妨げられ、免疫力も低下するため、肌が荒れ、髪が抜け、見た目が老け込んだり、風か邪ぜ をはじめとした病気にかかりやすくなったりします。

そこで起こるのが「社会や他人との接触の減少」です。体を動かすのがおっくうになったり、鏡を見るのが嫌になり、身なりにかまわなくなったりすると、人は外出すること、他人に会うことを避けるようになるからです。

しかし、社会との接触の減少は、体内のテストステロンや亜鉛の量をますます低下させます。テストステロンの分泌量は、心身の活動が停滞し、「自分が周りの人たちに必要とされている」といった実感が得られなくなると、どんどん減っていくからです。

一方、社会や他人との接触が減り、一人で食事をする機会が増えると、食事を楽しむことができなくなったり、栄養が偏りがちになったりするため、亜鉛をはじめ、体に必要な栄養素の摂取量も減ってしまいます。

こうして、体の中で負のスパイラルが起き、症状はますます悪化して、「フレイル」の状態になります。

熟年期障害がもたらす「フレイル」

フレイルとは、「虚弱」「老衰」といった意味を表す、英語の「frailty」を元にした言葉で、「健常から要介護の状態へ移行する中間の段階」のことを指します。

具体的には「急激な体重減少」「疲れやすい」「歩行速度や筋力、握力の低下」「意欲や気力の低下」「記憶力の低下」などが見られ、一度フレイルの状態になると、家に閉じこもりがちになり、ますます心身の機能が衰え、生活の質も低下します。

その結果、病気やケガをしやすくなったり、重症化しやすくなったりするため、寝たきりや死亡に至ることも多く、こうしたフレイルの状態から要介護の状態に進んでしまう人は少なくありません。

一般的に、フレイルに陥ったり、フレイルを悪化させたりする原因としては、加齢による筋力量の減少や低栄養、慢性疾患による身体機能の衰え、認知機能障害、老人性うつなどが挙げられますが、私は、テストステロン不足や亜鉛不足が原因でフレイルになる人は、かなり多いのではないかと考えています。

というより、フレイルの症状はまさに、熟年期障害の症状そのものであるともいえるでしょう。

しかし、テストステロン不足や亜鉛不足、そして「熟年期障害」という概念は、医学界においてもあまり浸透していません。

日本では今後、フレイルが急増し、要介護者がさらに増えることが懸念されています。そこで、厚生労働省は、日本老年医学会の提唱を受け、2020年春発表予定の「日本人の食事摂取基準」の中にフレイルという概念を盛り込むなど、対策に乗り出していますが、現時点では、

熟年期障害→フレイル→老人性うつ、認知症、脳梗塞などの症状

という進行については指摘されていません。

フレイルを予防し、健康寿命を延ばすためには、肉や魚、卵などを積極的にとること、高齢になっても筋肉トレーニングを行い、筋力を維持すること、積極的に外出し社会参加することなどが不可欠ですが、テストステロン不足や亜鉛不足を予防もしくは治療することも、非常に重要なのです。

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037-shoei.jpg最新の研究、データに基づき、5章にわたって「熟年期障害」の正体を解説。自分で予防ができるセルフケア法も

 

平澤精一(ひらさわ・せいいち)

医師。新宿区医師会会長。日本医科大学卒業。日本医科大学大学院医学研究科にて、医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院などを経て、1992年マイシティクリニックを開業。健康寿命に深くかかわる「テストステロン」の研究者として、高齢者の健康を守る取り組みを数多く実践する。

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『熟年期障害』

(平澤精一/アスコム)

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※この記事は『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)からの抜粋です。
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