健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
機械的な投薬を受ける前に生活習慣の見直しを
糖尿病の薬は現在、1000万人近くの人々が服用していると言われています。
これほど多くの人に処方されている理由に、1999年、日本糖尿病学会が糖尿病の基準値を140㎎/㎗から126㎎/㎗に改定したことが挙げられます。これにより、糖尿病と診断される人が数百万人も増加し、その多くが薬をのみはじめることとなりました。
公務員の40代の男性は、4カ月前の健康診断で血糖値の異常を指摘されて以来、血糖降下剤が処方されるようになりました。しかし困ったことに、この薬をのむとおなかが張って苦しくなってしまうため、ときどき服薬をさぼるようになりました。しかし、EDや網膜症といった高血糖による合併症が恐ろしく、どうしたらいいか困り果て、僕のところに相談に見えました。
この方の空腹時血糖は、136㎎/㎗、140㎎/㎗、158㎎/㎗、124㎎/㎗、160㎎/㎗、110㎎/㎗......といった具合に推移していました。詳しく話を聞いてみると、10カ月前の部署の移動でデスクワークが中心の仕事となり、また、飲み会も多くなって、体重が8㎏ほど増加したそうです。しかし、思い切って薬をやめ、減量を勧めたところ、3カ月で10㎏の減量に成功し、血糖値も100㎎/㎗前後に落ち着きました。
薬を処方されるようになった経緯は、2回検査をして、136㎎/㎗と140㎎/㎗の数値が出た時点で、腎不全や網膜症、EDといった合併症の説明を受け、薬による治療を指導されたのだそうです。
この場合、マニュアル(標準治療)に照らし合わせれば、即座に治療することは間違いではないものの、投薬に緊急を要する血糖値ではありません。むしろ必要なのは生活習慣の改善です。薬を服用すれば、血糖値やHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値は、見かけ上改善しますが、結局は自己治癒力を損ない、最後は薬漬けとなる可能性もあります。
疲れた膵臓を休ませるためにしばらくインスリンを用いるのはありかもしれませんが、内服薬を強く勧める理由はほとんどないと思います。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
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(岡本 裕/KADOKAWA)
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