大腸がんの治療は、大腸を切除すること
進行した大腸がんの治療は手術です。
手術によって腸を切除して、便が通過できるように腸と腸を縫い合わせます。
しかしここで問題があります。
がんのすぐ近くで腸を切除すると、がんが残ってしまう危険があるので、進行がんであれば10cm以上、早期がんでも5cm以上は正常な大腸を切除しなくてはいけません。
がんの大きさが5cmあるとすると、最低でも25cm以上の腸を切除することになります。
実際は解剖学的な制約のために、腸をつなぐために40cm以上の大腸を切除しなければならないことは珍しくありません。
大腸は全長で1.5mほどですので、40cm切除されると術後の様々な後遺症(下痢、便秘、頻回の排便など)が起こります。
肛門に近い直腸がんでは必然的にがんからの距離が短くなるため、永久的な人工肛門(体の外に腸を誘導して、おなかに袋をつけて便をためる)になってしまう危険があります。
僕は大腸を専門とする外科医でしたので数々の大腸切除の手術を行ってきました。
重視したのは術直後の合併症をなるべく少なくすることです。
そのために重要なのは、腸と腸のつなぎ目が漏れないように最大限の配慮をすることです。
もし腸と腸のつなぎ目がピンッと張っていると、つなぎ目がほころびる可能性が高くなります。
そのために余分に腸を切除してでも、つなぎ目に負担がかからない方法を選択します。
結果的に40~50cmの腸を切除することにも躊躇はありませんでした。
腸について詳しく学ぶまでは、僕たち外科医にとって大腸はあくまでも便を作ってためておくところで、必要があればどれだけ切除しても、多少の排便の苦労はあるかもしれないが、問題はないと考えていました。
しかし、これは大腸のもう一つの役割を全く考えていない考え方だったのです。