コミュ障だし、優柔不断だし、意志が弱いし、お金持ちでもないし...。日常生活を送っていると心のノイズに押しつぶされそうになります。そこで、8000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラーの山根洋士さんの著書『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)から、「自己否定の無限ループから抜け出す方法」をテーマに納得した人生を過ごせるヒントをご紹介します。
誰もが壮大な勘違いの世界で生きている
▼世界は「意識したもの」でできている
マインドセットは、わかりやすくいうと、子どもの頃につくられる「思い込み」です。
勝手にそう思っているわけだから、勘違い。
大人になっても続くものだから、「壮大な勘違い」といっていいでしょうね。
そもそも私たちは、思い込みの世界で生きています。
あなたは、カラーバス効果という言葉を聞いたことがありますか?
例えば、黄色い車が欲しくなると、世の中に黄色い車が増える、という現象です。
それでは、今すぐ目をつぶって、まわりにあった黒いものを思い浮かべてみてください。
何個出てくるでしょうか。
10秒くらいでやってみましょう。
いくつ出てきましたか。
それほど多くは思い浮かばないと思います。
それでは今度は、まわりを見渡して、黒いものを探してみてください。
まわりには黒いものがいくつもありますよね。
もしかすると、黒いものだらけかもしれませんね。
これは、「黒いもの」を意識しているからです。
黒いものを意識すると黒いものだらけに、白いものを意識すると白いものだらけに。
まわりはなんにも変わっていないのに不思議ですよね。
自分の意識が変わっただけで見え方が変わる。
それが、思い込みの世界、勘違いの世界。
私たちは、そんな思い込みの世界で生きているんです。
そして、その思い込みのままに生きていると、意識しないものはどんどんはねのけるようになるので、思い込みはどんどん強くなります。
上司や親や、近所のおじさんやおばちゃんのことを「頭がかたいなあ」と批判することもあるけど、あなたの頭もどんどんかたくなっているので注意してくださいね。
思い込みは、同じ経験を何度も繰り返すと、どんどん強くなります。
例えば、「言われたことは完璧にできなきゃダメ」というマインドセットがつくられたとします。
そして、完璧にできたときは褒められ、できなかったときは叱られるという経験を何度も繰り返していると、完璧にやるのが当たり前になります。
そうして生まれるのが、「完璧でないといけない」というメンタルノイズ。
このノイズがあると、どんなこともちゃんとできないと自分を許せないし、ちゃんとできない相手にはイライラする。
なんでも完璧にできるのは素晴らしいことだけど、できないとダメってこともないですからね。
もちろんミスはしないほうがいいですが、まったくミスしない人なんていません。
このノイズがあるから息苦しくなるんです。
ノイズに気づく=自己認知のスタート
▼真面目で優秀な人ほど要注意
メンタルノイズは、誰にでもあります。
そして、なくなることもありません。
なぜなら、経験したことはどんどん潜在意識に放り込まれるからです。
生きていると、だまっていてもノイズは増えるものなんです。
そして、その素となる思い込みはどんどん強化されます。
でも、世の中には、メンタルノイズに邪魔されず人生を送っているような人がいますよね。
なにをやってもうまくいく人や自己肯定感が高いといわれる人。
そんな人たちを見ていると、「メンタルノイズも私だけにあるのかな」と思ってしまう人もいるかもしれませんね。
念を押しますが、メンタルノイズは誰にでもあります。
でも、ノイズに邪魔される人と邪魔されない人がいます。
邪魔される人に多いのが、「真面目に頑張る人」。
社会的には評価されるタイプですが、このタイプが実は危ない。
真面目な人がノイズに邪魔されやすい理由は、2つあります。
ひとつは、目の前にある問題を解決しようと、とことん向き合うから。
問題からうまく逃げたり、目を逸らしたりすれば、ノイズに邪魔されることはありません。
でも真面目な人は、痩せないといけないのにどうして痩せられないんだろう、ミスしちゃダメなのにどうしてミスばかりするんだろう、どうしてできないんだろうと、あれこれ考えてしまいます。
