現在、医療従事者等への接種が行われている新型コロナワクチン。これから高齢者、そして基礎疾患をお持ちの方というように、順次接種が進められていく見込みです。安心してワクチンを接種するためには、情報を正しく理解する必要があります。米国立研究機関博士研究員の峰 宗太郎(みね・そうたろう)先生に聞いたワクチンの基本から情報の選び方まで、前中後編でお届けします。
【疑問】暖かくなったら感染は減る? ワクチンで十分?
「新型コロナウイルスの感染ルートは、飛沫感染と接触感染。これまでの状況からみても、人と人とが関わり合うことで感染が広がることが分っています。ですから、暖かくなったからといって感染が減るという期待はできません。また、たとえワクチンを打ったからといって、完全に安心というわけにはいきません。ですから、手洗いやマスク、3密を避けるといった予防は引き続き必要です。予防をしっかりしつつ、ワクチン接種の機会が来たら納得して受けるようにしてください」
【疑問】ワクチンがたった1年で開発できたのはなぜですか?
「新しいワクチンや治療薬の開発には、通常、10年以上の歳月がかかります。実は、今回新しく作られたmRNAワクチンは、SARS(サーズ)やMERS(マーズ)などの過去の感染拡大によって、ベースとなる研究がかなり進んでいました。さらに、対象となる新型コロナウイルス自体の研究も非常に早く進んだおかげで、新薬候補の探索と発見・基礎研究の部分が短期間でできたのです。また、安全性や有効性、どれくらいの量を打ったら効果的なのかといったことを確認する臨床試験はとても大切ですが、前倒しにできるものを前倒しにし、並行できるものを並行して行うことで、どの工程も犠牲にすることなく、全体スケジュールが短縮されました。こういったことができたのは、さまざまな国の資金が豊富に投入されたことも影響しています。政府などが莫大な費用を動かすことで、臨床試験と並行して審査や生産設備の整備といった工程に進むことができたのです。開発の工程は公開され、論文も発表されています。透明性も厳密性も高いものだといえますね」
【ワクチンの開発スケジュール】
新型コロナがよく分かる峰先生おすすめ情報をチェック
ワクチン接種を間近にして、あふれる情報に振り回されず、自分の頭で考えることはとても大切です。新型コロナウイルスやワクチンについて、正しい情報を得るためにおすすめの本やサイトをご紹介します。
こびナビ
新型コロナウイルス感染症の研究や患者の診療に取り組む医師たちが、ワクチンに関する正確な情報を提供するインターネットサイト。ワクチンを接種した人の体験記も。峰先生も運営に参加しています。
※掲載内容は、3月10日時点の情報に基づいています。
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取材・文/寳田真由美 イラスト/上路ナオ子