肌がガサガサ・白い粉を吹いている人は要注意! ただの肌荒れでなく「皮脂欠乏症」かも

空気が乾燥すると、お肌がカサカサしやすくなりますね。料理や食器洗いで手が荒れる、あるいは、洋服がお肌にこすれてかゆくなることもありがちです。 年を重ねると乾燥肌で困ることが多くなります。冬の乾燥肌対策について、東京慈恵会医科大学附属病院皮膚科診療副部長の石地尚興先生にお聞きしました。

pixta_21300040_S.jpg肌荒れ・湿疹の放置は全身の炎症にもつながる

「ご高齢の方は、皮膚の表面のバリアともいうべき皮脂の分泌量が減り、肌の乾燥によってちょっとした刺激でも炎症を起こし、湿疹が生じやすくなります。これを皮脂欠乏症といいます。その状態を改善するには、皮膚の保湿を正しく行うことが重要になります」と、石地尚興先生は説明します。

皮脂欠乏症は、加齢とともに誰にでも起こり得る症状ですが、皮膚のバリア機能が破綻しているため、かゆい部分をかいてしまうと炎症はどんどん広がっていきます。最初は手や腕だけだったのが全身に及ぶこともあるので注意が必要です。

「皮脂欠乏症を悪化させると、 全身が真っ赤になって皮膚がはがれ落ちる湿疹続発性紅皮症につながります。微熱が生じ、全身の皮膚から水分が蒸発することによる脱水症状、バリア機能 が破綻することによる細菌などの感染症も」と石地先生。

湿疹続発性紅皮症による感染症では、血液に入り込んだ細菌類が全身に回り、体の抵抗力がそれに負けてしまう敗血症となり、命に関わることも。乾燥肌を放置しないことが大切です。

 

ご存じですか? 「皮脂欠乏症」

どんな特徴があるの?

脚(特にすねの外側)や腕、背中、 腰、脇腹などのかゆみ、痛み
▶浅い亀裂、ひび割れがある
▶ガサガサしている
▶白い粉を吹いている

なりやすい人は?
▶せっけんや洗剤をよく使用する人
(美容師、看護師、主婦など)
▶毎年、冬になると体がかゆくなる人
▶乾燥肌だと思うまたは乾燥肌と医師に 言われたことがある人
▶アトピー性皮膚炎など、 もともと皮膚に疾患がある人
▶洋服の摩擦によって、 かゆみがひどくなることがある人
▶高齢者


放置すると
▶重症化して、かゆみや痛みが増す
▶全身の皮膚が真っ赤になり、皮膚がはがれ落ちる(紅皮症)
▶広範囲の湿疹は、敗血症などの感染症につながることも

破綻したバリア機能は 保湿外用剤で守りましょう

皮膚のバリア機能は、(1)皮脂膜(脂の膜)、(2)角質層の細胞と細胞の間にある角層間脂質(脂質の結合物質)、(3)天然保湿因子(角質層にあるアミノ酸など)の三つで成り立っています。皮脂欠乏症は、この三つの働きが弱くなるものです。

「皮膚の水分は、いわば皮膚の表面の脂でふたをされているような状態で保たれています。皮脂欠乏症で三つのバリアが破綻すると、皮膚の水分はどんどん蒸発し、乾燥すると同時に刺激に弱い状態になるのです。少しの刺激でも炎症を起こしてかゆくなり、その炎症が広がりやすいので注意が必要です」と石地先生は警鐘を鳴らします。

バリアがなくて無防備な皮膚は、手洗いのせっけんでも炎症につながります。衣類の化学繊維がこすれるだけでも、赤くかゆみを帯びるようになるのです。そんなお肌を守るには、保湿が欠かせません。皮膚の表面で失われた油分を保湿外用剤で補うことが必要になります。代表的 なのは「ワセリン」「へパリン類似物質(ヘパリノイド)」「疑似セラミド」「尿素」。これらの成分の保湿剤は、薬局、ドラッグストアなどで入手可能なものもあります。

