低収入で「自立できない子ども」を持つ親が「行うべきこと」

中高年の人で、経済的に自立できずに親の収入に頼った暮らしをしている人は少なくありません。その親世代は、子どもの将来に不安を感じているようです。

収入面に不安がある人の親からの相談を受けている、ファイナンシャルプランナーの阿部達明さんに「どんな不安があるのか、どんな制度を利用できるのか」についてお聞きしました。

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子どもたち世代のお金問題。どんな点が不安なのか

子どもたち世代の中には、自立できないために親の収入を頼りに生活している人もいるようです。

中高年になっても非正規雇用として働いている人は、月収額が少ないことが分かります(下の図参照)。

非正規雇用で働く40〜70歳代の人の手取り月収額

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※グラフの値は中央値(データを小さい順に並べたときの中央に位置する値)を表す。
※出典:株式会社マイナビ「ミドルシニア/シニア層の非正規就労者実態調査」を基に作成。

自立できない人の親からお金の相談を受ける阿部さんは「自分の老後の生活や、子どもの将来の生活費について不安を感じているようです。相談に訪れる親御さんが最近、増えています」と話します。

相談内容でどんなことが多いかというと、「家族の生活費が足りなくて貯蓄を切り崩しているが、あと何年続けられるか」ということ。

また、もうすぐ定年を迎える親から「今後どうすれば無職の子どもとともに、年金だけでやりくりできるか」という相談も受けるそうです。

「子どもが自立していなかったり、子どもの収入が少ない場合には、60〜70歳代の親が、年金のほかにパートやアルバイトなどで収入を得て、家計を支えていることも珍しくありません」と阿部さん。

「非正規雇用」にはさまざまな雇用形態があり、グラフを見ると「契約社員」の手取り月収額の中央値は20万円です。

「派遣社員」は17万円、「パート・アルバイト」は9万円となっています。 

生活が困らないように親と子が行うこと

子どもたち世代の収入が不安定なときに検討したいのが、国の制度を利用することです。

国民年金の保険料を支払っていないときには、2年前までさかのぼって支払うことができます。

「将来、子どもが受け取る年金額が減らないように、未納にしていた分を親が代わりに支払うケースが、よく見受けられます」と阿部さん。

働き方の提案として、社会に出ることに不安がある人や、長期間、仕事をしていなかった人は、すぐに週5日出勤などの一般就労をするのは難しいです。

就労に関する国の制度を利用してみましょう。

「親と同居し自立していない中高年の子どもに対しては、制度を使って自立できるようにアドバイスしています。子どもの生活環境を把握しながら、自立するにはどんな方法があるのかを一緒に探っています」と阿部さんは話します。

収入面に不安があるときに利用できる国の制度は...?

・国民年金保険料を支払う

子どもの収入が不安定な状態では、毎月の国民年金の保険料を自分で支払うことが難しいことも。

その場合は、親が肩代わりして支払っている家庭が多いようです。

保険料の支払いを途切らせないことで将来、子どもが受給する年金の額が減らないようにします。

・障害年金を受給する

統合失調症やうつ病など病気やけがで生活や仕事が制限されるときに請求できます。

初診日や保険料の納付状況などの条件があり、主治医の診断書が必要。

年金額の例は、国民年金加入者が受給する障害基礎年金の1級が年間97万5,125円、2級が年間78万100円。

・精神障害者保健福祉手帳を取得する

長期にわたる統合失調症やうつ病などの精神疾患により、日常生活や社会生活に支障が出ていて、その疾患の初診から6カ月以上経過していると申請できます。

主治医の診断書が必要です。この手帳を取得すると、企業の障害者枠で働くことが可能になります。

「国民年金保険料を支払う」「障害年金を受給する」「精神障害者保健福祉手帳を取得する」などの国の制度を利用しても収入面に不安があるときには、最終的には生活保護という方法があります。

お金に不安がある人たちの働き方の提案って...?

・就労訓練事業

自治体などが運営する「自立相談支援機関」が窓口となり、社会福祉法人や一般企業などを紹介してもらいます。そこで支援を受けながら訓練として就労を体験。期間は1〜3カ月で、週に数回の勤務や半日勤務も可能です。訓練終了後にそのまま雇用されることも。

・就労継続支援

自治体やハローワークなどで紹介をしてもらった事業所で、就労訓練や生産活動を行う福祉サービス。利用の申し込みは自治体が窓口となります。雇用契約を結んで給与が支給される「A型」と、雇用契約を結ばずに成果報酬として工賃をもらう「B型」があります。

・就労移行支援

国の「障害福祉サービス」の一つで、障害のある人の社会参加を支援します。就労意欲のある65歳未満の人が対象で、就職に必要な知識や技術を学びます。事業所は全国に3000カ所以上あり、技術の習得ができて就職先の斡旋などを2年間受けられます。

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阿部さんのことば

自立できない人の多くは繊細で優しい性格です。
無理をせずにその人なりの自立を目指せばいいのです。


取材・文/松澤ゆかり  

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<教えてくれた人>

阿部達明(あべ・たつあき)さん

「居場所&相談室オープンハート」責任者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、キャリアコンサルタント。三井住友銀行、東京都若者社会参加居場所責任者、東京都就労訓練アドバイザーなどを経て現職。

問い合わせ先/居場所&相談室オープンハート責任者 阿部達明さん 

電話090-2744-6184 
メールアドレス animism9@gmail.com  
阿部さんは関東地方で活動。このような支援団体は全国にあり、自治体に問い合わせると教えてもらえます。

この記事は『毎日が発見』2019年11月号に掲載の情報です。

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