「歯の状態」が全身の健康状態を左右する? そんな歯の重要性を説くのが、歯科医師のほりうちけいすけさん。そこで、著書『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』(ワニブックス)から、体の健康維持につながる「歯を大事にするための知恵」を連載形式でお届けします。
虫歯になりやすい歯
どの歯も虫歯になりえますが、まず、下の奥歯で第一大臼歯と呼ばれる歯が最も虫歯になりやすいのです。
これは親知らずを除いて奥から2番目に位置し、平均的に6歳くらいで生えてくるため、別名6歳臼歯とも呼ばれています。
なぜ虫歯になりやすいのか考察してみますと、6歳という、まだ自己管理ができない年齢で生えてくることが最も大きな理由であると思われます。
また、この歯は乳歯が抜けて生え代わるのではなく、既存の乳歯列の後ろに新たに生えてくるため、本人にも保護者にも"永久歯である"という自覚がない場合が多いこともその理由として挙げられます。
このため、管理に油断ができてしまうのです。
ときどき幼児のお母さんとこんな会話がなされます。
私「この歯は永久歯だから、一生使わないといけないので、仕上げ磨きは入念にしてくださいね」
母「エッ、そうだったのですか。てっきり子供の歯だと思っていました。それにしても、いつの間にでてきたのかな」
この永久歯が生えてくるのは、幼稚園児~小学校1年生ですから、食生活的にも、お口の衛生についても何も知らない時期ですし、前述しました深い溝もありますし、よっぽど歯質の硬い場合を除いては、保護者によるていねいな"仕上げ磨き"が必要となります。
また、生えたての時期ではまだ十分にカルシウムが沈着しきっていませんので、歯自体さほど硬くありません。
このことから第一大臼歯に限らず、すべての歯において、生え始めた頃は虫歯になりやすいのです。
意外かもしれませんが、上の前歯の歯と歯の間も虫歯の頻度が高い場所です。
なんと、真正面のところです。
皆さん、自分が歯磨きしている姿をイメージしてみてください。
どのあたりを、どのように磨いている感じがイメージされるでしょうか。
多くは上の歯の横を、ゴシゴシこすっている感覚かと思います。
前歯の歯と歯の間を磨いているイメージができますか。
できない人は結構多いはずです。
イメージができないということは、言い換えると、普段からできていないのです。
すなわち、上の前歯の歯と歯の間をきちんと磨けている人はさほど多くはありません。
磨けていないことが原因で、汚れが溜まったままになっているため、当然ですが虫歯になってしまいます。
歯と歯の虫歯は初期の段階では見えません。
上の写真くらいに見えてくるということは、すでに最低C2後期のレベルに達しており、歯質の軟らかい人ではもしかして歯髄(神経)に到達しているC3レベルの可能性もあります。
そうなると、歯髄(神経)を取らなければいけなくなります。
最後ですが、上の一番奥歯の外側も虫歯の多い所です。
お口の中に指を突っ込んで、上の一番奥の歯の外側をさわってみてください。
お口を大きく開けた状態でさわれますか。
難しいでしょう。
そうなのです。
大きくお口を開けた状態では、この場所には歯ブラシが十分入らないのです。
普段の歯磨きでは多くの人はこの場所をきちんと磨ききれていません。
磨き残しがとても多い場所であるため、虫歯になる頻度がとても高いのです。
どこにでも虫歯はできますが、特にこれらの場所は頻度が高いので、皆さん気をつけてくださいね。
■虫歯が発生しやすい歯がある
・第一に第一大臼歯(6歳臼歯)......①
・第二に上の前歯......②
・第三に上の奥歯の外側......③
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