また、オリーブオイルや椿油など、お肌に使用できる油もよいそうです。においや使い心地も好みがあるので、ご自身に合ったものを選ぶようにしましょう。
「尿素は、角質層を溶かして滑らかにする作用があるため、足のかかとなど角質層が硬い部分には向いていますが、角質層が軟かいところは刺激が強過ぎるので避けた方がよいでしょう」

海外ではピーナッツオイルを塗った赤ちゃんが、ピーナッツアレルギーを起こした事例もあるそうです。ピーナッツはアレルゲンになることがあり、全身にたっぷり塗っているとアレルギー症状につながるそうです。全身に塗る保湿外用剤は、アレルギーを起こしにくいものを使うことも大切です。まず手や腕などで使用してみて、かゆみなどが生じないものを選ぶように心がけましょう。

 

皮膚の構造

皮膚は表皮と真皮で成り立ち、真皮には毛細血管や汗を出す汗腺など皮膚の重要な組織が あります。それを守るのが表皮。表皮が破綻すると感染症にもなりやすくなります。

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健康な皮膚と荒れた皮膚 

健康な皮膚は、表皮の表面が皮脂膜で覆われることで外部からの刺激や細菌などをブロックします。皮脂膜が破綻すると、外部の刺激がダイレクトに肌の組織に伝わり、感染症やアレルギー症状につながりやすいのです。

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日常生活の中で起こりやすい肌の水分蒸発

バリア機能が壊れた皮膚からは、どんどん水分が蒸発していきます。それを防ぐには、保湿外用剤に加えて、日常生活の中で、お肌が乾燥しにくい方法を取り入れることが大切です。石地先生にポイントを教えていただきました。コツは、刺激をなるべく与えないことにあるそうです。

「入浴や家事で水を使った後に、皮膚に水分が残った状態はよくありません。水分がついていると保湿されているように見えますが、その水分が蒸発するときに、バリア機能が破綻した皮膚の水分も一緒に蒸発させてしまうのです。つまり、乾燥肌がひどくなるということです。水でぬれた皮膚は、すぐに拭くことが重要です」と石地先生はアドバイスします。

室内環境にも落とし穴があります。密閉されたお部屋での暖房は、暖かくて快適ですが空気は乾燥しがちです。加湿器などで湿度を保つことが必要ですが、コタツを活用している方もいますね。暖房をつけなければ、お部屋の空気は乾燥しにくく、コタツに入れた体はポカポカ。でも、皮脂欠乏症の人にはコタツがよくないそうです。

「コタツの熱で皮膚は急激に乾燥します。温風ヒーターや電気毛布もしかりです。長時間使用していると乾燥した皮膚からどんどん水分が失われることで衣類などの刺激によりかゆみを帯びます。電気毛布では、かゆくて夜中に目が覚めるといったことにも、つながるのです。部屋全体を暖めながら加湿器を使用することが、皮脂欠乏症の方の皮膚を守ることになります」

バリア機能が壊れたお肌は、水分を蒸発しやすく刺激にも弱いため、生活習慣で保湿を考えることが不可欠です。中にはお肌の潤いは、コラーゲンなどを摂れば保たれる」と思う方もいるでしょう。コラーゲンは皮膚に必要なたんぱく質ですが、骨や靭帯など体のさまざまな組織でも欠かせない成分です。コラーゲンを摂ると、体内で吸収分解されてアミノ酸という小さな成分になって、再び組織に必要なコラーゲンに合成されるのですが、必ずしも皮膚のコラー ゲンに用いられるわけではないのです。

「コラーゲンは摂ってもよいのですが、それが皮脂欠乏症の改善につながるとはいえません。 むしろ、皮膚を直接守ることが大切です」と石地先生。

食事は栄養バランスに気を付けて健康に役立て、乾燥したお肌は、保湿を意識した生活習慣の見直しをするのが得策です。

「生活習慣を一つずつ改善することで、肌のバリア機能を守ることにつながります。バリア機能の破綻は、ハウスダストなどによるアトピー性皮膚炎の悪化にもつながるため、ぜひ改善していただきたいと思います」と石地先生は話します。

