健康診断の異常値を放置していませんか? 「腎臓」の健康は食生活の見直しから

「慢性腎臓病」をご存知ですか? 成人の8人に1人はかかるといわれるほど、身近な病気ですが、血液透析治療が必要になる一歩手前まで無症状のことが多いといいます。今回は、神奈川歯科大学大学院 統合医療学講座特任教授の川嶋 朗(かわしま・あきら)先生に、「腎機能を保つための生活習慣と治療」についてお聞きしました。

【前回】むくみが続いたら要注意! 成人の8人に1人がなっている「慢性腎臓病」は放置厳禁

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「急性の腎機能低下は、原因となった病気などが改善することで戻ることがあります。しかし、慢性腎臓病で低下した機能は元に戻りません。だからこそ、進行する前に腎臓を守ることが重要なのです。みなさんは、健康診断の異常値を放置していませんか? 放置が、腎機能の低下を促すことになるかもしれません」と川嶋先生は注意を促します。

例えば、高血圧や高血糖、中性脂肪、LDL(悪玉)コレステロールの値が高いときには、食生活の見直しが大切といわれます。

無症状だから放置するのではなく、医療機関で自分自身の身体状態を把握すると同時に、血管や腎臓を守るために、食生活を正す心がけが重要になるのです。

食生活の見直しで腎臓の健康と血流維持

生活習慣病予防では、1日3回のバランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることが大切です。

肥満は生活習慣病を悪化させるため、適正体重に戻す努力を。

「腸内細菌が尿毒素を作り、腎臓を悪くするといった報告もあります。腸内細菌は、肉類ばかり食べるなど偏った食事で乱れやすいため、日々の食事に食物繊維を含む食品や納豆などの発酵食品も、食材として取り入れるとよいでしょう」と川嶋先生はアドバイスします。

また、尿が1日400cc以上出ないと、体内に毒素がたまるといわれています。

水分摂取量が少ないと毛細血管の血流が悪くなって、腎機能が低下しやすくなるので注意しましょう。

加齢に伴い喉が渇いたと感じにくくなりますが、1日1~1・5Lは水分を摂るように心がけるとよいそうです。

ただし、心臓が悪い人は水分の摂り過ぎはよくないため、主治医に相談した上で水分補給の量を調節しましょう。

「腎臓は毛細血管のかたまりなので、血流をよくする『温活』も役立ちます。

腎機能が少し落ちてきたという人は、冷たい飲み物は避け、常温や温かい飲み物を摂るように心がけるとよいでしょう」と川嶋先生はすすめます。

「温活」は、全身を温めることで健康に寄与します。

腎臓がある腰や腹部も冷やさないように、腹巻きや湯たんぽを活用するとよいそうです。

また、前屈みの姿勢で悪くなりやすい首周りの血流は、タオルやスカーフで保温をすることで改善を。

ぬるめのお湯(38~40度)の入浴も役立ちます。

心臓病など持病がある人は、入浴法を主治医に相談した上で「温活」するようにしましょう。

「腎臓を守るには、早めの予防や治療が大切です。気になることがある人は、腎臓病の専門医の診断を早めに受けてください」と川嶋先生。

腎臓をいたわって病気を退けましょう。

《健診結果の「尿たんぱく」「eGFR]の値をチェック!》

腎機能が低下すると、たんぱく質のような人体に必要な栄養素の再吸収や、クレアチニンのような老廃物の排出能力が低下します。クレアチニンは、筋肉を動かした後に生じる老廃物です。健康診断の尿たんぱくは、尿に異常にたんぱく質が漏れ出ていることを示します。また、「eGFR」は、年齢や性別を加味した血中のクレアチニン量を調べる検査です。尿たんぱくは慢性腎臓病以外の腎臓病や、生活習慣病などの病気でも生じます。いずれにしても異常値は放置しないようにしましょう。

腎機能を保つために生活習慣&慢性腎臓病と診断されたら...

健康診断は毎年受け、その結果を自己判断しない!

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慢性腎臓病や生活習慣病は無症状のまま進行します。病気を早期発見・治療するためには健康診断を毎年受け、異常値が出たら放置せずに医療機関で受診を。

食事はバランスよく腹八分目に

健康診断の異常値を放置していませんか? 「腎臓」の健康は食生活の見直しから P081_01.jpg腎機能を守るには生活習慣病を防ぎ、血管を守ることが重要になります。偏った食事や食べ過ぎは×。「一汁三菜」を心がけ、肉や魚、豆類、野菜などをバランスよく。

適度な運動と休養&十分な睡眠

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適度な運動は血管を維持するために欠かせません。1日7000~8000歩のウォーキングが目安です。動いたらしっかり休む。睡眠時間の十分な確保も。

血流をよくする「温活」を

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腎機能を保つには血流をよくすることが役立ちます。夏でも常温や温かい飲み物を飲むようにし、ひざ掛けやぬる目のお湯(38~40度)の入浴などで「温活」を。

その他に

生活習慣病と診断された人は改善のための食生活の見直しや治療薬の活用も大切です。

慢性腎臓病と診断されたら...

食事療法

低下した腎機能を守るために、腎臓に負担をかけるたんぱく質、ナトリウム、カリウムが制限されます。その程度は腎臓の状態によって異なります。自己判断せずに医師の指示に従いましょう。

薬物療法

慢性腎臓病を治す薬はないため、生活習慣病の改善薬やカリウムを下げる薬、血液が酸性に傾くのを抑える薬など、腎機能の状態や全身の状態に合わせた対症療法の薬による治療が行われています。

その他に

腎機能が著しく低下して腎不全になると血液透析や腹膜透析による治療が必要になります。また、腎臓を家族などから譲ってもらう生体腎移植も選択肢の一つになっています。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

神奈川歯科大学大学院 統合医療学講座特任教授
川嶋 朗(かわしま・あきら)先生
1957年東京生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京有明医療大学教授などを経て2022年より現職。

この記事は『毎日が発見』2022年9月号に掲載の情報です。

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