「モノ」と「自分」どちらが大切なの? やましたひでこさんが問う「定年後の住空間」

人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。

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定年後の「住」空間とは

住まいという「空間」があって、その中にいる「自分」は、さまざまな「モノ」に囲まれて過ごしている。

それが私たちの生活であり、人生です。

この3つ、自分とモノと空間で、いったい何がいちばん大切な存在でしょうか。

また、何がいちばん価値があるものでしょうか。

それは質問するまでもありませんね。

自分の命以上に大切なもの、価値があるものなどないはずですから。

ところが、このあたりまえの事実があたりまえとされることなく、時に摩訶不思議な状態に私たちを追いこむことがあります。

つまり、自分が「モノ軸」で暮らし生きていることに、まったく気がつかないままでいるのです。

たとえば、こんな光景があります。

リビングに隣接する四畳半の和室。

そこには、背の高い大きな洋服ダンスが2つあります。

そのタンスと天井の隙間にも段モノに方ボール箱が積み上げられています。

おまけに、畳の上には大きな存在感のあるマッサージチェアが鎮座しています。

購入した当初は喜んで使っていたものの、ここ5年近くは使われることなく、カバーがかけられたまま。

この一家の夫は毎夜、タンスとマッサージチェアにはさまれるようにふとんを敷いて寝ているのです。

タンスとマッサージチェアから受ける圧迫感、閉塞感は半端ではないはず。

こんな睡眠のとり方で、どれだけの睡眠の質が確保できているのかは疑問です。

それが今後も続いたとしたら、もう若いとはいえない夫の健康状態はどうなっていくでしょう。

けれど、この家の住人たちは、それに慣れっこになってしまっているようです。

夫が毎夜そんな環境の中で寝ていることなど妻は思いやることなく、当の夫自身も苦情を言ってはいないようですから。

私は、この家の妻に質問をしました。

「地震でタンスが倒れる危険がありますよね」

「だいじょうぶです。ちゃんと転倒防止装置がつけてありますから」

なるほど、あの3・11の震災を経験していれば、ある程度の危機管理には心が向くものです。

でも私にいわせれば、タンスが倒れないまでも、タンスの上に積まれた段ボール箱は簡単に落ちてくるでしょう。

タンスの引き出しやその中身が、就寝中の夫の上にバラバラと降ってくる危険はおおいにあります。

まして、その転倒防止装置がどこまで機能するかもわかりません。

いえ、なによりも、今後想定される大地震のリスクを云々する以前に、この家族は、今現在の自分たちの日々の空間の環境に心を配る必要があるでしょう。

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「モノ」と「自分」どちらが大切なの? やましたひでこさんが問う「定年後の住空間」 081-H1-teinengodansha.jpg流行語にもなった「断捨離」の著者が移住先の自宅を初公開。常識に縛られない「断捨離」の考え方や実践法が詰まっています

 

やましたひでこ
東京都出身。早稲田大学文学部卒。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常生活の「片づけ」に落とし込み、自己探訪メソッドを構築。初著作『新・片づけ術 断捨離』(マガジンハウス)を刊行以来、著作・監修を含めた多数の「断捨離」関連書籍がアジア、ヨーロッパ諸国でも刊行されている。

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『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』

(やましたひでこ/大和書房)

よりよい人生のために、定年後の不安を抱えているすべての人に贈る「大人のための断捨離」本。定年後は「これまでの常識」を断捨離して、残りの人生を前向きに生きる術が書かれています。一度しかない人生だからこそ、主婦も定年宣言をして、自分らしさを取り戻すきっかけに。

※この記事は『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(やましたひでこ/大和書房)からの抜粋です。

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