アラフィフ女性にとって、身近なテーマである「更年期」。でも、更年期に起こる心身の不調の症状や程度、改善法は本当に人それぞれですよね。そこで、薬剤師やジャーナリストの方に、漢方で更年期症状が快方に向かった方のケースをお聞きする「更年期『漢方』相談室」を連載形式でお届け。第23回は、漢方薬・生薬認定薬剤師の清水みゆきさんに「更年期のドライマウス」についてお聞きしました。
こんにちは、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」で薬剤師として働いている、清水みゆきです。
40代になってから、口の中が乾燥したりネバネバしたりする、口臭が気になる、唾液が少なくて食べ物が飲み込みにくいなどのお悩みをお持ちではありませんか?
それはもしかしたら更年期のせいかもしれません。
45~55歳の閉経前後の10年間は更年期と呼ばれており、この時期はホルモンバランスの影響でドライマウス(口腔内乾燥症)になることがあります。
ドライマウスが続くと、口の乾燥だけでなく口臭や痛み、味覚異常、歯周病、虫歯などが生じることもあります。
私が対応したお客様でも、閉経後に口が乾燥するようになり、口の中がネバネバするとお困りの方がいらっしゃいました。
さらに、「固いものが噛みづらくなる、歯が痛い」と、歯の調子も悪くなってお悩みだったそうです。
そんなAさん(54歳)が漢方でドライマウスを改善できた事例を通して、更年期の不調の改善方法をお伝えいたします。
1.更年期のドライマウスの原因とは?
更年期は、女性ホルモンが一番激しく変動する時期です。
40歳後半から50歳代になると、女性のからだは、女性ホルモンのひとつのエストロゲン(卵胞ホルモン)が急激に減少します。
このホルモンバランスの乱れが唾液の量を調節している自律神経を不安定な状態にするため、唾液の調整が乱れて口の乾燥を引き起こしやすくなるのです。
また、エストロゲンには皮膚や粘膜の潤いを保つ働きがあるので、エストロゲンが減少すると口内も乾燥しやすくなります。
漢方医学では、唾液を含む津液(正常な体液成分の総称)が足りなくなり、口腔内が潤い不足になるためドライマウスが生じると考えます。
さらに、更年期のドライマウスでは、津液の不足だけではなく、気(生命エネルギー)や血(血液)の不足や巡りの悪さも原因と考えられています。
気には津液をからだ全体に巡らせるはたらきがあり、血には津液と同じくからだを潤すはたらきがあります。
気血の不足や滞りは津液の巡りの悪化を招くため、更年期には気血の巡りの悪さによってドライマウスが引き起こされるというわけです。
2.口の乾きが歯の痛みの原因に⁉ 54歳女性を悩ますドライマウス
Aさん(54歳女性)のエピソードをご紹介します。
Aさんは、大学1年生の娘さんとご主人(54歳)の3人家族で、事務職としてフルタイム勤務をしています。
海外ドラマにはまったのをきっかけに、週2回、英会話スクールにも通っています。
2年前に閉経を迎えてから、口や唇が乾くようになったそうです。
こまめにリップクリームを塗り、水分補給していましたが、だんだんと悪化。
最近では、口がネバネバする、口の中や歯が痛いといった不快な症状も続くようになってお困りでした。
口の乾燥も不快でしたが、とくに食事の度に歯が痛む症状がつらく、食べるのが苦痛になってしまったそうです。
ですが、子どもの頃から歯医者が苦手で、仕事の忙しさもあり、歯医者に行かずに放置してしまったとのことでした。
「口の乾燥やネバネバも不快ですが、まだ我慢できますし、そのうちよくなるかなと思っていたんです。でも、歯の方は食事の度に気になりますし、痛いとつらいです。念入りに歯磨きをして、水分補給は糖分が入っていない水かお茶しか飲まないなど、できる対策は自分なりにしました。でも、歯磨きの時に歯ぐきから出血したり、歯が痛くて固いものが食べにくくなってきたりと一向に歯の痛みはよくなりません。
先日、家族で焼き肉を食べに行ったのですが、歯が痛くて肉を噛めず、ほとんど食べられませんでした。家族からは『一度、歯医者に行くべきだ』と何度も言われていますが、まだなんとか食べれるし、歯の治療は怖くてなかなか決心がつかなくて・・・。そんな時、テレビの健康番組で40代で歯周病で入れ歯になった経験談を見たんです。『このままだとお母さんも入れ歯になるかもよ。もう50代なんだし!』と娘から言われ、私自身も自分の歯がなくなるかもしれないと怖くなり、不安で眠れなくなってしまいました。
