肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。
イラスト/二階堂ちはる
「落ち込み・ゆううつ」に効く入浴法
お風呂は、精神を健康にする!
●入浴によるストレスの緩和効果は、医学的に認められている。
●「イライラ・あせり」パターンと、「やる気がでない」パターンでは、それぞれ違う入浴法を試す。
入浴は、精神面の疲労やストレスにも効果があります。
「入浴による不安の軽減効果」などは様々な医学的研究や心理学の実験などで明らかになっていることです。
フランスでは温泉療養が不安の軽減作用があることが明らかになっています。
また、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、唾液に含まれているストレスホルモン(コルチゾール)が減っている、という報告もあります。
過度に精神的ストレスがかかっている場合、「やたらとイライラする・あせる」というパターンと「何もやる気がでない」というパターンがあります。
「イライラ・あせり」のパターンは、交感神経が優位になっている状態です。
40℃のお湯に、すこし長めの20分程度しっかり浸かって、副交感神経を優位にしましょう。
もちろん、汗をかいたら途中で湯船から出ていただいて結構です。
「やる気がでない」パターンでは、「イライラ」のときとは逆に、交感神経を刺激してあげる必要があります。
42℃のお湯に、5分間入ることで、交感神経のスイッチを入れることができます。
「毎日お風呂に入る人は幸福度が高くなる」という調査結果がありますが、毎日お風呂に入ってストレスをやわらげてあげることは、精神的な健康を保つためにも有益です。
ただし、「面倒でお風呂にも入ることができない」「不安で会社や学校に行けない」「急に悲しくなって涙が出る」など、重度のうつ状態の場合は、専門医に診てもらうことを最優先にしてください。
「ヒートショックプロテイン」の注意点
近年の入浴研究では、「ヒートショックプロテイン」の効用が、話題になることがあります。
入浴の温熱刺激によって体温が上がると「ヒートショックプロテイン」という抗ストレスタンパク質が分泌され、免疫機能を強化したり、細胞の修復を促したりする、というものです。
「強い刺激に反応して、体を守る作用」とも言えるでしょう。
41℃のお湯なら15分、42℃なら10分入ることで、2日後に「ヒートショックプロテイン」と、ウィルス感染を防御する「NK(ナチュラルキラー)細胞」が増加したという研究結果があります。
2日後に何らかの試験や試合などを控えている場合、こうした入浴法で精神的なストレス耐性を高めておけば、当日によいパフォーマンスを発揮できるのでは、という考えもあります。
しかし、私としては、この入浴法は、注意が必要と考えています。
41~42℃で10分~15分の入浴というのは、のぼせや血圧上昇のリスクもあり体への負荷が高いためです。
ヒートショックプロテインの作用は実験などで明らかになっており、多くの研究機関で研究されています。
しかし、長期的に体にどういう影響を及ぼすかは、まだ完全にはわかっていません。
アスリートなどが専門家の指導のもとで試してみるのはいいかもしれませんが、一般の方が不用意に実践すると、体にダメージを与え、かえって不調を起こすこともあり得ます。
※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。
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入浴の効果から方法までが5章にわたって解説され、「正しい入浴」がすぐに実践できます。体の不調別入浴法や温泉や銭湯の効果的な入り方も