長引く肩こりは首の異常かも? 姿勢を正して頚椎や背骨を守る生活習慣と「肩甲骨ストレッチ」

首痛を肩こりの延長くらいに考えてはいませんか? 実は首の骨の病気が潜んでいることがあるんです。例えば、首の病気で最も多い頚椎症だった場合、歩行障害に陥る可能性も...。そこで今回は、国際医療福祉大学 三田病院 整形外科 主任教授の石井 賢(いしい・けん)先生に「首の痛みを遠ざける生活習慣や痛みが出てしまったときの治療法」についてお聞きしました。

【前回】肩こりに潜む「首の痛み」は、全身の症状につながる前触れ? 自然には治らない「首の病気」

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治療法は大きく進展
早めに受診を

長引く肩こりなどの症状がある場合は、首の異常を疑って早めに医療機関を受診することがなによりです。

「頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアも、症状が軽い場合は、薬物療法などの保存療法と、首に負担のかからない姿勢やストレッチなど生活指導で、症状が改善される方もいます。長期間にわたって神経が圧迫されると治りにくいので、早めに受診することをおすすめします」と石井先生。

手術が検討されるのは、箸が持てないなど運動機能障害がひどい場合や、歩行障害や排泄障害など日常生活動作(ADL)が著しく損なわれる状態のときです。

頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアの手術は、神経を圧迫している骨を取り除き、人工椎間板や人工骨に置き換えて固定します。

石井先生は、3~4cmの小さな傷による最小侵襲手術で、最先端治療を行っています。

「私たちのコンセプトは、手術をしないで済む治療を優先し、手術をするならば身体に負担の少ない低侵襲治療を行っています。患者さんに精神的・肉体的な負担をかけないことがモットーです」

こう話す石井先生は、首下がり症候群の治療にも力を入れています。

近年、患者数が増加している首の病気で、石井先生の治療数は世界トップクラス。

ただし、患者さんへの軽減負担のため、特殊なリハビリ「シェアー・プログラム」を開発し、プログラム後には首がまっすぐになるなど劇的な成果を上げています。

首の病気はいろいろありますが、治療法は大きく進展しているのです。


●あなたもストレートネックかも!?
首の骨は本来カーブを描いていますが、うつむいた姿勢を長時間続けているとまっすぐになります。重い頭を支える首の骨の負担が大きくなり頚椎症などの病気にもつながります。

[正常]

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[ストレートネック]
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《最近、増えている「首下がり症候群」とは?》

加齢に伴う首の筋力の低下で、首が下がった状態のままになります。首を上げることができず、前を見ることができないので歩くのが難しく、首が曲がった状態なので食べ物を飲み込むのも容易ではなくなります。治療は手術が功を奏しますが、新たな治療法も開発されつつあります。

首を守ることを意識して姿勢を正すことが大切

治療法が進歩しているとはいえ、まずは首を守る姿勢を知ることや運動習慣などによる予防も大切です。

「頚椎の病気は、加齢に伴う骨の変形や筋肉量の低下に関わることが多く、全てが予防できるわけではありませんが、首の運動は予防に役立ちます。また、スマートフォンを見るときなどには、首をまっすぐにした姿勢を意識しましょう」と石井先生。

うつむくような姿勢は、頭の重さから首への負担が大きくなるので注意が必要です。

スマートフォンは、目の位置に画面が来るように持って使用しましょう。

逆に、高い物干し竿に洗濯物を干すときなどに、首を反らした状態を続けるのもよくありません。

頭の位置が、前後に偏らないように意識することが大切です。

「姿勢を正すことは、頚椎のみならず背骨全体の状態を守るためにも重要です」と石井先生はアドバイスします。

加齢に伴い背骨は支障を受けやすく、それを防ぐのが姿勢などの日頃の生活習慣です。

姿勢を正し、下記のストレッチなどで首周辺の筋肉を緩めるとよいそうです。

「肩甲骨を寄せて僧帽筋などを動かすストレッチはおすすめです」と石井先生。

首を守って全身へ影響するつらい症状を防ぎましょう。

「首の痛み」を遠ざける生活習慣&痛みが出てしまったときの治療法

生活習慣

カバンはなるべく肩にかけない

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片方の肩に重いカバンをかけ続けると骨格がゆがみ、首の骨へも悪影響を引き起こします。手に持つかリュックやキャリーバッグで。

前かがみにならないように

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家事をするときには、姿勢を意識するように気を付けましょう。スマホを使用するときには、画面は目の位置まで上げましょう。

肩甲骨ストレッチ

10回×1日3セット

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立った状態で足を肩幅程度に開く。リラックスして両ひじを曲げたまま、両腕を肩の高さくらいまで上げる( 無理のない範囲で)。

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肩甲骨を中央に引き寄せるように、 両ひじをゆっくり後ろに引いていく。このときにひじが多少下がってもよい。腕を前に戻し、繰り返す。

【横から見ると】

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治療法

保存療法
痛みや炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛剤や、注射による神経ブロック、首を固定する頚椎カラーという装具などを用います。

生活指導
首に負担がかからないように正しい姿勢など、日常生活における注意点を指導します。

手術
日常生活に支障のある重症の患者さんに適用されます。神経を圧迫する首の骨の一部を取り除き、人工椎間板などに置き換えます。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

国際医療福祉大学 三田病院 整形外科 主任教授
石井 賢(いしい・けん)先生
慶應義塾大学医学部卒。アメリカMGHハーバード大学、慶應義塾大学医学部整形外科などを経て2017年より現職。最小侵襲・内視鏡脊椎手術の日本の第一人者で臨床経験豊富。

この記事は『毎日が発見』2022年2月号に掲載の情報です。

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