コロナ禍での外出自粛などで、いま全国のシニアがフレイル(要介護の前の虚弱状態)の危機にあります。そこで、東京大学高齢社会総合研究機構の教授である飯島勝矢さんの著書『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA)より、自宅でできる感染予防や、要介護予防についてご紹介します。
「小太り」よりも「やせ」が危ない! フレイルを招く、やせすぎに要注意
低いほうが死亡率が上がるBMIパラドックス
新型コロナウイルスが気になって外出を控え、家に閉じこもって食べてばかり......。
思い当たる方は、BMIを計算してみましょう。
BMIとは、肥満か否かがわかる体格指標のこと。
日本ではBMI22が推奨されています。
もし、あなたが40~50代で、BMIが20~23なら、肥満の心配はないでしょう。
25以上だったら、ちょっと「メタボ」が気になるところ。
健康診断などでは、減量を勧められるかもしれません。
このように、一般的にはBMIが高くなると健康に影響が及ぶと考えられています。
ところが、フレイルが心配され始める65歳以上の高齢者の場合、「BMIが高いからよくない」とは一概にいえません。
65~79歳の日本人を11年間、追跡したら......
高齢者のやせ(低BMI)は総死亡率が高い!
その理由が、研究者の間で「BMIパラドックス」と呼ばれているグラフ。
65~79歳の日本人、およそ2万7000人のBMIと死亡率の関係を表したものです。
もっとも病気にかかりにくいとされるBMI20~23の人を基準に見てみましょう。
BMIがそれ以上の人、つまり太り気味の人は、従来の認識からすると死亡リスクが高くなるはずです。
それなのに、BMI23以上になっても、男性は死亡リスクがやや低くなり、高くなるのはBMI30を超えてようやく。
しかも、女性だけがやや高くなっているくらいです。
反対に、BMIが低くてやせている人はどうでしょうか。
BMI20を切った途端に死亡リスクが上がり始め、数値が低くなるほどにリスクが上昇......。
従来の認識とは逆のことが起こっていたのです。
だからパラドックス。
「逆説」「矛盾」と呼ばれています。
海外で行われた日本人を含まない65歳以上の高齢者、約20万人を対象にした調査にも、「いちばん死亡率が低かったのはBMI27台の人だった」というものがあります。
これらの調査から考えられるのは、「小太りぐらいのほうが健康で長生きする可能性が高い」ということ。
中年期から高齢期へ移行する際、メタボ予防一点張りだった考え方を大きく変える! フレイル予防には、これが必要です。
カンタンに計算できます
自分のBMIを知ろう
イラスト/中村知史
要介護の手前の「フレイル」状態を防ぐために自宅でもできる健康法について、5章にわたって分かりやすく解説