人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。
定年後こそ、世間の目に縛られない
私たち定年世代の多くは、地域の目、会社の目、親戚の目など、世間の目を意識して生きてきました。
「ちゃんと生きる」ことに重きが置かれ、自分が本当にやりたいことは後まわし。
「いい妻である」「いい夫である」「いい親である」「いい職業人である」、さらには「いいおばあちゃん」「いいおじいちゃん」として体裁を保ってきました。
そうありたい気持ちもわかりますが、もし無理をして「役割」を演じているとしたら、もう十分にがんばった自分を認めてあげてもいいのでは。
定年を機に、「役割」を卒業しませんか。
もっと自分のやりたいことにフォーカスした、自分の人生を生きるために。
そこで、私の提案は、「もっと羽目を外しましょう」ということです。
つまり、「もっと自由に好きに生きましょうよ」ということ。
「羽目」を広辞苑で引くと、
【羽目=板張の形。下見のように羽重ねにせず平らに張ったもの。/=(破目とも書く)境遇。多く困った場合を意味する。/(例)苦しい羽目に陥る。羽目を外す。】
「羽目を外す」というのは、自分の心に従って生きることです。
つまり、私たちが知らずに縛られている「こうあるべき」「ねばならない」という考えをとり払うこと。
そのためにすることは、断捨離です。
モノと向き合い、自分の思考と向き合い、どんどんモノを手放していくことで、思考が自由になります。
そう、モノを減らすと、人生が愉快になるのです。
私の人生が一変したのは55歳から
断捨離のベースとなったヨガの行動哲学「断行・捨行・離行」との出会いは、20代のとき。
そこから時間をかけてモノとの関係へと落としこんでいきましたが、30代、40代の頃はそれを外部へ発信してはいませんでした。
結婚以来、夫が営む事業で経理を手伝っていましたが、「私は別にやりたいことがある。でも仕事しなければ家計が回っていかない」と相反する思いにがんじがらめになっていました。
そんな30代、40代は、夫の両親との同居問題をはじめ、身内の死や介護、さらに更年期障害も加わって、とにかく消耗した時期。
本来、女性がいちばん美しい時期であるはずですが、女性としての人生を愉しめない出来事が次々に襲って来たのです。
夫の事業が軌道に乗り、経理担当の従業員が雇えるようになったのは、子どもが大学に入ってから。
そこでようやく自由になり、「好きなことをさせていただきます」と宣言しました。
ちょうど50歳でした。
その頃、ヨガの講師をしながら、断捨離セミナーを始めます。
生徒さんは5~6人、自宅のダイニングテーブルでこぢんまりと活動していました。
そんな状況が一変したのは、『新・片づけ術 断捨離』(マガジンハウス)を上梓した2009年、55歳のとき。
累計400万部のミリオンセラーになり、「断捨離」が日本全国、さらにはアジアやヨーロッパの各地へと広がっていき、現在に至ります。
超スロースターター、やましたひでこの人生はまだ始まったばかりです。
エイッと次のステージへ行く
私は、モノに執着するのはみっともないけれど、人生にはもっと欲ばりでありたいと常々思っています。
つくづく人間はおもしろいと思うのは、「こんなものかなあ」という思いと、「こんなはずじゃない」という思いが行ったり来たりすること。
つまり、現状に満足する気持ちと、「まだまだ満足しないぞ」という気持ちが交錯します。
私たちはある選択を迫られたとき、「ほどほど」「そこそこ」を選んでしまうことがあります。
「身の程を知る」「足るを知る」という言葉のように、「自分はこの程度でいい」と制限をかけてしまうのです。
「ほどほど」「そこそこ」というある種、安全地帯から次のゾーンに行くときは、やはり抵抗感や違和感がありますが、行けばそこに身体がなじんできます。
私はおよそ2年周期で「今いる場所」に違和感が湧いてきます。それが成長するということかもしれません。
「足るを知る」は大事なことです。けれど、時に「えいっ」と次に踏み出すことも大事。
人生は一度きり。あと100年は生きられません。
「ゆっくり余生を送る」のも悪くありませんが、それだけで終わりたくないという人もいるでしょう。
「これまでの常識」をさっぱり断捨離し、新しい一歩を踏み出しましょう。
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