胸やけ、おなかの張り、胃もたれ、げっぷ...こんな症状がある人は逆流性食道炎かもしれません。実は、年齢に関係なく、若い人にもこの病気が増えているそうです。そこで、逆流性食道炎の手術を500例ほど手掛けた外科医・関洋介先生の著書『胸やけ、ムカムカ、吐き気、胃痛、げっぷ・・・・・・それ全部、逆流性食道炎です。』(アスコム)より、症状のチェックから、治療法まで、知っておきたい「逆流性食道炎」の情報をご紹介します。
Q.ピロリ菌と関係がありますか?
あります。
胃がんのリスクを減らすためにピロリ菌を除菌したら、逆流性食道炎の症状がひどくなったという人がいます。
ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて5倍の胃がん発症リスクがあり、さらに過去にピロリ菌の感染歴がある人だと、それが約10倍になるとわかっています。(厚生労働省研究班 2006年)
そのためピロリ菌の除菌に健康保険が適用されるようになり、今では検査で見つかるとすぐに除菌をすすめられるのが通常です。
ところが、ピロリ菌は胃粘膜を萎縮させ、胃酸分泌を減らすため、除菌することで胃酸分泌が活発になり、逆流性食道炎の症状があらわれる人が出てきました。
特に食道裂孔ヘルニアのある患者さんにおいて、その確率が高くなるようです。
ピロリ菌を除菌すると、逆流性食道炎の症状が出るかもしれないということは、知識として持っておいていただきたいと思います。
Q.人間ドックで逆流性食道炎と言われました。通院しなければダメですか?
必ずしも通院の必要はないかもしれませんが、いちどは診察を受けてください。
胃カメラで食道に炎症があることが確認されると、「逆流性食道炎」と診断されます。
その際に、胸やけなどの症状があるかどうかは問われません。
逆流性食道炎は胃カメラによる観察でのみ診断できる病気だからです。
いざ自分が病気と診断されると、ショックなものです。
できれば「なかったこと」「ささいな問題」にしてしまいたい気持ちはよくわかります。
しかし、病気は病気です。
何も対処をしないのはよくありません。
長いこと放置しているうちに、もっと深刻な病気になってしまう可能性もあるのですから。
多くの人が「病院に行く=通院する。薬と縁が切れなくなる」と思っているようですが、それは違います。
病院に行って診察を受けるのは、自分の体の状態を正確に知るためであり、治療のひとつの方法が通院であり、投薬なのです。
だから病院に行ったら必ず通院を求められるものではなく、薬と縁が切れなくなるわけでもありません。
まずは消化器内科のある病院に行き、「人間ドックで診断された」と伝えましょう。
おそらくもういちど胃カメラを飲むことになりますが、症状に応じた治療の方針が示されるはずです。
Q.逆流性食道炎は、病院に行かなければ治りませんか?
症状から逆流性食道炎が疑われ、胃カメラの検査で診断が確定すると、逆流性食道炎と診断されます。
食道粘膜に炎症が認められれば、この病気といえるのです。
「あるか、ないか」の判定なので、「逆流性食道炎と言われたが、実は違った」ということは原則的にありません。
食道に炎症があるということは、たびたび逆流が起きていて、胃内容物が食道粘膜を侵しているということです。
ただし、だからといってその患者さんが全員胸やけなどの症状で苦しんでいるということではありません。
食道に炎症があっても、自覚症状のない人が一定数います。
症状のない人にとって、病院に通うのは苦痛でしょう。
でも、炎症を放置しておくのはあまりおすすめできません。
炎症が続いた結果、食道粘膜が変化して胃の粘膜と同じような構造になる「バレット食道」という状態に進むことがあります。
そして、バレット食道は食道がんのリスクであることが知られています。
症状がなく、炎症がごく軽い場合は、薬を使わずに生活習慣の改善で治療することがほとんどです。
また、薬も「症状に応じて飲む」といった服用方法があります。
ですから、逆流性食道炎と診断されたら、少なくともいちどは医師とよく話し合ってみてください。
最終的にそのほうがご自分のためになります。
【まとめ読み】『それ全部、逆流性食道炎です。』記事リストはこちら!
逆流性食道炎の症状、自己対処法、診察、治療など全4章にわたって詳しく解説しています。