眼に起こる脳卒中!? 生活習慣病と深く関連する「網膜静脈閉塞症」

ものがゆがんで見えたり、視野が欠けたり、急激な視力低下や黒い点々が見えるといった症状はありませんか? それは、網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)の可能性があるそうです。表参道内科眼科院長 内科医の土屋徳弘(つちや・のりひろ)先生に生活習慣病と深く関連する「網膜静脈閉塞症」についてお聞きしました。

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「網膜静脈閉塞症」は、網膜の静脈が詰まることによって、眼底出血や浮腫(むくみ)が起こり、視力障害が生じる病気です。

閉塞する場所によって病名が分かれます(下記参照)。


静脈が閉塞するしくみ

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動脈硬化によって静脈の流れがせき止められる。

眼に起こる脳卒中!? 生活習慣病と深く関連する「網膜静脈閉塞症」 2104_P090_02.jpg血管の内側の壁に、血栓ができる。
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[主な症状]
ものがゆがんで見える
急激な視力低下
視野が欠ける
黒い点々が見える

[主な特徴]
痛みや充血はない
突然症状が出る
症状の出方が人により異なる


症状の現れ方はどの静脈が詰まるかで異なります。

特に網膜のほぼ中心にある「黄斑」は視力の最も鋭敏な部分であるため、その部分に出血や浮腫があると、視力が極端に低下します。

痛みや充血はなく、いつの間にか失明に近いほど見えなくなっていることもあります。

両眼で見ていると、良い方の眼でカバーしてしまうので、見え方の変化に気付くことが難しくなるのです。

普段から片眼ずつ見え方のチェックをして、上記の症状に気付いたら、早めに受診しましょう。

静脈が詰まる理由は、静脈と交叉している動脈に動脈硬化が起きているためです。

動脈硬化が起きていると、静脈が圧迫され、血流障害が起き、血栓が生じやすくなります。

病変は眼の網膜に生じるので眼科疾患ですが、根本的な原因は高血圧、動脈硬化、肥満、塩分過多など内科的な疾患です。

実際に、高血圧の治療中に眼の病変が改善したケースが確認されています。

《高血圧治療中に眼の病変が改善!》

OCTで黄斑部の断面を撮影した画像を比較

黄斑浮腫が起きている状態

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▼高血圧治療中に黄斑浮腫が改善

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「仮面高血圧」に注意!血圧のコントロールを

発症したら眼科での治療が必要になります。

視力検査、眼底検査に加えて、網膜断層検査(OCT)で眼底組織の断面を撮影し、網膜のむくみ具合を確認します。

主な治療法は、抗VEGF薬を眼球に注射する薬物療法です。

浮腫を抑える効果が高く、即効性もありますが、高い頻度で再発するので、追加投与が必要です。

保険適用でも1回5万円ほどと高価なので、患者の負担が大きくなります。

予防や再発防止のためには、血圧コントロールを中心にした内科的な全身管理を同時に行う必要があります。

高血圧の専門医を受診し、根本的な治療を目指します。

特に「仮面高血圧(隠れ高血圧)」には要注意です(下記参照)。

正常血圧の人の10~15%に存在します。

また治療中の人も安心できません。

降圧剤を服用中の人の30%に血圧のコントロール不良が見られます。

医師の間でもこれらの認識が低い状況です。

正しい診断や治療のためにも、毎日「家庭血圧」を測ることが重要です。

この病気は脳卒中や心筋梗塞につながる高血圧の存在に気付かせてくれます。

生活習慣を改善し、眼と全身の病気を予防しましょう。

《血圧の正しい測り方》

●毎日同じ時間に測る(1日の中で変動しやすいため)
●座位で1~2分安静後
●1回につき2度測定し、それぞれ記録
●リラックスして測る(食事や入浴の直後は避ける)

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《仮面高血圧の人も高リスク!》

「仮面高血圧」とは、隠れ高血圧のこと。

例えば、昼に病院で測ると正常な値でも、それ以外の時間帯で高くなっている場合など。

1日2回、朝(起床後1時間以内、排尿後、朝食前)と晩(就寝前)に血圧を測る習慣をつけることが大切。

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《予防のために心がけたい生活習慣》

メタボ体型、肥満、濃い味好き(漬物・梅干し・佃煮)、毎日の飲酒、長時間労働、深夜早朝不規則勤務、介護生活などでストレスがたまっている人は、発症しやすい。

まずは生活習慣の改善から!

1.塩分を控えめにする(1日の摂取量を6g以下に)
2体重を減らす(肥満の場合)
3有酸素運動を定期的に行う(ウォーキング、スイミングなど)
4アルコールを摂取する場合はビール大瓶1本または日本酒1合が一日の目安だが禁酒が望ましい(発症後は禁酒)
5禁煙(受動喫煙も含む)
6規則正しい生活をする

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取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>
表参道内科眼科院長 内科医
土屋徳弘(つちや・のりひろ)先生
1986年、日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学医学部眼科兼任講師。「全身から眼を守る、眼から全身を守る」をモットーに眼科と内科の共同で診療を行う。

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この記事は『毎日が発見』2021年4月号に掲載の情報です。

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