誤嚥、つまり食べ物などが誤って気管や肺に入ってしまっているにもかかわらず、咳などの症状から「風邪」と診断されて誤嚥に気付かないことがあります。また最初は誤嚥のたびにむ せていたのが、だんだんと鈍感になってむせなくなり、本人も治ったと思っているうちに、実際には気管にどんどん食べ物が入っていることがあります。
もしも「誤嚥かな」と思った場合には、一度、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。耳鼻咽喉科では喉頭内視鏡を用いて診察し、口を開けただけでは見えない喉の奥まで観察します。食後の患者さんの喉を見ると、ごはん粒が気管へ入りかけていることがまれにあります。
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喉の筋力も鍛えることができるのです
飲み込む力の低下は、窒息事故を招くことがあります。東京都では毎年12月に、もちなどを詰まらせて救急搬送される人のうち65歳以上が9割を占めています。万が一、食べ物を喉に詰まらせた場合、食べ物が見えている場合には手で取り出します。または椅子に座らせて上半身を倒した姿勢で吐き出させます。
筋力はいくつになっても鍛えられます。日頃から話す、歌う、体操などで喉の筋力をつけ、いつまでも健康でいたいですね。
1日5分のエクササイズで飲み込む力は鍛えられます
おでこ体操
おでこに手を図のように当てます。 頭はへそをのぞき込むように下を向き、手はおでこを押し戻すように力を入れたとき、喉仏の周囲に力を感じられるのがベスト。喉仏が上がっている状態を5秒間キープ。5~10 回繰り返します。
顎持ち上げ体操
顎の骨に両手の親指を当てます。下を向いて顎を引き、親指は顎を上げるようにして、押し合いっこをします。喉仏の周辺に力が入ればOK。喉仏が上がっている状態で五つ数え、これを5~10回繰り返しましょう。 食事前などに行って習慣に。
もちなどを喉に詰まらせたら...
気管が水平になるように、上半身を前方に倒させ、背中をたたき、咳をさせ、吐き出させます。または横向きに寝かせて背中をたたきます。絶対にしてはいけないのは「上を向かせる」、「水を飲ませる」。取り出せない場合は、すぐに救急車を呼びます。
西山耕一郎(にしやま・こういちろう)先生
医学博士、西山耳鼻咽喉科医院理事長。東海大学客員教授、藤田保健衛生大学客員准教授。1957年生まれ。 北里大学医学部を卒業後、 北里大学病院や国立相模原病院、横浜日赤病院、国立横浜病院などで研鑽を積む。 著書に『肺炎がいやなら、 のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)など。