"肺の生活習慣病"といわれるCOPD(シーオーピーディ・慢性閉塞性肺疾患)は長期にわたるたばこの煙などの有害物質の影響で肺や気道、肺胞が炎症を起こし、徐々に肺が壊れていく病気です。COPDとはいったいどういう病気なのでしょうか?そして治療のポイントとは? 日本医科大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞先生にお聞きしました。
"肺の生活習慣病"といわれるCOPDは長期にわたるたばこの煙などの有害物質の影響で肺や気道、肺胞が炎症を起こし、徐々に肺が壊れていく病気です。社会の高齢化とともに急増していますが、認知度が低く、潜在患者数530万人のうち、適切に診断・治療を受けている患者は10%に達していないといわれています。
日本では男性の喫煙者が多いため、男性の患者数は女性の倍以上ですが、女性の方が肺が小さく気管支が狭いため、影響を受けやすく、重症化しやすいとされています。受動喫煙でも発症するので、喫煙歴がなくても安心できません。8週間以上続く咳(せき)や痰(たん)、階段や坂道を上る際の息切れがあれば、COPDを疑います。
喫煙による肺機能への影響
進行すると日常生活に支障を来します。さらに進行すると呼吸不全や心不全を起こすなど命に関わるので、早期発見・治療が重要です。虚血性心疾患、肺がん、肺がん、心血管疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの併存症が多いのもCOPDの特徴です。
また、ぜんそくとCOPDを併せ持つ疾患ACO(エイコ)が加齢とともに増加するとして注目されています。単独の患者に比べて、咳や痰、呼吸困難などの症状が頻発し、重症度が高くなります。
では、正常な呼吸器とCOPDの呼吸器はどのように違うのでしょうか?
■正常な呼吸器
・空気の通り道が十分に確保されていて、正常な呼吸ができる。
・ひとつひとつの肺胞がしっかり機能していて、空気がスムーズに出入りする。
■COPDの呼吸器
・炎症によってむくむ、痰などの分泌物が大量に出るなどにより、空気の通り道が狭くなり、肺に入る空気の量が減る。
・肺胞の肺胞壁が壊れて袋状になり、弾力性が失われて収縮しにくくなるので、肺から十分に空気を吐き出せなくなる。
COPDが疑われる症状とはどういうものがあるのでしょうか?
□40歳以上で、喫煙歴がある、またはいまも喫煙中
□同年齢の人より歩くのが遅れる
□咳、痰が出る
□呼吸をするとゼイゼイ・ヒューヒュー音がする
□気管支ぜんそくと診断され治療しているが、一年中調子が悪い
□坂道や階段の上りで息苦しい
□少しずつ痩せてきた
□風邪をひきやすく、長引く
これらの症状に思い当たったら、まずはかかりつけ医を受診し、必要に応じて呼吸器内科の専門医を紹介してもらいましょう。早期発見・治療で、進行も抑えられます。
COPDは肺の生活習慣病。残念ながら、今のところ根治する方法はありません。進行を食い止めて、症状の改善と「増悪(ぞうあく※)」の予防が治療の2大目標なります。
※増悪:風邪などをきっかけにCOPDの症状が一時的に悪化し、症状が全身に及ぶ状態を指す
COPD(シーオーピーディ)の治療には、まず症状の改善と「増悪」の予防が2大目標
まずCOPDの症状に思い当たったら、まずはかかりつけ医を受診し、必要に応じて呼吸器内科の専門医を紹介してもらいましょう。早期発見・治療で、進行も抑えられます。
診断には、スパイロメーターという機器を使って肺機能を検査する他、血液検査、胸部X線、CT撮影、心電図検査などで、他の病気がないか調べます。
治療の基本はまずは禁煙です。喫煙による肺機能の影響をみると、禁煙などにより肺機能が回復すれば、全力で息を吐き出したときの1秒間に吐いた空気の量である「1秒量」も改善することがわかっています。
薬物療法、運動療法、栄養療法、増悪予防です。重症度によって、それぞれの内容は変わってきます。薬物療法では、主に吸入により気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が使われます。増悪を繰り返す場合はステロイド剤を使用することもあります。薬物の十分な効果を得るために、正しい操作で吸入します。
最も警戒すべき増悪は、酸素不足で命を奪うこともあるので、症状が出たら48時間以内に治療を受けます。増悪の原因の多くが感染症なので、予防のためインフルエンザや肺炎球菌ワクチン接種も有効です。
さらに重症になれば、家庭で持続的に酸素を吸入する在宅酸素療法や、気管支鏡を使って無駄に使われている気管支を塞ぐなどの外科治療もあります。
また、適度な運動とバランスの取れた食事で体力と適切な体重を保つことも大切です。
病気の全貌を正しく知り、早めの治療で自分の身体を守ることが大切です。
取材・文/古谷玲子(デコ)