健康寿命のため中高年こそ考えたい「矯正歯科治療」を専門医が解説!/NEWSなキーワード

日本臨床矯正歯科医会は1月、矯正歯科啓発活動の一環として「健康長寿にはかみ合わせや歯並びが大事」と中高年の矯正歯科治療についての講座を開催。東京医科歯科大学の小野卓史教授らが症例をもとに解説しました。今回はそのニュースを受けて、小野教授にお話を伺いました。

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「よく嚙む」ことでの健康効果は?

・歯と口の病気を防ぐ
・脳の働きを促し、認知症を予防
・発音・表情が良くなる
・肥満を防ぐ
・胃腸の働きを良くする
・全身の体力向上
※「8020 ブックレット 歯と口のケアからはじめる健康長寿」より引用(公益財団法人8020推進財団)

「よく嚙める」には、かみ合わせが重要

よく嚙める歯とは、しっかり嚙むことができる安定したかみ合わせであること。
ここでは、代表的な良くないかみ合わせを紹介します。

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

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上の前歯が飛び出ている歯並びで、いわゆる出っ歯のこと。

下顎前突(かがくぜんとつ)

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下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態。受け口とも呼ぶ。

叢生(そうせい)
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歯が重なったりねじれて生えていたり、デコボコな歯並び。

開咬(かいこう)

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奥歯で嚙んだときに前歯がかみ合わず、上下の歯に隙間があく。

過蓋咬合(かがいこうごう)

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かみ合わせが深く、嚙んだときに下の歯がほとんど見えない。

かみ合わせが良くなると

「しっかり嚙めるようになる」

「歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病になりにくい」

「歯が長持ちすることで全身の健康につながる」

「見た目が良くなる」

矯正治療の費用は?

矯正治療は、一部を除き自費診療となります。

治療費の目安としては、60〜120万円(治療を2年半行う場合)が一般的です。


「コロナ禍でのマスク生活を歯並びやかみ合わせを整える好機として、矯正歯科治療を検討する大人が増加しています」と、小野卓史先生。

症例によると、「上下の前歯のすき間が気になる」という60代女性は、歯周病に加え、舌を突き出す習慣が歯間に空間を作る原因となっていました。

歯周病と矯正の治療を行い、歯並び、かみ合わせは改善しましたが、早めに治療を始めていたら、舌を突き出すクセを除去できた可能性が。

また、歯周病による歯肉の退縮を防ぎ、より満足いく結果を得られただろうと言います。

「多くの歯を失い、嚙みにくい」という60代男性は、矯正歯科治療に加え、インプラントや義歯などの治療が必要に。

もっと早く矯正歯科治療を受けていれば、必要以上に歯を失うことなく、できるだけ多くの自分の歯でかみ合わせを改善できたと考えられます。

「年齢とともに歯を失うリスクは高まります。ひどくなるまで放置していると、治療期間が長引いたり、費用がかさむように。また、インプラントや入れ歯などが必要になることも。歯を失う前に矯正歯科に相談してみてください」

口の健康は全身の健康につながります。

まずはかかりつけ歯科で矯正が必要かどうか相談するのもいいでしょう。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 咬合機能矯正学分野 教授
小野卓史(おの・たかし)先生

1987年東京医科歯科大学歯学部卒業。日本矯正歯科学会認定医・指導医、日本顎変形症学会理事など。専門は、咬合機能、歯科矯正学、閉塞性睡眠時無呼吸など。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。

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