お肌を守れば、冬場の皮膚のかゆみも避けられますし、湿疹も起こしにくくなります。年末年始は、特に水仕事が多くなる時期ですから、保湿で皮膚のバリア機能を維持しましょう。
 

知っておきたい達人のツボ 1

◎アトピー性皮膚炎と皮脂欠乏症の違い

皮脂欠乏症は、皮膚の表面のバリア機能が壊れたために皮膚が乾燥した状態です。そうなってしまうと外部からの刺激をダイレクトに受けやすいので、湿疹や炎症につながります。一方、アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患と考えられがちですが、皮膚が乾燥しやすいという側面もあるのです。そして、乾燥などによるバリア機能の破綻が皮膚のアレルギー性炎症を引き起こすきっかけになります。皮膚の炎症は、さらに皮膚の乾燥を引き起こします。

 

知っておきたい達人のツボ 2

◎ターンオーバーとは

皮膚の表面の表皮の細胞は何層にも重なっています。この表皮の細胞は、約1カ月ではがれ落ちて新しい表皮の細胞と入れ替わります。これをターンオーバーといいます。

乾燥肌を防ぐお風呂の入り方と日常生活で気を付けるべきこと

[1] 入浴

3原則
▶ お湯の温度は40度程度
▶ 洗浄は「こすらない」「泡のせ流し」で
▶ タオルは使わず、自分の手で洗う

肌の状態を整える絶好のチャンスだけど、いつもの習慣が逆効果ということも!
熱いお風呂は刺激が強く、上がった後のかゆみにつながります。40度くらいのぬるめのお湯の方がかゆくなりにくいです。お風呂上がりにはすぐに体の水分を拭きとりましょう。また、洗うときにナイロンタオルを使うのは皮膚への刺激が強過ぎるのでやめましょう。皮膚をこすらないように、手のひらでせっけんを泡立て皮膚の上にのせる「泡のせ流し」を。 皮膚が炎症を起こしている部分は、せっけんの使用は控えてお湯で流すだけに。2日に1度にするなど入浴回数を減らすことも有効です

 

◎洗浄液の作り方と洗い方

1 洗面器に少しのお湯と液体せっけんなどの洗浄料を入れる。

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2 指先を利用して、よく泡立て洗面器いっぱいに泡を作る。

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3 泡を手で全身にそっとのせる。汚れは泡の中に浮いてくるのでこすらずにお湯で流す。

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[2] 保湿剤

入浴後3分以内に保湿剤を! その種類をチェックしてから適切に塗布
入浴後にタオルでしっかり皮膚の水分を拭き取ったら、すぐに保湿剤を塗るようにします。 保湿剤は種類がたくさんあるので、ご自身の皮膚に合ったものを選びましょう。

 

[3] 家事

洗濯や食事の支度&片付けは、 なるべく手をいたわるように
洗濯や食器洗いなどで水にぬれた手は、こまめにタオルで水分を拭き取ります。ゴム手袋 は手荒れを起こしてしまう人もいます。手に水分を残さないことを意識してください。

 

[4] 生活環境

部屋の中は乾燥していませんか? 適度な湿度を保つ工夫を
密閉した部屋でエアコンなどを使用すると、空気が乾燥しやすくなるので加湿器の活用を。 部屋全体を暖めつつ、湿度を60%程度に保つのがコツです。空気の乾燥を防ぎましょう。

 

[5] 衣類&食生活

洋服の素材にもご注意! 香辛料や刺激物は摂り過ぎないように
直接肌に触れる下着などは、皮膚への刺激が少ない綿や麻の天然素材がよいでしょう。体 を火照らせる香辛料や刺激物の摂り過ぎも、皮膚の炎症につながるので避けましょう。

 

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

<教えてくれた人>
石地尚興(いしじ・たかおき)先生
東京慈恵会医科大学附属病院皮膚科診療副部長。同大学教授。1984年京都府立医科大学卒。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本性感染症学会認定医。患者に分かりやすいスキンケア指導でも定評がある。

この記事は『毎日が発見』2017年12月号に掲載の情報です。

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