そして自分の能力やメンタルのせいだと思っているので、ノイズという無意識のブレーキに気がつきません。
もうひとつは、決め事やルールに従順だから。
私がカウンセリングをした人の中には、学業や仕事でしっかり結果を出してきた人がたくさんいます。
でも本人は、うまくいっていない悩みを抱えている。
こういう人に共通するのは、昔から親の教えや学校のルールをきちんと守り、「こうあるべきだ」という自分を頑張って実現してきたことです。
だからノイズの影響を強く受けやすいのです。
何度やってもうまくいかないことや、長期間解決していないことは、ほとんどメンタルノイズが原因だと思ってください。
もちろん、真面目なことが悪いわけではなく、うまくいかない原因がメンタルノイズだということに気づいていないだけなんです。
▼悩んだら「ノイズ出たよ」
これから、あなたのメンタルノイズの探し方や邪魔されない方法を紹介していきますが、その前に覚えてほしいのは、ノイズを意識すること。
悩んだときや、うまくいかないときは、とりあえずノイズのせいにしちゃいましょう。
「ノイズ出たよ」
「またノイズ出てるかも」
そんな具合で口に出してください。
ダイエットがうまくいかなかったときも、仕事でミスしたときも、上司とぎくしゃくしたときも、資格試験に失敗したときも、海外留学を挫折したときも、すべてノイズのせいにするんです。
今の自分を認めたり、受け入れたりするには、まず自分を客観視することが大切。
うまくいっていない当事者から抜け出すんです。
第三者の目で状況を見ると、意外にたいしたことなかったり、悩んでいることがバカバカしかったりすることもよくあります。
心理療法の「自己認知」とか、「自己認識」ということですが、自分を客観視するって、そう簡単にできることではないですよね。
そんなときに使いやすいのがメンタルノイズです。
悩んだらとにかくメンタルノイズのせいにして、自分の外に出してしまうイメージを持つ。
これが自己認知、自己認識をやりやすくします。
▼簡単なノイズの見つけ方
メンタルノイズのせいにするには、ノイズの存在に気づくこと、そして具体的にノイズを見つけることです。
ただし、人それぞれマインドセットが異なるように、メンタルノイズは無数にあります。
次からは、あなたのノイズの見つけ方を解説していきましょう。
見つけ方は大きく2つです。
ひとつは、14の代表的な「あるある」ノイズをヒントにして、自分に当てはまりそうなものを見つける方法。
これを使えば、潜在意識の奥深くにあって自分ではなかなか気づけないノイズを見つける手がかりになります。
もうひとつの方法は、「裏表思考法」です。
これは比較的、自分でも気がつきやすいノイズを見つけるための方法。
普段の生活の中で悩みに直面したときに、誰でも実践できます。
まずひとつ目の方法として、次の14のノイズを紹介していきます。
占いや性格診断に近いものですから、ゲーム感覚で気軽に読んでみてください。
①ダメ出しノイズ(自分は重要でないほうがいい)
②ありのままの自分封印ノイズ(自分のままでいないほうがいい)
③思考停止ノイズ(自分は考えないほうがいい)
④他人ファーストノイズ(欲しがらないほうがいい)
⑤謙虚謙遜ノイズ(受け取らないほうがいい)
⑥出ない杭ノイズ(達成しないほうがいい)
⑦石の上にも三年ノイズ(がまんしたほうがいい)
⑧他人がこわい裏切りノイズ(信用しないほうがいい)
⑨ちゃんとしなきゃノイズ(子どもでないほうがいい)
⑩幸福恐怖症ノイズ(幸せにならないほうがいい)
⑪完璧主義ノイズ(完璧でないといけない)
⑫タイムイズマネーノイズ(急がないといけない)
⑬おもてなしノイズ(喜ばせないといけない)
⑭ドMノイズ(努力しないといけない)
そんなノイズが自分にあるはずがないとか、そんなの人として当たり前、常識じゃないの?と思ってしまうようなものが並びましたね。
でもこれは、私のところに「私は自己肯定感が低いので......」、「自分に価値があると思えなくて......」、「私はなにをやるにしても自信がなくて......」などと相談してきた人たちの傾向です。
ぜひあなたも「自分、これかも」と思うノイズを見つけてみてください。
それだけで、心がらくになります。
【まとめ読み】『「自己肯定感低めの人」のための本』記事リストはこちら!
「〇〇すべき」とつい思ってしまいがちな心のクセを直すことをテーマに全5章にわたって素直な心の作り方を解説してくれます。