家族から「テレビの音量が大きい」「聞こえてる?」なんていわれた経験はないでしょうか? ひょっとすると難聴かもしれません。そんなときにおすすめしたいのが、「補聴器」のお試しですが、実はこの補聴器、日本は欧米諸国と比べ装用率が低いのです。そこで、まだ身近とは言えない「補聴器」について、東京都健康長寿医療センター ・耳鼻咽喉科医長・高橋正時先生に、そのメリットや選び方、使い方、また難聴のセルフチェック方法などをお聞きしました。
日本補聴器工業界が2018年12月に発表したデータによると、欧米諸国での「補聴器」の装用率は30~50%。対する日本はわずか約14%と、半分以下という数値になりました。ちなみに自己申告による難聴者率(難聴またはおそらく難聴だと思っている人の割合)については、欧米と日本で大差はありません。
「年だから耳が遠くなるのは仕方ない」と諦めるのは早計です。
「加齢による難聴の場合、左右の耳が両方とも聞こえにくくなります。どちらか一方だけが聞こえにくい、耳鳴りがするといった場合や、50~60代で難聴になってきたという場合は、別の病気が隠れているかもしれません。また、耳あかを取ったら聞こえが良くなるという人もいます。まずは耳鼻科を受診してください」(高橋先生)。
耳鼻科で加齢性難聴と診断され、生活の中で困っていることがあれば、補聴器のお試しをおすすめします。「補聴器を使って聞こえを良くすると、生活の質が改善します。ですが、聞こえない状態に慣れた人が補聴器を使うと、よく聞こえることに慣れるまで時間がかかって負担を感じることも。まずは、補聴器外来(※)など専門医のいる耳鼻科を受診した上で、補聴器業者の認定補聴器技能者に選び方のアドバイスやフィッティング(調整)をしてもらい、自分に合うものを見つけることが大切です」(高橋先生)。
補聴器は専門店以外でも購入できますが、商品だけを見て購入すると、耳に合わず、使わなくなってしまうことも。
「原因が分からないまま補聴器を購入するのは絶対に避けてください。補聴器を使うのに最も大切なのは本人の意欲です。家族と同じ音量でテレビや映画を見たり、音楽を聴いたり、聞こえることで生活に潤いが生まれることを周囲の人々が教えて、応援してあげましょう」(高橋先生)。聞こえが良くなると、意思疎通が図りやすくなり、社会ともつながりやすくなります。難聴で困っていることがあれば一度、耳鼻科で相談してみましょう。
※補聴器外来は「補聴器相談医」や「補聴器適合判定医」といった専門医が在籍。さらに言語聴覚士や、補聴器の調整、アフターケアを行う認定補聴器技能者がいることもあります
●難聴セルフチェック
難聴になると単に音が聞こえなくなるだけでなく、音は聞こえていても鮮明に聞き分ける
ことが難しくなります。下のような経験がある人は、難聴かもしれません。
□ 家族から、テレビの音が大きいと言われる
□ 後ろから声をかけられると分からないことがある
□ 会話をしているとき、「え?」と聞き返すことが多い
□「キーン」という高い音の耳鳴りを感じることが多い
□ 周りの人から「聞こえてる?」と聞かれることが増えた
●補聴器の種類と特長
ポケット型補聴器(デジタル)
ポケットやかばんに入れて使うタイプ。スイッチやボリュームが大きく操作が簡単。4万2,000円~。
耳かけ型補聴器(デジタル)耳の後ろにかけるタイプで、種類や機能が豊富。色のバリエーションも充実。7万2,000円~。
耳穴型オーダーメイド補聴器(デジタル)
耳の穴に入るタイプで、1人1人の耳の形に合わせて作ります。11万8,000円~。
価格は、いずれも1台(片耳分)当たりの料金。補聴器は非課税です。
画像提供/リオン株式会社リオネット補聴器
取材・文=笑(寳田真由美)