仕事に家事にと頑張って、倒れるように眠る毎日。朝起きると疲れは取れていないし、集中力もすぐ切れてしまう...。それ、全て「眠り方」に問題があるかもしれません。そこで、メンタルヘルスと睡眠の専門家・和田隆さんの著書『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(方丈社)から、心身ともに健康を保つための「ストレス解消睡眠法」について連載形式でお届けします。
ストレスの種類とその影響
「ストレス」と聞くと嫌なことや辛いことを連想しますが、そもそもストレスとは外部から刺激を受けた時に生じる緊張状態のことを言うので、嬉しいこと喜ばしいこともストレスになる場合があります。
また、ノルマや締切りなどもストレスになりますが、人によってはそれが「やる気」に転化する場合もあれば、緊張や心配など、一般的に使われている意味でのストレスになってしまうこともあります。
ここで言うストレスは、人の心や体に悪い影響を及ぼすほうのストレスです。この場合のストレスをメカニズム的に見ると、気をつけるべき点が2つあります。ストレスの強度と持続性です。
ストレスの強度に注目すると、強度の低いストレスに「デイリーハッスル」があります。これは、長い会議、上司や同僚の話し方、満員電車や長い通勤時間、近所の騒音、夫や妻の愚痴、片付いていない部屋......など、日常生活の中で起きているイライラするような出来事です。
これに対して強度の高いストレスに「ライフイベント」があります。結婚、離婚、配偶者の死、会社の倒産、リストラ、転職、異動、引越しなどがそれにあたります。
結婚は、一般的には喜ばしいこととされていますが、当事者にとってはそれまでとは異なる環境での生活が始まるわけで、マリッジブルーという言葉があるように、緊張、不安、心配などで抑うつ状態になってしまう人もいます。
私たちはストレスそのものの強度に注意するのと同時に、その持続性、つまり長く続く慢性的なストレスにも注意を払う必要があります。
と言うのは、デイリーハッスルと呼ばれる小さなストレスでも、数が多く、長く続けば、ストレスの総和は大きくなり、心身の不調を招く原因になるからです。
自分のデイリーハッスルを徹底的に洗い出し、例えば小さなストレスが50あったなら、解消できそうなものから解消して、ストレスの総和を小さくするのです。
特に強度の高いライフイベントは、一発で心身に不調を招く可能性があります。
強度と持続性の2つが重なるとストレスリスクは最大化し、不眠だけでなく、適応障害やうつ病のリスクを高めます。
最近は、上司からパワハラを受けて、部下が不眠になり、適応障害を発症したというケースが増えています。実際、2017年度(平成29年度)の精神障害の労災について、請求件数も決定件数も支給決定件数もいずれも過去最多を更新しました。労災の請求件数1732件のうち、労災が支給決定された506件の内訳を見ると「嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」というパワハラ行為が最も多く88件という結果でした。
ビジネスの世界だけではなく、スポーツの世界でもパワハラが問題視されていますが、実はこのパワハラこそ、強度と持続性が合併したストレスの典型です。
人は自分を否定されると強いストレスを感じますが、パワハラは人格否定そのものです。
また、パワハラは多くの場合上司と部下の間で生じるので、上司はパワハラをしているという認識がなく、部下指導だと思っています。よって、その行為は単発ではなく、持続する傾向があります。
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