セックスレスの原因は男性機能だけじゃない? 男性が見落としがちな性行為よりも大切なこと

男女で違うセックスの認識

次の外来のときには、奥さんも一緒に受診されました。
吉田さんもセックスレスの問題を頑張って奥さんに打ち明けたようです。
そして一度薬を試し、性行為に臨みましたが、うまくいかなかったとのこと...。
奥さんも、いままで頭のなかで避けていた問題に真剣に向き合いたいと思い、一緒に受診されました。
でも、そこで奥さんから伺ったお話は、また違うものでした。
奥さんは旦那さんのことを愛していますが、いつも帰宅が遅く、自分も子育てで疲れ切ってしまい、セックスレスの問題を後回しにしていたそうです。
そして、夫婦2人とも、行為がうまくいかなかったことで非常に落ち込んでいるようでした。

ここで大事なことは、男女のセックスに対する思い込みの違いです。
セックスレスは、夫婦間のコミュニケーション不足がきっかけになることが多いのですが、まず男性側と女性側でセックスに対する価値観が大きく異なることを認識することも重要です。
男性は、性行為そのものだけがセックスだと思っていることが少なくありません。
でも、セックスは、身体を使ったコミュニケーション手段です。
ですから、性行為がうまくいかなかったという失敗体験の積み重ねが、心因性のEDを招き、セックスレスにつながっていきます。

女性は性行為そのものではなく、一緒に食事をしてのデートを大切に考えますし、性行為そのものだけでなく、お互いが触れ合ったり、前戯をたっぷり楽しんだりすることも重視します。
このギャップがあるため、男性側が性行為にあまりにも固執しすぎると、うまくいかなくなってしまうのです。
また、勃起は副交感神経が優位なときに起こるので、男性が焦れば焦るほど、交感神経が優位になり、EDを助長してしまうのです。

私は吉田さんと奥さんに、男女の違いについての話と、セックスには100%の成功はなく、失敗もたくさんあるもので、まったく焦ることなどないという話をしました。
そして、「性行為自体にフォーカスするのではなく、まずはお互いでデートをしてください。そしてそのときはお子さんの話はせず、新婚のときのお互いの思い出やお互いに未来のお話をしてください」とアドバイスし、いい雰囲気になったときには、保険という意味でED治療薬の内服と、ローションなどの潤滑剤の使用もおすすめしました。

リラックスして取り組むことの大切さ

そして次の外来のとき、吉田さんは晴れやかな顔で外来に来ました。
「先生! うまくいきました! 本当にありがとうございます」
吉田さんは、日曜日にお子さんを実家に預けて2人で久しぶりにデートに出かけたそうです。
もちろん性行為はいままでうまくいっていなかったので、焦らず、「ダメでも大丈夫」とリラックスした気持ちを抱きながら、食事の後に久しぶりにラブホテルに向かったところ、非日常のリラックスした状態で、うまく性行為ができたとのことです。

このようなシチュエーションの場合、わたしは長時間作用型のED治療薬である、「シアリス」をおすすめしていました。
この薬は内服して24時間から36時間効果があるので、事前に内服しておけば、焦って飲む必要はなく、リラックスした状態で性行為を迎えることができます。
ED治療薬も功を奏しましたが、吉田さんがうまくいった理由は、お互いの価値観のすり合わせができたことです。

セックスには、個々の思い込みがよくあらわれます。
とくに男性はアダルトビデオの作品のように、「女性を支配するような性行為をしなければいけない」と、誤った先入観を持っていることも少なくありません。
男性側の思い込みを手放し、セックスは失敗してもいいということ、女性は性行為そのものよりコミュニケーションを重視することなどを受け入れて、お互いの性に対する価値観を共有していくことで、セックスレスの問題は解消されていきます。
そのためのツールとして、ED治療薬を使用することは、有効でもあるのです。

 

窪田徹矢
1978年東京都出身。医療法人社団「思いやり」理事長。「くぼたクリニック松戸五香」院長。独協医科大学卒。専門は泌尿器科。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、指導医。年間2万5,000人を診察。近隣の総合病院でロボット手術などを手掛ける。元千葉西総合病院泌尿器科部長。

※本記事は窪田徹矢著の書籍『EDかな?と思ったら読む本――専門医が教える傾向と対策』(自由国民社)から一部抜粋・編集しました。

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