意を決して歯科クリニックを受診したところ、歯の痛みは歯周病によるものだと判明しました。歯科医からは、年齢的に更年期のドライマウスが原因ではないかと言われ、しばらく通院して歯周病ケアをしてもらいました。おかげで歯の不調はよくなりましたが、口の乾燥やネバネバ感は相変わらず続いていました。
ドライマウスが続く限り、また歯周病になってしまうのではと悩み、友人に相談したところ、『私も更年期で体調が悪い時期があったんだけど、漢方薬局で相談して改善したよ』と教えてもらい、私もドライマウスについて漢方薬局に相談しに行きました。
そして処方された漢方薬を試したところ、まず唇の乾きが落ち着いてきました。2か月後には口の乾燥も気にならなくなってきました。しかも、高価なクリームを塗っても効果がなかった手荒れまでよくなってきたので驚きました。まさに、からだの内側から潤っている感じがしました。ドライマウスが落ち着いた後も、しっかり歯磨きを続けて1年に1回は歯のクリーニングにも行くようにしています。いつまでも、歯もからだも元気でいたいと思います」
そうお話してくださったAさんの弾けるような笑顔が印象的でした。
3.更年期のドライマウスは漢方で根本的に改善
女性ホルモンの変化は目に見えないので気がつきにくいですが、40代に入り、以下のような症状が見られる場合は、更年期の影響によるドライマウスかもしれません。
<これって更年期のドライマウス?チェックリスト>
・急に口臭や虫歯が気になるようになった
・目の乾燥(ドライアイ)や肌の乾燥、かゆみも気になる
・暑くもないのに大量の汗をかいたり、のぼせたりする
女性ホルモンのバランスの乱れには医薬品としても認められている漢方薬が効果的です!
「できるだけからだに負担のない薬がいい」「飲み続けても大丈夫な薬が欲しい」
そんな方にもおすすめです。
漢方は根本的な不調の改善を目的とした医学です。これまで実に多くの人々のさまざまな症状を治してきました。
また漢方薬は、自然の草木や鉱物からできた生薬で作られています。
こうした自然のもつ力を上手に使うことは、私たちのからだの摂理に沿った無理のないやさしい作用をもたらします。
とくに漢方薬は、もともとの体質だからとあきらめていたようなことや、検査では異常が見つからないような症状に、その力を発揮してくれます。
漢方医学を日常に取り入れ、不調の改善と健康的な生活を送りませんか?
また、食事の栄養バランスを意識したり、毎日運動を続けたりするのは難しいという場合でも、漢方薬なら自分の体質や症状に合うものを飲むだけなので、気軽に継続できるという点もメリットです。
今回Aさんが服用した漢方は「温経湯(うんけいとう)」でした。
温経湯は、血を補い血流をよくしてからだを温める漢方薬です。
ホルモンバランスを整え、月経の不調や更年期障害、足腰の冷えなどを改善します。
麦門冬(ばくもんどう)や阿膠(あきょう)、人参(にんじん)など粘膜を潤すはたらきのある生薬を含むため、唇の渇きや口腔乾燥の改善も期待できます。
更年期のドライマウスの改善には、他にも以下の漢方が使われることがあります。
<更年期のドライマウスにおすすめの漢方薬>
●口や喉の乾燥とともに、熱っぽさやほてりも感じる方:白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
体内にこもった余分な熱を冷ましながら津液を補うことでドライマウスを改善します。
●胃腸や呼吸器が弱く、喉の乾燥も気になる方:麦門冬湯(ばくもんどうとう)
からだに必要な潤いを補いながら胃腸の状態を整えて津液の生成を促すことでドライマウスを改善します。
ただ、どのような体質がその不調を招いたのかは人によって異なりますので、ご自身の状況に応じた漢方薬を選ぶことが大切です。
症状だけを見て漢方薬を選択すると、合っていない場合には副作用のリスクも高まります。
できるだけ漢方に精通した医師、薬剤師等にご相談の上で、ご購入ください。
自分の症状に効く漢方薬が知りたい。コスパ良く漢方を飲んでみたい。という方には、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」などの、スマホで気軽に頼めるサービスもおすすめです。
4.からだに潤いを補給して、更年期のドライマウスから抜け出そう!
「最近、口が乾燥してネバネバする」
「以前より口臭が気になる」
気になるその不調は、更年期のドライマウス(口腔内乾燥症)が原因かもしれません。
漢方でからだの内側から潤いを補って、更年期も明るい笑顔で過ごしていきましょう!