腸を健康にする「腸寿」が長生きにつながる!医師が教える「発酵食」の魅力

最近、「百歳長寿」が話題になっています。長生きをするなら、できるだけ健康な状態を保ちたいものです。さまざまな秘訣のなかで、毎日、無理なくできることの一つが、発酵食を摂ること。発酵食を見直してみると、おいしくて、種類も豊富、そして腸の調子を整えるカギにもなります。「腸の健康は、元気で長生きにつながります。長寿=腸寿です」と唱える腸の専門医、松生恒夫先生にお話を伺いました。

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腸の健康=腸寿こそが長生き=長寿です

「腸は、毎日の健康に重要な役割を担っています。主な働きは、体に必要な栄養を吸収すること、そして残りカスや有害な成分を体の外に排出することです。さらに病気に対して抵抗する免疫機能もあります。ところが便秘に代表される腸の不調を訴える人は増加しています。2016年の国民生活基礎調査によれば、便秘に悩む人は、女性のおよそ2人に1人、男性のおよそ4人に1人。私自身、日々、診察室で腸の悩みを抱える人と向き合っていると、腸に不調を抱える人は、体のほかの部位や精神面など別の不調も抱えていることが多く、ストレスなく生活を変え、体調を改善していくことが大事だと感じています」

腸は、大きく小腸と大腸に分かれます。

主な小腸の慟きは、食べ物を消化・吸収して、残りカスを大腸に送り、病原菌などの異物を攻撃する(免疫機能)こと。

大腸の働きは残りカスから水分やミネラルを吸収し、その残りカスを便にして排出すること。

腸の状態は、体全体の健康状態や健康であり続ける力を測るバロメーターの一つでもあります。

自分の意思で腸内環境は変えられる!

「腸内環境は食事、腸管機能(運動)、腸内フローラ(腸内細菌のかたまり)によって決定されます。腸内環境が悪化すると、毒素や発がん性物質を作り出してしまうことも。しかし食事は、人が意識して変えることができます。口から食べるものを変えれば、腸管機能や腸内フローラが変化して、腸内環境を改善できるのです。

長寿地域として知られる京都府丹後地域と、山梨県上野原市桐原地区の食事に注目してみると共通点がありました。みそ汁かみそを使った副菜があり、季節の漬物があり、三食ともほぼ麦飯なのです。みそも漬物も発酵食品で、そこに含まれる乳酸菌は、腸のビフィズス菌を増やしているだろうと考えられています。また麦は食物繊維が豊富です。食物繊維は善玉菌のエサとなりますし、腸を動かすカギになることも分かってきました」

そもそも発酵とは?

健康効果

発酵食品の中で、特に麹を使ったものは、消化や吸収をスムーズにしてくれます。

腸内環境が整い、免疫力がアップします。

目に見えない微生物からの贈り物

発酵とは、微生物の働きによって食物が分解され、人間に有益な成分に変化すること。

うま味の訳は「酵素」にあり!

発酵食品に含まる酵素が、食材のデンプンをブドウ糖に変え、たんぱく質をアミノ酸に分解し、うま味として感じます。

「発酵」を理解する3つのキーワード

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1. ラブレ菌

すぐき漬け

漬物には乳酸菌がたっぷり入っていて、腸内の善玉菌が増えるのを助けます。

なかでも京都の男性が長寿であることから注目、発見に至った乳酸菌「ラブレ菌」は、京都の漬物、すぐき漬けから発見されました。

現在、ラブレ菌は、免疫力の向上、便通や過敏性腸症候群の改善、更年期症状の緩和に役立つと期待されています。

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2. 植物性乳酸菌

野菜など植物の発酵によってできるのが、植物性乳酸菌です。

乳酸菌といえば、ヨーグルトが思い浮かびますが、納豆や漬物、甘酒などにも入っています。

動物性の乳酸菌は胃などの消化酵素で死んでしまう率が高いのですが、植物性の乳酸菌は生き延びる確率が高く、腸内の善玉菌の数を増やすのにより役立ちます。

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3. 食物繊維

●水溶性食物繊維

多く含むもの...大麦、海藻、なめこ、モロヘイヤ、オクラ、長いも、里いも、アボカド、キウイフルーツ

食物繊維のなかでも、水に溶けやすく、ねっとり状態になるのが「水溶性食物繊維」です。

ねっとりが便を柔らかくして、腸内で勣きやすくします。

さらに水溶性食物繊維は、腸内で発酵して、酪酸などの短鎖脂肪酸を生み出し、腸の動きを刺激します。

なめこやオクラ、海藻など、粘り気のあるものに多く含まれます。

腸を健康にする「腸寿」が長生きにつながる!医師が教える「発酵食」の魅力 2003p015_04.jpg●不溶性食物繊維

多く含むもの...ほうれん草(葉野菜)、さつまいも、じゃがいも、きのこ類、豆類、玄米

水に溶けにくく、水分を含むと大きく膨らみ、便のかさを増やします。

腸の中で有害物質を取り込み、便として体の外ヘ排出する慟きも。

ただし摂り過ぎると便が硬くなって便秘になりやすくなります。

水溶性食物繊維もいっしょに摂ることを意識しましょう。

目安は、不溶性食物繊維2に対して、水溶性食物繊維1です。

取材・文/三村路子 イラスト/コウゼンアヤコ

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松生恒夫(まついけ・つねお)先生

1955年東京生まれ。松生クリニック院長。医学博士。腸疾患治療の第一人者。『「腸寿」で老いを防ぐ一寒暖差を乗りきる新養生法』(上写真・平凡社新書)など著書多数。

61KlpIgjVEL012.jpg「腸寿」で老いを防ぐ一寒暖差を乗りきる新養生法

(松生恒夫/平凡社新書)

今回の特集で「腸寿」についてご紹介くださった松生先生の著作。

不調を訴える人、特に腸のトラブルを抱える人が急増するなか、長寿の要である「腸」を健康に保つためにはどうすればよいかを教えてくれる一冊です。

この記事は『毎日が発見』2020年3月号に掲載の情報です。

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