椎間板の老化は20歳から始まる⁉ 椎間板の断裂で発症する「頚椎椎間板ヘルニア」/首の痛み

首は、約5㎏という人間の頭を支える関節の中でも重要な部位。そんな重い頭を支える首には、大きな負担がかかり、筋肉の疲労やストレスなどによって痛みが生じやすくなります。また、関節からの痛み、骨と骨の間にあるクッションの役割である椎間板からくる痛みのほか、内臓などの深刻な病気が隠れている場合もあるので、手足にしびれがある、眠れないほどの激痛がある、痛みが長引く、高熱を伴うといったときは、要注意です。

さまざまな首の痛みの症状やメカニズム、原因と治療、首の痛みに効果的な運動の方法などを、自治医科大学整形外科教授の竹下克志先生にお聞きしました。

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「頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア」はこうして起こる!

首の痛みに手足のしびれが伴う場合は、何らかの病気が疑われます。代表的なのが「頚椎症」と「頚椎椎間板ヘルニア」です。頸椎椎間板ヘルニアは手の痛みやしびれといった頚椎症と似たような神経根の症状が現れますが、頚椎症が背骨を構成している椎骨が変形して神経根を圧迫するのに対して、頚椎椎間板ヘルニアは椎間板が変形したり中身が飛び出したりして神経根を圧迫します。

椎間板は、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にある軟骨で、重い頭を支えながら、前後左右に動かす、回す、クッションのように衝撃を和らげるといった役割があります。外側にある「線維輪(せんいりん)」と中央にあるゼリー状の「髄核(ずいかく)」の2層構造になっていますが、その椎間板の中にある髄核が飛び出して、神経根や脊髄を圧迫します。

同じ姿勢を長時間続けたり、加齢による椎間板が老化したりすることが原因で、比較的若い30歳~50歳に多くみられる病気です。

「椎間板は体の中でも早く老化が始まり、20歳を過ぎたころから老化しはじめるところなんです。髄核が押しつぶされたり、線維輪に亀裂が入ったりして痛みを生じます。はじめのうちは首の後ろや首の付け根から肩にかけて痛みを感じますが、進行すると手指の先までしびれや痛みが出てきます」(竹下先生)

軽度のうちは症状が現れず、首の痛みから手のしびれになって初めて異常に気づきます。手のしびれに続き、脚のしびれや歩行障害など脚にも症状が現れたり、手の動きがぎこちなくなる巧緻(こうち)運動障害(箸がうまく使えない、字が書けない、ボタンのかけ外しができないなど細かな作業ができない状態)が出てきたりすると、いよいよ脊髄にも障害が現れてきたことになります。かなり重症になると、頻尿・尿漏れといった排泄異常に至ります。

「また、手のしびれから気づくことが多い病気として、『頚椎後縦(こうじゅう)靭帯骨化症』もあります。背骨を支える靭帯(すじ)が骨のように硬く厚くなって(骨化)起こる病気で、中年以降に発症します」(竹下先生)

背骨には多くの靭帯が走っていますが、神経のすぐ近くにある2つの靭帯のうち、脊髄の前を走る靭帯を「後縦靭帯(こうじゅうじんたい)」、斜め後ろを左右に走る靭帯を「黄色靭帯(おうしょくじんたい)」とよんでいます。その後縦靭帯が骨化して、しばしば神経に影響して痛みやしびれ、手足に麻痺を起こす病気です。

骨化が起こりやすい遺伝的な体質や、糖尿病との関連性が考えられていますが、原因はまだよくわかっていません。首から腰に至るあちこちに骨化が起こることもあり、現時点では進行を止める薬がなく、何度も手術が必要になる場合もあるので、国の難病に指定されています。重症の脊髄障害の場合には治療費の公的補助を受けられます。

「また、ここ4~5年、整形外科の分野で注目されているのは、『びまん性特発性骨増殖症(DISH)』です。もともとあった病気ですが、言葉が統一されました。脊椎(せきつい)が加齢とともに関節が硬くなる『強直(きょうちょく)』が多発して、全身の関節が硬くなる病気で、脊髄が固まり動きがなくなることで、ちょっとした転倒だけで脊椎が骨折することが知られています。高齢男性に頻発します」(竹下先生)

いったん脊椎に骨折を来すと麻痺が出たり、骨折が徐々にずれたりすることから、治療が難しくなります。原因はわかっておらず、治療方法もありません。

 

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取材・文/古谷玲子(デコ)

竹下克志(たけした・かつし)先生

医師。自治医科大学整形外科教授。1987年東京大学医学部卒業、東京大学整形外科医局長、同大学医学部整形外科准教授などを経て、現職。脊椎(せきつい)外科(とくに側弯症)、痛み、バイオメカ、アウトカムを専門とする。著書に『そうだったのか!腰痛診療: エキスパートの診かた・考えかた・治しかた』(共著、南江堂)

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