いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。
ガンが治る人 医師と前向きに話せる信頼関係を築く/ガンが治らない人 医師と信頼関係を築けない
ガンの治療を受けるとき、主治医との信頼関係は最も大切なことの1つです。
なぜなら、ガンの治療には患者さんと主治医の信頼関係にもとづく共同作業が欠かせないからです。
ガンを克服した患者さんの多くは主治医のことを信頼しており、よい人間関係を保っています。
では、主治医と信頼関係を築くには、どうしたらいいのでしょうか?まずは、医師と話をして、できるだけコミュニケーションをとることです。
どんな人間関係でもそうですが、信頼関係を築くためには何度も顔を合わせて対話を重ねることが重要です。
医師との面談では、患者さんは何を話したらいいかわからず、医師からの一方通行の説明で終わることが多いものです。
しかし、これではお互いの信頼関係を築くことはできません。
まず患者さん自身の考えや希望、そして不安に思っていることなどを率直に伝え、対話を重ねていくことが大切です。
忙しそうだから、と気兼ねする必要はありません。
わからないことは積極的に質問しましょう。
ただし、うまく会話をするためには、ある程度のガンの情報を患者さん自身で集め、少なくとも標準治療については理解しておく必要があります。
緊張して質問する内容を忘れてしまうという患者さんは、前もって質問する項目をメモ用紙に書いて整理しておくことをおすすめします。
また、外来であっても、1回で治療方針を決めてしまわずに、少なくとも2回以上足を運ぶことをおすすめします。
説明を受けたその日に即答せず、いったん持ち帰って冷静に考えましょう。
ガンの告知をされると、すぐに治療しないとどんどん進行していくと考える人が多いようです。
しかし、実際には数日~数週間でガンが進行して手遅れになる、ということはありません。
緊急の処置が必要なときをのぞき、少なくとも1週間は落ち着いて考える余裕はあります。
時間をおいて考えると、新たな疑問や質問もでてくるので、主治医とあらためて話し合いましょう。
何度か顔を合わせるうちに、お互いに性格や考え方が次第にわかってきて、少しずつ信頼関係が築けるはずです。
医師も信頼してくれる患者さんの気持ちに応えたい
また、主治医との良好な信頼関係を築くためには、患者さんが主治医に対して好意を示すことが大切です。
『奇跡的治癒とはなにか』(日本教文社)の著者である、外科医のバーニー・シーゲル博士は、病気から奇跡的に生還するためには、患者は主治医に対して愛情をもつことが大事で、〝医師を抱きしめなさい〟と忠告しています。
これは少し大げさですが、患者さんも医師に対してできるかぎり好意を示し、「先生を信頼しています」と伝えることは大事です。
医師も人間です。
特別扱いするつもりはありませんが、自分に対して攻撃的な態度をとる患者さんや不信感を示す患者さんよりも、信頼を寄せる患者さんのほうが、一緒にがんばっていこうと思うものです。
よく「医者には変わり者が多い」と言われるように、なかにはぶっきらぼうでコミュニケーションがとりにくい医師がいるのも確かです。
しかし、主治医との信頼関係を築くための第一歩は、患者さん自身が主治医のいいところを見つけ、まずは人間として好きになる努力をすることです。
あなたが好きになれば、きっと主治医もあなたのことを好きになります。
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