見逃すと危ない「咳ぜんそく」。約30%が気管支ぜんそくに移行します

ここ数年、「止まらない咳」を訴えて病院を訪れる人が増えています。「1カ月前に風邪をひいて、咳だけが治らずに今も出る」「カラ咳が1年くらい続いている」といった症状です。咳は本来、異物を体内から出すための生理的な反射反応ですが、長引く咳、特に2週間以上続いている咳の場合は、風邪ではなく、さまざまな病気の可能性があるので、注意が必要です。

咳の仕組みや咳が止まらない原因、治療法などを、日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会専門医で、「池袋大谷クリニック」の院長、大谷義夫先生にお聞きしました。

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進行する前に早期の治療で完治させましょう

長引く咳を訴える人に特に多く見られ、近年増加している病気が「咳ぜんそく」です。空気が肺に達するまでの通り道である「気道」の粘膜が炎症を起こして過敏になり、気温差など日常生活のほんの少しの刺激にも反応して咳が出る症状です。

主に以下のような刺激が、咳を誘発します。

■温度の変化による刺激
電車やバスに乗った時、エアコンの効いた部屋に入った時など。車(室)外と車(室)内の温度差が気道に刺激を与えます。

■冷気による刺激
冬に暖かい部屋から外に出て冷気を吸った時など。冷たい空気は気管支を収縮させるので、気道が狭くなって咳が出ます。

■湯気による刺激
お風呂に入っている時、ラーメンを食べている時など。水蒸気がのどの粘膜を刺激します。

■においによる刺激
線香、香水、タバコなど香りやにおいが強いものを吸った時など。「におい物質」と呼ばれる目に見えない微粒子が気道に入って刺激となります。

■空気の出入りによる刺激
会話をしたり、笑ったりする時など。これらの動作で気道への空気の出入りが多くなり、それが刺激になると考えられています。

■自律神経による刺激
夜の寝入り、明け方などに出る咳。自律神経は睡眠に影響を与えると言われていますが、気管支は自律神経の影響で収縮・拡張するため、寝入る時や朝起きる時に咳が出ます。


気道の粘膜の炎症は、ウイルスや細菌に直接感染して起こるのではなく、風邪やインフルエンザといった呼吸器の感染症が"きっかけ"となることがほとんどです。風邪の後に咳が長引く場合は、咳ぜんそくの可能性を疑ってみましょう。また、花粉症、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどのアレルギーを持つ人が発症しやすいことがわかっています。

咳ぜんそくは"気道の敏感症"とも呼ぶことができる病気です。炎症によって気道が少し狭くなっているため、悪化すればするほど、小さな刺激にもさらに反応することになります。そのまま放置すると炎症が悪化し、約30%の人が気管支ぜんそくに移行するので注意しましょう。気管支ぜんそくに進むと、気道に痰が増えて「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)が起こり、完治が難しくなるため、放っておくのは禁物。咳ぜんそくは自然に治る場合もありますが、一時的に咳が止まっても数カ月して再発する可能性もあるので、呼吸器科による早期治療が大切です。

ただし、咳ぜんそくの場合でも、咳が出てから最初の1週間ほどで受診すると、経験を積んだ呼吸器科の医師でも、咳ぜんそくなのか単なる風邪なのか、または主に風邪の延長である急性気管支炎なのか、判断は難しいと大谷先生は言います。通常の風邪の場合は、2週間ほど経つとヒトの体内でウイルスが増殖できなくなり、咳の症状も治まります。2週間を過ぎても咳が続く場合は、一般的な風邪ではないと考えられるので、呼吸器科で診てもらいましょう。 

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取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

 

<教えてくれた人>

大谷義夫(おおたに・よしお)先生

「池袋大谷クリニック」院長。日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会専門医。群馬大学医学部を卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、アメリカ・ミシガン大学留学などを経て、2009年に「池袋大谷クリニック」を開業。呼吸器内科のスペシャリストとしてテレビや雑誌への出演も多い。著書に『長引くセキはカゼではない』(KADOKAWA)、『止まらない咳を治す!』(扶桑社ムック) 、『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SB新書) 。

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