北海道・函館周辺の限られた海域でのみ生育するガゴメ昆布。元来、やっかい者とされてきたガゴメ昆布ですが、近年はその健康成分の豊富さや強力なねばり、そしておいしさで人気を集めています。ガゴメ博士と親しまれる、北海道大学 大学院水産科学研究院・水産学部 教授の安井 肇先生に、ガゴメ昆布の知られざる魅力を伺いました。
体の中から整える"食べる昆布"ガゴメ昆布に注目
函館周辺の限られた海域で主に生育するガゴメ昆布をご存じですか? 昆布というと、だしをとるものというのが常識ですが、ガゴメ昆布はとろみ成分が豊富なため、だしには適さず、とろろ昆布や松前漬けの材料などに利用されてきました。
「ガゴメ昆布の発見は明治時代後期ですが、長い間、海のやっかい者扱いをされてきました。実はガゴメ昆布の生育地は、上品なだしがとれることで人気の高い真昆布の分布域内。そのため、真昆布に混じって穫れることから、雑草のように扱われていたのです。ところが、ガゴメ昆布は他の昆布に比べてねばりがとても強く、そのネバネバの中には、フコイダンやアルギン酸、ラミナランといった健康成分が豊富に含まれていることが分かり、一気に注目されるようになりました」と、ガゴメ博士と親しまれる安井 肇先生。
フコイダンは、水溶性の食物繊維の一つで、体の炎症を抑え、全身の免疫力を高める働きがあります。また、アルギン酸には、血圧やコレステロール値を下げる効果が。ラミナランには、高血圧の抑制や体内で血栓ができるのを予防する作用もあります。
「毎日少しずつ食べることで、高血圧や糖尿病、動脈硬化などの予防に貢献します。昆布に含まれるヨウ素の摂り過ぎが気になる人は、食べる前に10分ほど水にさらしておけば安心です」(安井先生)。"食べる昆布"として注目のガゴメ昆布、その魅力を知り、味わってみましょう。
ガゴメ昆布のスゴイ健康成分
●フコイダン
褐藻類(かっそうるい)のねばりに含まれる水溶性粘性多糖類で、食物繊維の一種。高血圧の改善や免疫を活性化させる働き、肌の保護や炎症を低減させる働きが認められています。ガゴメ昆布のフコイダン含有量は真昆布の約2 倍。
●アルギン酸
水溶性粘性多糖類の仲間で、天然の食物繊維と呼ばれます。フコイダンと同じく、ねばり成分に含まれます。コレステロール値を下げる、高血圧の抑制、動脈硬化の予防、腸内環境を整えるといった作用があります。
●ラミナラン
β(ベーター)グルカンと呼ばれる水溶性粘性多糖類の一つで、こちらもねばり成分に含まれます。免疫細胞の活性化をサポートし、高血圧の抑制や抗血栓作用(体内で血栓ができるのを防ぐ作用)などが期待できます。
取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/富田桃子