「親が認知症になってほしくない...」介護のことも考えて、そう思う人も多いでしょう。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生は「認知症は予防できる病気で、何もしないのはもったいない」と言います。そこで藤田先生の著書『親をボケさせないために、今できる方法』(扶桑社)より、食事と生活の中での「認知症の予防策」についてご紹介します。
肉を食べてもらうなら、週2回がベスト
私は自らの健康法の一つとして、「ステーキを週に2回食べる」ことを実践しています。
新型栄養失調を防いで、認知症にならないためです。
ステーキは、週に2回がベストです。
理由は2つあります。
一つは、飽和脂肪酸をとりすぎないためです。
肉に含まれる脂質の主成分は、飽和脂肪酸です。
この成分は、常温で固まります。
肉を焼いたフライパンを放置すると、脂が白く固まるでしょう。
あれが飽和脂肪酸の働きです。
飽和脂肪酸は沸点が高く、人の体温でも固まりやすくなります。
これが血液中に大量に流れてしまうと、血液をドロドロにし、血流を悪くしやすいのです。
これは脳の健康にとってもよいことではありません。
もう一つは、動物性の脂質やタンパク質は、腸のなかで「悪玉菌」を増やしやすいためです。
悪玉菌が腸のなかで異常発生することも、認知症を引き起こす一因になります。
ただしこの2つは、頻繁に、あるいは一度に大量に食べることをしなければ、防ぐことができます。
そのちょうどよいところが、「週に2回のステーキ」なのです。
では、どうしてステーキがよいのでしょうか。
焼肉ではダメなのでしょうか。
ステーキは、味つけがシンプルでもおいしくいただけます。
塩・胡椒だけでも十分です。
一方、焼肉のタレなどの加工調味料には、糖質が多く使われています。
糖質制限中は、焼肉のタレやポン酢、ドレッシングなど、糖質の多い加工調味料も避けたいところです。
また、ステーキは肉を塊で食べるので、薄切り肉を一枚一枚味つけして食べる焼肉より、塩分の摂取量を抑えられます。
なお、ステーキというと牛肉をイメージしますが、豚肉も鶏肉も良質なタンパク源です。
「今日はステーキの日」と決めたら、好きな肉をおいしく食べられるぶんだけいただくとよいと思います。
ステーキを食べるとき、もう一つ大切なことがあります。
つけあわせを何にするかです。
おすすめは芽キャベツやブロッコリー、アスパラガス、ホウレン草、パセリなどです。
ここも認知症を防ぐ大切なポイントです。
牛肉や豚肉、鶏肉、ラム肉などの肉類のほか、卵や魚、貝類、ナッツ類、乳製品など、タンパク質の豊富な食品を食べると、「ホモシステイン」という物質の血中量が増えます。
この濃度が高くなることも、アルツハイマー病の要因になるとわかっています。
動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞など血管の病気を起こしやすくなるとも報告されています。
これを防ぐには、ビタミンB6やビタミンB12、葉酸を一緒にとることです。
それによって、ホモシステインの血中濃度を下げることができます。
前述した、つけあわせによい野菜は、葉酸というビタミンが豊富なのです。
ところが、ファミリーレストランなどでステーキを注文すると、ポテトやニンジンのグラッセ、コーンが多くなります。
こうしたものは糖質が多く、つけあわせには適しません。
もしもファミレスでステーキを食べるならば、サラダバーがあって、自由に野菜を選べるお店にすることです。
「ステーキには何を一緒に食べあわせるか」も親の脳を守るためには大切なこと。
知らせるか知らせないかの差は、大きいのです。
【まとめ読み】『親をボケさせないために、今できる方法』記事リスト
高齢の親の認知症を予防する「具体的な59の方法」が、4章にわたって解説されています