味覚障害は、味覚の異常の状態をいい、50~70代に多く見られ、高齢化とともに患者数が増えています。直接的に命に関わる病気ではありませんが、食欲低下により栄養不足を招く、塩分や糖分の摂り過ぎで血圧や血糖値を上げる、食べる喜びを失い抑うつ状態に陥るなど、健康維持に支障を来す恐れもあります。
実際の診断および治療方法、予防・改善・再発防止のために日頃から気を付けることとは何でしょうか? 日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野助教の田中真琴先生に伺いました。
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味覚障害は、自然治癒することもありますが、治療開始が早いほど治癒するのも早いので、2週間たっても症状が治まらなければ、耳鼻咽喉科か口腔外科を受診しましょう。
■診断方法は?
問診、視診、血液検査が基本です。問診では服薬歴を聞かれます。電気と濾紙(ろし)を使って味覚の程度が分かる定量検査が可能な施設もあります。
■治療方法は?
治療は原因にもよりますが、亜鉛を十分に摂取すると改善されることが分かっています。基本的には亜鉛製剤を服用しながら、食事療法を行います。また薬剤の副作用が疑われる場合は、主治医と相談して原因となる薬剤の服用中止や減量を行います。口腔内の環境を改善することも大切です。
■予防・改善・再発防止のために日頃から気を付けたいこと
バランスの良い食事を取るのを大前提として、以下を参考に日頃の生活を見直してみましょう。
・亜鉛を多く含む食物を摂る(牡蠣、牛や豚・マグロやアジなど赤身の肉や魚、白米など)
・口内を清潔に保ち、うがいなどで乾燥を防ぐ
・極端な食事制限によるダイエットをしない
・亜鉛の吸収を妨げるといわれる食品添加物をなるべく摂らない
・亜鉛の吸収を助ける良質のたんぱく質、クエン酸やビタミンC (梅干し、酢の物)を摂る
・趣味などで気晴らしをして精神的なストレスをためない
食べる喜びは生きる意欲につながります。味覚障害の治療は効果が出るまでに3カ月から半年かかるので、バランスの良い食事を取りながら、焦らずにじっくり治すことが大切です。
取材・文/古谷玲子(デコ)