季節の変わり目はぎっくり腰にご注意!痛みが長引くケースは骨折の場合も?/高谷典秀先生「なんでも健康相談」

「病院に行くべきかどうか...」悩むレベルの"困った症状"、いろいろありますよね。
今回寄せられたのは、ぎっくり腰が自然に治るのか心配という60代女性のお悩み。医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生がお答えします。

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ぎっくり腰は自然に治るのですか?

62歳の女性です。ぎっくり腰について教えてください。

先日、台所で家事をしている最中、重たい物など何も持っていないのに、振り返ろうとした瞬間、腰の左側に激痛が走り、その場に倒れこんでしまいました。

その後3日ほど寝込みましたが、少しずつ這うようにして動き、今はゆっくりと歩けるくらいに回復しました。ですが、まだ痛みがあり、腰を曲げることはできません。

ぎっくり腰は、このまま自然に治るのでしょうか。それとも、腰骨を痛めてしまったのでしょうか。そのうちヘルニアにならないか、心配です。

 

痛みが長く続く時は骨折がないか検査を

今回はぎっくり腰についての質問です。

いただいたお手紙に書かれているような、振り返る動作をしたときに腰が痛くなったということを考えると、あなたが思われている通り、ぎっくり腰、医学的にいうと急性腰痛症の可能性が高いです。

ぎっくり腰が起きるメカニズムは、はっきりと解明されたわけではありませんが、腰骨周辺の筋肉や関節の組織を痛めてしまうことで、体を動かしたときに強い痛みが出て、立つこともままならないような状況になるものです。

腰骨自体を痛めたのではと心配されているようですが、腰骨を痛めるということは、すなわち骨折を意味します。たとえば転んだ拍子に腰骨が圧迫され、潰れてしまうというような場合です。そういった転倒などの明確な原因がある場合の腰痛では、圧迫骨折がないかをきちんと調べる必要があります。

注意しなければならないのは、高齢の女性に多い骨粗鬆症の方の場合です。骨粗鬆症の場合には、強い衝撃を受けなくても骨折をしてしまう場合もありますので、痛みが長く続く場合には一度腰骨の写真を撮り、骨折がないかどうか検査をした方が良いでしょう。

お手紙にあります腰椎ヘルニアというのも、確かに腰痛を引き起こす病気ですが、ぎっくり腰とヘルニアは分けて考えなければならない病気です。

腰椎ヘルニアとは、腰の骨と骨の間にある椎間板というものが飛び出してしまい、神経を圧迫することによって痛みが出るものです。重要なことは、足の神経に障りますので、足がしびれるとか、足が痛いとか、重度の場合には足の筋力が落ちるとか、そういう神経症状があるかどうかです。もし、そういった足の症状が有る場合には、単なるぎっくり腰とは考えずに整形外科を受診してください。

もうひとつ、まれに内臓の病気で腰が痛むということもあります。様々な病気が原因となりますが、怖いものでは解離性大動脈瘤があります。これは動脈が裂けたり、破裂したりするもので、命に関わることもあります。また、結石症や膵臓の病気などでも腰痛を引き起こすことがあります。これらの病気とぎっくり腰との違いは、腰骨を動かさなくても痛みが出るかどうかです。もし動作と関係なく痛みがある場合には、こういった内臓の病気も想定することが必要になります。

このように様々な病気が腰痛の原因となりますが、ぎっくり腰という診断の場合には、通常安静にしていれば数週間で治るのが一般的です。とくに腰痛というものは精神的な部分が関係することもあり、大きな病気ではないかとか、治らないのではないかと心配しすぎると、なぜか長引いてしまうこともあるので、あまり心配しすぎないようにしてください。(老友新聞社)

 

※そのほかの「高谷典秀先生「なんでも健康相談」」はこちら。

 

 

<教えてくれた人>
高谷典秀(たかや・のりひで)先生

医療法人社団同友会 理事長。順天堂大学循環器内科非常勤講師。日本人間ドック健診協会 理事。学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授。著書に『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』(株式会社法研)など。

この記事は『日本老友新聞』に掲載の情報です。
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