「政府は高齢者に冷たいのでは」森永卓郎さんが考える新型コロナ対策と医療費負担

定期誌『毎日が発見』の森永卓郎さんの人気連載「人生を楽しむ経済学」。今回は、コロナ対策や医療費負担などから考える「政府の高齢者への対応」ついてお聞きしました。

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第三波の原因は20代から50代の活発な移動

西村経済再生大臣は、11月25日に「これからが感染抑止のための勝負の3週間だ」と国民に呼びかけましたが、結果的に、その間も感染者数や重症者数は増え続けました。

勝負の3週間は、失敗に終わったのです。

私は当然の結果だと考えています。

感染者数が過去最大を更新し続け、医療現場から医療崩壊寸前と悲鳴が上がるなかでも、政府が緊急事態宣言を発出する素振りもみせなかったからです。

それどころか、Go To トラベルキャンペーンを大阪市と札幌市を除いて継続していました。

そうしたなか、毎日新聞と社会調査研究センターが12月12日に行った世論調査で、内閣支持率が40%と、11月7日の前回調査から17ポイントも下落して、不支持(49%)の方が多くなってしまいました。

支持率低下の主因は、新型コロナ対策です。

政府の新型コロナ対策を「評価する」とした国民は14%に過ぎず、「Go To トラベル中止」を求めた国民は67%に及んだのです。

これで、さすがの政府も重い腰を上げざるを得なくなり、東京都と名古屋市をGo To トラベルの対象から外すことを決めました。

同時に12月28日から1月11日までの措置として、Go To トラベルを全国一斉に一時停止することにしましたが、全国の実施日は2週間も後ですから、どう考えても、タイミングが遅いと言わざるを得ません。

政府は、「旅行自体が感染を広げるという証拠はない」として、大きく傷ついた観光業界への支援に重点を置いていますが、Go To トラベルが感染を広げたことの傍証は、いくつも示されています。

例えば12月7日に発表された東京大学などが行った2万8000人対象の調査では、新型コロナへの感染が疑われる嗅覚や味覚の異常、発熱や頭痛などの症状があった人の比率は、Go To トラベル利用者の方が、未利用者より2倍も高かったのです。

新型コロナの重症化率は、圧倒的に高齢者の方が高いので、感染が拡大すると、被害は高齢者に集中します。

実際、新型コロナに感染した場合の死亡率は、50代以下が0.06%と、ほとんど死なないのに対して、60代以上は5.7%と大きくなっています。

つまり経済を優先するということは、高齢者に大きなリスクをもたらすことにつながるのです。

しかも、私がいちばん疑問に思ったのは、12月2日に小池百合子東京都知事が、65歳以上の高齢者と基礎疾患を持っている人に対して東京を発着する旅行の利用自粛を呼びかけたことです。

感染症の専門家の分析によれば、今回の感染第三波は、20代から50代の人たちが活発に移動することで、全国に感染を広げたことが分かっています。

つまり、本来規制しなければならないのは、現役世代の移動であるにもかかわらず、それを野放しにして、東京の高齢者からは、旅行の楽しみを奪ってしまったのです。

医療費の窓口負担増がついに現実に

もう一つ、高齢者の冷遇が明らかになったのが、医療費の自己負担です。

政府の全世代型社会保障検討会議が12月14日に最終報告書をまとめました。

そのなかで、年収200万円以上(単身世帯の場合)の後期高齢者は、医療費の窓口負担の割合を2022年度後半から、現行の1割から2割に引き上げることが明記されました。

一部の後期高齢者の医療費負担が倍増することになるのです。

「後期高齢者支援金の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らすことが最重要課題」だと報告書は書いていますが、要するに高齢者よりも若者の暮らしを優先するということです。

もちろん政府は、ある程度高い所得を得ている高齢層に限定して負担増を求めるとしていますが、年収200万円というのはかなり微妙なラインです。

厚生労働省が発表している厚生年金のモデル年金は、単身者の場合190万円です。

ただ、これはあくまでも平均であって、大企業の勤務者や大卒の人の場合には、200万円を超える可能性が高いのです。

また、年金の支給開始年齢を65歳以降に繰り延べたり、75歳以降も働き続けた場合も、年収200万円を超えるケースが多くなり、医療費の2割負担が降りかかります。

さらにもう一つ懸念があります。

政府は新型コロナのワクチン接種を早ければ2月下旬にも始めるとしていますが、接種は医療関係者と高齢者を優先するとしています。

ただ、今回のワクチンは、緊急承認されたものなので、副作用の有無が十分に検証されていません。

体力の劣る高齢者に優先して接種することが、本当に高齢者のためになるのか、私は疑問を感じています。

かつての日本には「お年寄りを大切にしよう」という文化がありましたが、そうした美風が、最近はどこかに吹き飛んでしまったようです。

経済を多少犠牲にしてでも、お年寄りの暮らしと命を守るというのが、本来の政府の役割ではないでしょうか。

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森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。東京大学卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て現職。50年間集めてきたコレクションを展示するB宝館が話題。近著に、『なぜ日本経済は後手に回るのか』(角川新書)がある。

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(森永 卓郎 森永 康平/KADOKAWA)

新型コロナウイルス感染症によって生じた日本経済の失速。その原因は長年続いている「官僚主義と東京中心主義」にあると、森永さんは分析します。では今後どうすれば感染拡大を抑え、経済的苦境を脱することができるのか――。豊富な統計やデータを基に導き出された、未来への提言が記された一冊です。

この記事は『毎日が発見』2021年2月号に掲載の情報です。

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